「日本は遅れてる」と言うが、韓国人の“風水信仰”もすごい 

 

風水の考え方では「お墓の位置」が超重要。
大地には「地気」という不思議なエネルギー(みたいなもの)が流れていて、そのコースを「地脈」という。
「世界大百科事典」の説明によると、その地脈を読んで気(エネルギー)のたまる場所にお墓をつくると、その一族は繁栄できるという考え方が風水にある。

「風水説では,この地脈を〈竜〉とよび,そのなかでも生気のわだかまる所を特に〈穴〉とよび,そこに墓を営むと生気が死者の肉体を媒介にして子孫に感応し,その家は栄えるという。」

韓国では昔から風水が信じられていて、これを悪い目的で使うこんな「風水侵略説」も古くから伝わっている。

・高麗時代に中国(宋)の風水師が高麗の国運を弱めるため、全国の石碑を壊して釣り鐘を溶かした。
・明の中国人は高麗時代の末期、「天子の機運」が起こることを防ぐために鉄杭5本を打ち込む。それで朝鮮時代の王・正祖は「だから北側(鉄杭を打ち込んだ地域)からは人材が出ない」と言った。
・朝鮮出兵の時、日本軍の武将が「慶尚北道善山から素晴らしい人材が多く出ている」という話を聞いて、そういう人物が出てこないよう地面に穴を開けて鉄杭を打ち込んだ。

これらの説には根拠がないから、ただの言い伝えでしかない。
でも、韓国では風水の影響を強く受ける人が多いから、こんな話を信じてしまう空気があると朝鮮日報のコラムがいう。(2021/05/22)

【萬物相】政治家への「風水テロ」

とくに昔の韓国人は、自然に流れる風水の血脈が人の幸せ/不幸につながっていると考えて、繫栄している一族は先祖の墓や家の風水のおかげとし、流れる血脈が断ち切られると不吉なことが起こると考えた。
だから憎い相手がいると、没落するように墓に穴を掘ったり杭を打つ呪いの行為があって、朝鮮時代には流刑や打ち首などの罰則を定めてこれを禁止した。
墓を損壊する行為は現代の韓国でもあって、ノ・ムヒョン元大統領の墓には汚物がまかれたし、イ・フェチャン元ハンナラ党総裁の祖先の墓には鉄の杭が打たれたと上のコラムにある。

先月の選挙で韓国の大統領になることがきまったユン・ソクヨル氏は、きょねん「風水テロ」の被害を受けた。
祖父の墓が荒らされて人糞、包丁、護符(ごふ、おふだ)・髪の毛などがあったことから、ユン氏に呪いをかけるために何者かが「風水テロ」を行ったという。
もう先進国と言ってもいい国で、21世紀にもなってこんなことが起こることに朝鮮日報が嘆く。

韓国社会には間違った風水思想やシャーマニズム的信仰がまだ根強く残っている。墓に杭を打ち、人糞をまいたからといって何かが変わるわけではないだろうが、大統領選挙が近づけば近づくほど確執が深まり、こうしたのろいも増えるだろう。

 

人糞や護符をばらまいたり、包丁を突き立てて祖先の墓地を傷つけることで、ユン氏へ流れる「ポジティブなエネルギー」が止まって、氏が大統領になることを阻止しようとしたのだろう。
さすがに一部だろうけど、いまでも韓国ではこんなことを考えて実行するヒトがいる。

 

日本でも風水や呪術を信じる人はいる、
でも、その度合いや割合は韓国よりは低いから、「大統領選挙が近づけば近づくほど呪いも増える」という現象は起きない。
ひょっとしたら選挙戦では国民の見えないところで、相手候補に呪いをかけ合う「呪術廻戦」が行われているかもしれないが。…まあやっぱりそれはないだろう。

ユン・ソクヨル氏のおじいさんのお墓が毀損された事件の一年後、いま韓国社会はこんなことで騒いでいる。

ハンギョレ新聞(2022-03-21)

「大統領執務室の移転理由は風水?巫俗?」という質問に尹次期大統領の答えは

ユン次期大統領が大統領執務室を龍山へ移転すると発表すると、対立する与党から「巫俗(シャーマニズム)や風水の影響では?」という疑惑が浮上。
ユン氏や所属する野党はこれを否定して、「民主党による陰謀論」と与党を非難する。

 

韓国の人たちはよく、「日本は驚くほどIT化が遅れている」とあきれて言う。
たとえば中央日報のこのコラムでは日本で生活していた韓国人記者が、6GやAIの時代にまだファックスやハンコを多用している日本人を見て、「できないものをやってみよう」という意志や、変化を先導してみようとする活力が見当たらないと書く。(2021.09.02)

【時視各角】日本の「止まってしまった30年」が教えてくれること

時間が止まって、進歩の見られないと日本は韓国のイイ反面教師になるらしい。
でもそんな日本人に比べ、韓国人にはすごく保守的な面があって、良くも悪くも伝統的な文化や価値観を大切にしている。固執している。
引っ越しとか運気アップとかの個人的なことなら分かるが、日本だったら風水や巫俗(シャーマニズム)が政府レベルの大ごとになることはない。
中央日報は社説で尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に、韓国大統領として巫俗との関係を断てと迫る。(2022.01.19)

尹錫悦、巫俗のつながりを切れなければ指導者の資格はない

「墓に杭を打ち、人糞をまいたからといって何かが変わるわけではないだろう」と全国紙が書くことも考えられない。
すぐ隣にあって歴史や文化を共有していても、日本人と韓国人では価値観や考え方の違いがよくある。

 

 

【韓国の風習・文化】生者が死者を結ばせる「霊魂結婚式」

中国文化の日本文化への影響②日本風にアレンジした5つの具体例。

【ひな祭りの起源】日本・中国・韓国の文化「曲水の宴」

中国 「目次」

日本 「目次」

韓国 「目次」

 

3 件のコメント

  • <<<「日本は遅れている」と
    愛国心の高い韓国人だから納得する。
    これを日本人が言うと、「???」になります。

  • 韓国で風水説が流行り始めたのは、朝鮮時代からです。それ以前、高麗時代や三国時代はいずれも仏教の影響下にあり、人間が死ねば火葬にしていたため、墓地を定めるのに風水説に依存する必要はありませんでした。
    しかし、朝鮮では仏教を逼迫して儒教を崇め、祖先への孝行が重要な人間の道理となり、その結果、風水説による墓地選定や家の位置選定などにこだわりました。
    そして、未だに韓国社会における影響は甚大であり、尹次期大統領の妻がそちらの専門家であるという認識が、国民に広く知られています。とても不幸で恥ずかしいことですね。

  • 韓国は変化が早いです。
    役立つと分かると新しい店ややり方、システムをすぐに導入すると思いますが、こういう伝統的価値観や考え方は変わりません。
    まえも韓国紙が「他の先進国に比べて、韓国では男尊女卑の傾向が強い」となげいていました。
    まあ日本にもそんなところがありますけどね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。