8月の憂うつ|表面化する日韓の歴史認識のミゾ
毎年8月になると、日韓のあいだには憂うつな空気が漂う。
日本では原爆投下の日と終戦記念日、韓国では「慰安婦の日」と光復節があるため、両国の歴史認識の違いが表面化し、嫌韓・反日の感情が想起されやすくなる。
数年前の8月、ある韓国人がSNSで「日本は『被害者コスプレ』をしている」と非難しているのを見た。そういう声は今も上がっている。
しかし、それは「お互い様」だ。
日韓の主張は噛み合わず、立場も正反対だから、お互いに相手がそう見えてしまう。
「慰安婦の日」から見える歴史観の違い
2017年、当時の文在寅政権が、「(慰安婦問題を)国内外に広く知らせ、被害者を記憶する」という目的で、8月14日を「慰安婦の日」(日本軍慰安婦被害者をたたえる日)に制定した。
いっぽう、日韓両政府は話し合いを重ね、2015年に慰安婦問題の解決を確認している。
文政権はそれを事実上破棄し、こんな国家記念日をつくったから、読売新聞は社説「慰安婦記念日 『反日』迎合を強める韓国政治」(2017年11月29日)で韓国の動きを厳しく批判した。
「韓国の独善的な動きによって、歴史問題を巡る日本との溝が一段と深まった」
「韓国人の反日感情が引き継がれていくのではないか。日本人の韓国観が厳しさを増すのは避けられまい。」
「政府・国会・司法が揃(そろ)って、韓国の市民団体が煽(あお)る反日運動に迎合する。極めて深刻な事態だ」
こういうことをされると、「明るい日韓関係」は遠くなってしまう。
しかし、韓国の立場からしたら、「それはこっちのセリフだ」となる。
靖国参拝から見える歴史観の違い
ことしの8月15日、高市政権の4人の閣僚が靖国神社を参拝した。
その中のひとり、小泉防衛大臣はその目的について、「国のために尊い命を犠牲にされた御英霊に対して哀悼の誠を捧(ささ)げるとともに、尊崇の念を表し、ご冥福をお祈りしました」と説明している。
そして、参拝を通じ、日本がこれからも平和国家としてあり続けることを強調した。
国のために命を落とした人たちを追悼することは、どの国でも当然の行為で、日本政府は、靖国参拝が軍国主義の肯定や戦争の美化には当たらないとしている。
しかし、その見方は韓国には通じない。
韓国政府はすぐに「歴史を忘却した時代錯誤的な行為」だと批判し、日本大使館の関係者を呼び出して強く抗議した。
毎年8月になると、こうした日韓の歴史認識の違いが浮き彫りになる。
それは個人のレベルでもある。
日本の「被害者コスプレ」
ことしの8月、日本に住むある韓国人がSNSで「毎年この時期になるとウンザリする」と不満をこぼしていた。
6日と9日には原爆投下で犠牲になった人たちを悼み、15日には戦没者を追悼する式典が開かれるから、この韓国人からすると「日本は被害者の面を強調しすぎる」ように映ってしまう。
韓国の歴史認識では、日本は朝鮮半島を侵略し、民衆に苦しい思いをさせた加害者だ。
それに対する反省や謝罪の言葉がないまま、日本政府が自国の犠牲者にだけ頭を下げる姿は、加害の歴史から目を背けているように見える。
韓国にいても日本にいてもその見方は変わらない。
多くの韓国人がこの投稿に共感し、日本が悲劇のヒロインを演じる「被害者コスプレ」に見えると指摘する人もいた。
しかし、それも「お互い様」なのだ。
韓国の「被害者コスプレ」
日本からしたら、韓国も「被害者コスプレ」をしているように見える。
韓国側は慰安婦について、「日本軍に強制連行され、性奴隷にされた」と主張して日本を非難し続け、8月14日の「慰安婦の日」には、市民団体が自国の被害性と日本の加害性をアピールしている。
(李大統領は日本との関係を重視し、対日批判はしなかった。)
しかし、日本政府の慰安婦問題に対する見方は、韓国とは前提が違う。
「強制連行」と「性奴隷」説については、それらを裏付ける根拠がないため、韓国側の主張をきっぱりと否定している。
そんな日本の立場からすれば、「虚構」をもとに被害を訴える韓国の姿勢こそが「被害者コスプレ」に見える。
もちろん、戦時中に朝鮮人の慰安婦はいたし、日本も道義的な責任を認めて謝罪している。ここでいう「虚構」とは、強制連行と性奴隷説の2つの主張を指す。
「わかり合えない」ことをわかり合う
韓国の歴史認識では「日本=加害者、自国=被害者」となっている。
しかし、戦後、日韓は歴史問題について2度も「最終的な解決」で合意しているから、日本はそんなフレームで両国関係をとらえていない。
いまや日韓は対等な関係だ。
でもやはり、韓国には被害意識が強くある。
日韓の歴史認識は、本当に水と油で交わらない。互いが自国の被害や痛みに集中し、相手の立場を無視しているように見える。
「歴史を歪曲して被害者ぶっている」と、互いに「被害者コスプレ」を演じているように感じてしまう。
そんな深い歴史認識の溝が、毎年8月になると表れる。
これは、話し合って解決できる問題ではない。合意しても、またいつ破棄されるかわからない。
日韓関係が大切なことはどちらも同じだ。
毎年8月になると重い雰囲気になるが、関係を後退させないためには、お互いに「わかり合えない」ことを受け入れ、立場の違いを認め合うしかない。

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