【イタリアの歴史と文化】タランチュラとタランテラ踊りの起源

 

いつもの道をいつものように歩いていると、日本に生息していないような大きな毒グモを見つけたら?

さいきん茨城でそんなことがあって、タランチュラと出くわした女性はとりあえず警察に連絡した。

共同通信の記事(10/22)

署によると、胴長約8センチで、黒い体にオレンジ色の模様があった。発見時、道路脇の塀の穴にいた。周辺でけが人の報告はなかった。

茨城の住宅地にタランチュラ 日立市、ペットが逃走か

 

タランチュラとえば世界的に有名な毒グモで、これにかまれた場合、すぐに適切な治療を受けないと苦痛の中で死にいたる。
というのは映画の話で、実際には攻撃性は高いものの、タランチュラにかまれても痛みや腫れといった症状が出るぐらいだから、セアカゴケグモのほうが危険かも。
それにしても、近ごろの警官はタランチュラの捕獲までできるとは思わなかった。

これにネットの反応は?

・リアルあつ森
・飼ってる奴はきちんとしろよ
・唐揚げにすると美味しいらしいが
・これが茨城の魅力なんだよ
住宅地の路上にタランチュラだよタランチュラ
栃木が勝てないわけだ
・007のせいで、噛まれたら死ぬイメージ
・茨城だろ、驚く話じゃ無い
・助けといたら地獄に落ちたときに助けてくれるんだぜ

 

さてこの茨城の魅力・タランチュラの名前の由来はご存知でしょうか。
イタリアの歴史や文化に触れながら、これからそれを紹介しましょう。

 

タランチュラ

 

こんなのが壁にいたら、その場でショック死する自信がある。
肉体よりも精神的ダメージのほうが大きそう。

 

イタリア南部にターラントという港町がある。
この都市の歴史はおっそろしく古くて、約3000年前に古代ギリシアの人たちが伝説の英雄ターレスにちなんで、このあたりをそのまま「ターレス」と呼んで住み始めて現在にいたる。

第二次世界大戦中、ターラントは重要な軍港だったから、イギリス軍がここに爆撃をくわえて大打撃をあたえ、戦局を有利にした。
あまりに効果的な攻撃だったため、日本軍はこのタラント空襲を参考に真珠湾攻撃をおこなったといわれる。

 

 

上の赤点のタラント地方には恐ろしい「毒グモ伝説」があって、そのクモにかまれるとタランティズムという病気になると信じられていた。
タランティズムという言葉は11世紀に登場して、16~17世紀にイタリア南部でこの現象がよく見られた。

当時のイタリア人作家はその症状をこう書き表す。

この邪悪な獣にとりつかれると、一度に百の異なった感覚を得る。泣き、踊り、嘔吐し、震え、笑い、蒼褪め、叫んで失神し、すさまじい痛みに苦しむことになり、もし助けがなければ数日後に死んでしまう。汗と解毒剤が症状を緩和するが、効き目のある唯一の治療法は音楽だけである。

タランティズム

でも実際には、かまれて数日で死ぬことはなかったから、恐怖がひとり歩きしてこんな伝説を生みだしたのだろう。

 

でも当時のイタリア人が本気でこう考え、恐れていたのは事実。
それで、体を動かしつづければクモの毒が抜けるという音楽療法「タランテラ」の踊りを生み出した。
体を動かしていっぱい汗をかいて、デトックスのように毒を抜こうと考えたのでは?

*タランテラには、毒のあまりの苦しさから、狂ったように踊って死んだ様子を表現したという説もある。

とにかく「唯一の治療法は音楽だけである」とあるように、タランティズムにかかった患者が死なないためにはこの踊りを踊ればいいというウワサが広がって、イタリアでは多くのタランテラの音楽や踊りが作られたという。

くわしいことはここをクリック。

タランテラは舞台ではヘンリック・イプセンの『人形の家』、映画では『ゴッドファーザー』などに登場する。

タランテラ

17世紀のドイツの学者で司祭のアタナシウス・キルヒャーがつくった毒グモの解毒剤の楽譜

 

タランテラを踊る女性(1846年)

もし茨城の警察官が捕獲中にタランチュラにかまれたら、この踊りを踊ればよかったのだ。知らんけど。

 

そんなことでイタリア南部の毒グモと解毒の踊りが、ターラントにちなんでそれぞれタランチュラ、タランテラと呼ばれるようになった。

イタリアの港町にいた毒グモはヨーロッパ人に恐怖の記憶を刻み込み、その後、巨大なクモや知らないクモを見たヨーロッパ人は「タランチュラだ!」と呼ぶようになる。
結果、本来のタランチュラと別種のクモや、大航海時代以降にヨーロッパ人が見つけた新世界(アメリカ大陸やオーストラリア大陸など)にいたクモも「タランチュラ」と名付けられた。

いまとなっては、本家の南イタリアのクモがどんなものか分からない人が多いと思う。タランチュラというと、個人的には南米アマゾンのイメージ。

そのへんの事情は英語版ウィキペディアにくわしく書いてある。

The name is derived from the southern Italian town of Taranto. The term “tarantula” was subsequently applied to almost any large, unfamiliar species of ground-dwelling spider, in particular to the Mygalomorphae and especially the New World Theraphosidae.

Tarantula

 

21世紀のいま恐怖の毒グモ伝説は消え去って、世界中にタランチュラという名のクモとイタリア文化のひとつとしてタランテラの踊りが残った。
これはそのひとつ。

 

 

 

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2 件のコメント

  • 「タランテラの舞踏曲」いいですね。リズムはダイナミックだが、短調のメロディラインが哀愁を誘います。
    前にも言ったかもしれませんが、映画 The Godfather で長女コニーの結婚式に流れているダンス曲もタランテラのひとつです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。