国のメンツと人道支援:日本が韓国に感謝したり、激怒したり

 

これは素直にありがとう韓国。

中央日報(2023.04.26)

日本「目の前で銃撃戦が続いているような状況で…韓国軍、日本人の退避を助けてくれた」

いきなり軍事衝突が始まって、もう400人以上の死者がでているアフリカのスーダンで、現地にいる日本人の脱出が一刻を争う大問題になっていた。
そこで日本政府が救出計画を立てて、フランス、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)、国連などの協力を得て、約60人の日本人が無事に国外へ移動することに成功。
岸田首相が協力してくれた各国に感謝の言葉を伝えるのも、韓国メディアが自国の活躍を特筆するのもアタリマエ。
にしても、なんで自衛隊にこれができなかったのか?
それは置いといて、スーダンで韓国軍というと2013年におきた、日本人を失望&激怒させた出来事を思い出す人も多いはず。
「困った時の友が真の友」で日韓の素晴らしい協力を示す事例になるはずだったのに、「無残な結末」に終わってしまったあの一件を。

 

2013年に南スーダンでクーデター未遂事件が発生し、戦闘は激しさを増して内戦状態になる。
国内の治安は最悪だ。
このとき南スーダンに派遣されていた自衛隊が、現地の韓国軍の部隊長から緊急連絡を受けた。

「朝日新聞GLOBE+」の記事(2022.04.13)

「銃弾が足りない。助けて欲しい」PKOの現場で、韓国からのSOS まさかの結末 

「この状況でそれはとても危険だ。分かった。すぐに渡そう」と簡単にはいかない。
というのは、自衛隊が外国の部隊へ武器を提供することは法的に禁止されていたから。

でも自衛隊側は、

「韓国軍に銃弾を渡さなければ、すぐにも死人が出る」
「24時間以内に送らないと大変なことになる」

といった現地の緊迫した様子を把握していたから、「韓国を見捨てるわけにはいかない」という強い思いを持っていた。
このとき韓国軍に頼める相手は自衛隊しかいなかったらしい。

情報を総合的に分析した結果、当時の安倍晋三首相が「一刻を争う緊急事態であり、緊急性と人道性が極めて高いこと」を理由に武器輸出三原則の例外措置とした。
この決断によってその日の夜には、自衛隊から1万発の銃弾が提供されて韓国軍は助かった。
そしてこの後、韓国の大統領と国防部長官(日本でいう防衛大臣)から、日本政府と防衛省へ感謝の言葉が伝えられたらよかったのだけど。

韓国から外務省へ連絡はあったが、それは「韓国という名前を出さないでほしい」という要請だった。
韓国側は、現地の部隊は十分な弾薬を持っていたから、必要はなかったが、臨時に「国連」から借りたと説明する。
「銃弾が足りない。助けて欲しい」というSOSを全否定。
韓国軍の部隊長は銃弾の提供を切実に求めていたのに、韓国政府は違うことを言う。
韓国は自衛隊との直接的なやりとりも否定した。

このときの日本の反応が上の記事にある。

防衛省は当時、韓国政府の反応に大いに怒ったという。「我々の現地部隊長がウソつき呼ばわりされていいんですか」と憤った。(中略)恩をあだで返すのは日本の政治家が一番嫌う行動です。あの事件で、日本の政治家の多くが韓国を嫌いになってしまった

 

当時の菅官房長官のこの言葉はきっと関係者全員の思いだ。

「国連と韓国の要請を受け、政府は人道的、緊急的措置として徹夜で応えた」
「危機的状況で緊迫しているとの韓国の要請があった。極めて難しい問題があったが、極めて大事な隣国なので協力した」

日本としてはこれを人道支援と考えて、かなりムリなこともしたのに結果的に裏切られた。
「感謝もできない韓国」と呆れる全国紙に共感する日本人も続出。

*ウィキベテアにもこの出来事の説明がある。

自衛隊南スーダン派遣#内戦の発生と大韓民国国軍部隊への銃弾提供

 

自衛隊に”軍事的支援”を受けたという事実は世論の批判を避けられないし、韓国政府にとってはあまりに大きな負担だから、「日本からは何の”借り”もない」ということにしたかったのだろう。
上の記事には「国家のメンツにもまれて無残な結末」になったとある。

ただ現地スーダンでは韓国軍の指揮官から、

「ありがとうございます」
「改めて日本隊の協力に感謝する。この銃弾は日本隊と韓国隊の強い絆の象徴だと考えている」
「ジュバを訪れることができたら、改めて感謝の気持ちを伝えたい」

と非公式ながら、丁寧なお礼の電話が自衛隊側にあったという。
なのに韓国では、日本人の理解を超える報道がされていた。

聯合ニュース(2014.07.09)

「日本政府が韓国軍への銃弾支援事実を悪意をもって利用した。韓国軍が日本側に完全にしてやられた」と話した。

南スーダン銃弾支援問題 自衛隊が韓国軍に謝罪していた

 

これも「国家のメンツ」のためとしか思えない。
「あの事件で、日本の政治家の多くが韓国を嫌いになってしまった」となるのもアタリマエだ。
「韓国軍、日本人の退避を助けてくれた」と報じるのも、きっとメンツがベースになっている。

でも、これは10年も前の話。
日本との関係を重視するユン政権の韓国は当時とは違うし、当時の日本の関係者も忘れることはできなくても、現地の韓国軍はちゃんと感謝したし、もう区切りはつけているはずだ。
いまの日韓関係なら、「無残な結末」を迎えることはない(と思う)。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

韓国「日本には何をしてもいい」 vs 安倍首相「許さない」

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。