【自己否定】徴用工問題で、韓国政府が触れられたくないこと

 

先日、韓国外交部(外務省)と韓国メディアの記者との間で、日本としても見過ごせぬ、元徴用工問題をめぐるやり取りがあったので、これからそれを紹介しよう。

*原文は外交部が公開した「외교부 브리핑 (2.28)」にある。

韓国の記者が外交部の報道官にこんな質問をする。

「韓国政府が請求権協定を締結したとき、日本が被害者に賠償するという日本の提案を断って、政府は請求権資金をもらって経済開発に使いました。その事実関係について、政府はその事実を認めているのか気になります。」
「この問題において、私たちが被害に責任を全く負っていないように見えますが、これに対して政府の立場が気になります。」

日本は“賠償”をしたわけではないが、それは置いとくとして、ここで重要なポイントは、このとき日本は元徴用工の人たち(被害者)にお金を渡そうと提案したのに、韓国政府がそれを拒否したというところ。
当時韓国は日本から支援金を受け取ると、元徴用工に渡すべきお金まで経済発展のために使ってしまう。
だから、いまもめている徴用工問題もすでにお金を渡した日本に責任はなく、本来は韓国政府が解決しないといけないことになる。
これまで韓国政府もそれを認めていた。

朝鮮日報の記事を読むとそのことがわかる。(2019年7月17日)

盧武鉉政権の民官共同委は「請求権協定に含まれる」と結論

徴用工問題について、2005年の廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権時に民官共同委員会が、1965年の請求権協定で日本から受け取った経済支援金3億ドルに「強制徴用の補償金が含まれたと見なす」という判断をする。
だからこの問題で「政府が日本に再度法的な被害補償を要求することは信義則の上で問題がある」とし、韓国政府も「強制徴用問題は請求権協定で終了した」という立場を確認した。
徴用工問題は請求権協定ですでに解決済みというのは、いま日本が主張していることと同じだ。

でも2018年に、韓国最高裁が日本企業へ賠償を命じる判決を出すと、文政権は、徴用工問題は終了していないと言い出して、日本企業に慰謝料を払うよう要求する。
問題解決の責任は韓国にあるという過去の政府見解をひっくり返して、それを日本へ押し付けた。

2005年とは真逆のことだから、韓国政府としてはこれに触れられたくない。
だから、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領はそれを隠して日本を非難した。
毎日新聞の記事(2019年8月24日)

文大統領が沈黙を続ける 2005年に下した徴用工問題巡る外交判断

すると、そんなご都合主義の韓国に日本経済新聞が怒る。(2017年8月19日)

日韓の請求権協定には徴用工問題も含まれ、賠償を含めた責任は韓国政府が持つべきだとの政府見解もまとめている。(中略)にもかかわらず、従来の政府の立場を覆し、国家間で締結した条約や協定を軽視するような今回の発言は決して看過できない。

韓国は徴用工問題蒸し返すな

 

「事実関係について、政府はその事実を認めているのか気になります」と言う韓国メディアの記者はこのことを聞いたはず。
それに対して外交部の報道官はこう答えた。

「強制徴用被害者に対する我が政府の立場は明らかです。強制徴用被害者が受けている苦痛と痛みが解消されるように、私どもは韓日両国の共同利益に一致する合理的な解決案を模索するため、ずっと外交的努力を行っていて、またその過程で、強制徴用被害者の意見を傾聴しながら韓日外交的協議を加速していくでしょう。」

これは話をそらしているだけで、質問にまったく答えていない。
それで記者はこう聞く。

「それでは、その事実関係を事実と認めるのは正しいでしょうか?」

すると報道官はこうこう言う。

「さきほど申し上げたとおりです。」

文前大統領は沈黙を続けて、現政権ははぐらかす。

 

「徴用工問題は請求権協定で解決済み」と韓国政府が確認したのに、それをひっくり返すから、記者の質問にまともに答えることができなくなる。
「日本に再度要求することは信義則の上で問題がある」と言ったのに、いまは「韓日で協議を加速している」と日本を巻き込む。
自分の過去を突き付けられて、困るようなことをするべきではなかった。
でも、韓国政府がこの問題の解決策をきのう発表し、日本もそれを歓迎したから、いまさら過去の政府見解は問わない。
でも今度こそは、自分で自分を否定しないでほしい。

 

 

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

4 件のコメント

  • 帝国主義時代に植民地を経営した国はたくさんあります。イギリスをはじめとするヨーロッパの大国はほとんどが植民地を持っていました。しかし、それらの国々が植民地支配に対して公式的な賠償や補償をしたことはありません。東洋では唯一、日本が新生国である韓国に対して植民地支配に対する賠償をしました。そして、世界で最も多くの謝罪と謝罪をしました。
    天皇、総理、議会、市民団体などで行った謝罪と謝罪だけでも34回だそうです。
    ああいう国際慣例に照らしてみると、韓国で日本に対して過去の植民地支配時の徴用工問題に対して賠償を求めたこと自体が話にならないです。
    恥ずかしいことです。

  • >天皇、総理、議会、市民団体などで行った謝罪と謝罪だけでも34回だそうです。
    韓国ではこれがほとんど伝えられていないと思います。
    朝鮮日報の記事にも、在韓日本人が韓国メディアはもっとこのことを伝えるべきだと言っていました。
    もう過去の蒸し返しは終わりにしないといけません。

  • 日本で34回も公式謝罪をしたとすれば、韓国人はその謝罪に”真正性”がないということです。 一体どうすれば韓国人がその謝罪を受け入れることができるのでしょうか。

  • もう無理だと思います。
    謝罪に関係なく、すでに日韓の国民の交流は進んでいますし、あまり意味もないと思いますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。