日本に住んでるイギリス人が最近SNSで、「イギリスにはあんまりないけど、日本に山盛りあるのは何かわかる?」と疑問を投げかけてた。
その答えは「Wires(電線)」。
それで彼女は、なんで自分が“巨大な黒いクモの巣”の中で生活しているのか、その理由を知ってる人がいたら教えてくほしいという。
「Someone who actually knows the reason why I’m living in a giant black cobweb. Please let me know 🙂」
するとすぐに、「地震のためです(it’s because of earthquakes)」という返事がくる。
「日本には電線がめっちゃ多い!」ということは、日本へ来たイギリス人が真っ先に気づくことだと指摘する人もいた。(one of the first things we noticed when we visited.)
イギリス人が「巨大な黒いクモの巣」と呼ぶ前に、電柱や電線が景観を損ねていることには日本でも批判が上がっていて、行政としては街から電柱をなくそうと取り組んでいる。
日本では上流国民の住む兵庫県芦屋市で、1928(昭和3)年に初めて電線の地中化が行われて、いまでは電柱が取っ払われた観光地も増えてきたし、東京は2040年代には都道の無電柱化を完了する予定だ。
それでも海外、特に欧米先進国に比べると日本には電柱・電線が多い。
その大きな理由は、日本が地震大国だから。
阪神・淡路大震災のときには、道路に倒れた電柱や電線が消防車や救急車の通行のジャマになって、消火や救護が遅れたり、必要な物資を早く届けられなくて問題になったし、「地中線は断線の調査や修理に倍以上の時間がかかった」という関西電力の声もある。
災害時の復旧で、通電は最優先事項だ。
これが遅れることによって、それだけ失われる命もあるはず。
上の質問には、2011年の東日本大震災を東北で経験したイギリス人が、当時は余震が続くなか東北の西部全域で2日以内に電気の復旧作業が完了して驚いたとメッセージを送る。
今から考えると本当にすごいことだけど、当時はアパートの自室で電気もなく凍えていたので、とても長く感じたとか。
「It was really impressive in hindsight, though at the time I was freezing without any power in my flat so it felt much longer.」
地中線にしていたら、この地獄がさらに長く続くところだった。
「a giant black cobweb」の中で生活しなきゃいけない理由は、大災害を経験すればすぐに分かる。
電線を地中に張りめぐらせる理由にはほかにも、電柱方式よりコスパが悪いからといったカネの問題もある。詳しいことはここをクリックだ。
電柱や電線によって江戸時代の景観が破壊されていた伊勢の「おはらい町」は、それをなくしたおかげで、1992年には約35万人だった来訪者が1994年には200万人に爆増して、2008年には400万人を突破した。
無電線化の大成功例の一つ。
タイの街中によくある複雑に絡み合った電線を見たときは、素人目にも「あれはヤバい」と思った。
「巨大な黒いクモの巣の中で生活している」というイギリス人が少しは分かる。
空中架線は、災害時の復旧が容易という理由の他に、盗電がしづらい(電線を勝手に引き込んでも見た目ですぐバレる)という意味もあります。戦中戦後のドサクサの時代、町工場なんかでは盗電も結構あったらしいですよ。でも直接に電線を引き込むとバレるので、電気のメーターをうまくごまかす方法とか。
実は私の祖父・祖母も軍事物資(軍手やタオルなど)を町工場で製造していて、その種のインチキをしたことがあると子供の頃に祖母から教わりました。と言っても、私は自分じゃ一度もやりませんでしたけど。