韓国の二重基準 ベトナムでの虐殺には沈黙し、日本を非難する

1960年代から始まったベトナム戦争。
北ベトナムとアメリカによるこの戦いで、戦場となったベトナムは焦土となり、大きな人的被害も発生した。
死者の数をAIに日本語で聞くと、「約335万6000人から約478万1000人と言われています」、英語で同じ質問をすると、「1.1 million to 3.8 million(110万人から380万人)」という答えが返ってきた。
正確な数字は不明だが、とんでもない数の人たちの命が奪われたことは間違いない。

ベトナム戦争では、30万人以上の韓国兵がベトナムへ派遣され、米軍とともに戦った。
当時、韓国の政府高官が「自由世界を守るための聖戦」と表現したように、北ベトナムの共産主義と戦うことは、韓国にとって正義の戦いだった。
それは理念的なもので、現実的な理由としては、参戦することでアメリカから大きなリターン(経済支援)を受けることができ、国を発展させられると期待したことが挙げられる。
韓国軍がベトナムで敵と戦うだけならよかったが、民間人を虐殺する事件などが発生し、9000人の非戦闘員が殺害されたという指摘がある。(派遣され大韓民国国軍のベトナム参戦

この負の歴史について韓国側の立場は複雑で、いろいろな見方がある。
現在でも、政府はベトナム戦争を「聖戦」と表現することはないだろうが、共産主義勢力との戦いを正しい決定だったとみなしている。

*「共産主義との戦い」は現在の韓国でも大義名分になる。昨年12月、尹大統領が非常戒厳を宣言した際、その理由として「共産主義勢力の脅威」から韓国を守るためと述べたし、それに共感する韓国民も多い。

韓国軍の退役軍人による団体の会長は「われわれの兵役はベトナムの治安を維持する目的でした」「それ以外だという指摘はわれわれの名誉への侮辱に当たります」と正当性を強調する。
政府も軍も、軍がベトナム戦争で行った戦争犯罪を認めていない。

一方、進歩派のハンギョレ新聞はそんな政府や軍に批判的だ。
最近も、以下の寄稿文を掲載し、軍の蛮行について政府の責任を厳しく追求した。(2025-02-06)

ベトナム戦争民間人虐殺に対する記念碑的判決、しかし醜悪だった大韓民国

1968年2月、ベトナム中部で韓国軍によって約70人の民間人が殺害されるフォンニィ事件が発生。その悲劇を生き延びた被害者のベトナム人が、韓国政府に対して国家賠償訴訟を起こすと、2023年の一審に続き、二審でもその訴えが認められた。
被告の韓国政府は二連敗となったが、被害者を支援する側にとっては「記念碑的判決」となる。

ハンギョレ新聞は、責任を認めようとしない韓国政府の姿勢について、「判決を防ぐために醜悪な弁論を行った現在の大韓民国の姿勢も、教育資料には記さなければならない」とバッサリ。

韓国政府にとって悩ましいのは、この騒動が世界へ拡散されること。
2017年7月10日付けの『ニューヨーク・タイムズ』には、こんな社説が掲載されていた。

Vietnam’s South Korean Ghosts

ベトナム中部の村で、アジア人兵士の幽霊が出るといううわさが流れ、村人たちはそれをベトナム戦争に従軍して亡くなった韓国人の亡霊(Korean Ghosts)と考えた。彼らはいま、その幽霊に線香と花を捧げている。
この社説によると、現在、経済発展を求めるベトナム政府は韓国を親密な同盟国と考え、戦争について公式には話したがらない。ベトナム政府は暗い過去を振り返るよりも、明るい未来に目を向けている。一方、韓国政府は第二次世界大戦から続く、日本との未解決の歴史問題に焦点を当てているという。

The Vietnamese government wants to look to the future rather than reflect on its recent past; the South Korean government is focused on unresolved issues with Japan dating from World War II.

Vietnam’s South Korean Ghosts

 

2018年、文大統領は新年の記者会見で、慰安婦問題の解決についてこう述べた。

「日本が真実を認めて、被害者のおばあさんに誠意を見せて謝罪し、そしてそれを教訓としながら二度とそのようなことが起きないように国際社会とともに努力していく時、おばあさんも日本を許すことができるだろう」

韓国政府はこんな感じに、日本に厳しく加害責任を追求する立場にいたい。道徳的優位に立つことはいいが、その逆は絶対になりたくない。だから、韓国軍の戦争犯罪には目を背け、慰安婦問題などで日本に反省や謝罪を求めることに集中してきた。
(日本に協力的な尹大統領が登場してから、この動きは下火になっている。)
日本人の立場からすると、ニューヨーク・タイムズの指摘には納得するしかない。

 

韓国司法やハンギョレ新聞などが軍の戦争犯罪を断罪することで、政府の二重基準を浮かび上がらせている。
「日本が真実を認めて、被害者のおばあさんに誠意を見せて謝罪すれば、日本を許すことができるだろう」と国民に語ることはできても、自国の裁判所や海外メディアが認定した事実を認めることはできない。
ベトナムの人たちが韓国兵の霊に線香と花を捧げていることを考えると、韓国政府の態度は“醜悪”と言われてもしかたない。

 

 

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

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