【カキの恩返し】日本、救ったフランス人に救われるの巻

 

本日8月11日、わが静岡県では気温が36℃を超えるようで、熱中症警戒アラートが発令された。
そんな日には、カキーンと冷えたビールが飲みたいところ。
ということで、今回のテーマはカキ(牡蠣)。
正確に言うと、カキを通じて実現した日本人とフランス人の「恩返し」の話だ。

 

牡蠣の化石(約2500万年前のものらしい)

 

欧米でも、カキの人気は高い。
乳白色の身をしていて、栄養たっぷりのカキは「海のミルク」というキャッチーな呼び名を持っている。
「英雄色を好む」と言うけれど、カエサル、ナポレオン、そして武田信玄はカキを好んで食べていた。
日本語のカキを英語で「oyster」という。
真珠を産むアコヤガイもオイスターになるから、この言葉は日本のカキよりも広い意味を持っているのだ。

ヨーロッパ人は古くからカキを食べていて、その養殖はいまから 2000年以上前、古代ローマ時代に始まったとされる。
19世紀のイギリス、ヴィクトリア時代には、人々はパブでお気に入りのビールを飲みながら、カキを食べることを楽しみにしていた。

in Victorian England, it was quite common for people to go to the pub and enjoy their favorite beer with some oysters.

Oyster

 

このヴィクトリア時代、ビールの醸造家たちはカキの浄化能力に注目し、砕いたカキの殻をビールに混ぜるようになったという。

 

英語の「オイスター」はフランス語に由来する。
ヨーロッパでカキをもっとも食べる国はフランスで、ルイ14世紀は毎朝、新鮮なカキをヴェルサイユ宮殿に届けさせていたという。
フランス人にとって、カキはソウルフードと呼んでいいかも。
そんなフランスで、1970年と90年にカキの病気が広がり、カキの養殖産業が大ピンチにおちいった。

それを知った日本のカキ養殖業者が立ち上がり、フランスにカキを送って窮地を救った。
この出来事がきっかけで、フランスではそれまで主流だった「平カキ」に代わり、日本の真ガキが一般的になった。
だから、日本人がフランスで食べるカキは、実は日本の品種である可能性が高い。
そして、この美談には続きがある。

 

日本人の多くが、「情けは人のためならず」という言葉を誤解している。
文化庁がこの意味についてアンケート調査をしたところ、次のような結果が出た。

1 人に情けを掛けておくと、巡り巡って結局は自分のためになる・・・・・・・・・・・・・・・・ 45.8%
2 人に情けを掛けて助けてやることは、結局はその人のためにならない・・・・・・・・・ 45.7%

およそ半数の人がカン違いをしていた。
「情けは人のためならず」という表現は、人に親切や思いやりといった「情け」を掛けておくと、回りまわって自分に良い報いが返ってくるという意味。
だから、正解は「1」になる。
明治時代に、日本人がトルコのエルトゥールル号の船員を救助したら、1985年のイラン・イラク戦争の時、今度はトルコがイラクにいた日本人を助けてくれた。
これも、「情けは人のためならず」の一例だ。

日本政府は海外でピンチの国民を救えるか? とトルコの恩返し

 

遭難するエルトゥールル号

 

2011年に東日本大震災が発生すると、宮城県の沿岸部は大津波に襲われ、カキの養殖施設は壊滅的なダメージを受けた。
すると、「今度はわれわれの番だ」とフランスのカキ養殖業者が立ち上がる。
「France o-kaeshi(お返し)」という名前の支援プロジェクトが始まり、彼らはカキ養殖に必要な道具を宮城県に送ってくれた。
このフランスの支援もあって、三陸地域のカキ養殖はみごと復活した。

ソース:の記事(2011年7月7日)

三陸のカキ養殖復興にフランスから助っ人、「恩返しを」

見返りを求めずにフランス人を助けたら、今度はその人たちが日本を助けてくれた。
やっぱり、情けはかけておくものだ。

 

*日本のウェブサイトでは、フランスのカキ養殖がピンチになったのは1960年代と書いてあるモノが多い。
でも、仏メディアのAFPの記事には、1970年と90年とあるから、この記事ではそちらを採用することにした。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。