お盆の期間中に、インド人、ポーランド人2人、バングラデシュ人、ナイジェリア人、ハンガリー人をつれて、浜松市内でおこなわれた祭りと花火を見に行ってきた。
このうち前半の3人が男性で、あとの3人は女性だ。
このメンバーの半数は、日本のアニメを通じて「バーチャル」に日本の夏祭りを体験していた。
神社に灯る赤い提灯、立ち並ぶ屋台、浴衣姿で歩く女性、夜空に打ち上がる花火といった風景は、二次元では見たことがある。
でも、日本の夏祭りを「リアル」で感じるのは今回が初めてという人が多かった。
そこで打ち上げられる花火は、静岡県全体では無名だが、地域住民に愛される「知る人ぞ知る」という規模のものだから、日本の平均的な花火大会とみていいだろう。
今回、南アジア人、アフリカ人、ヨーロッパ人は祭りや花火大会で、さまざまな日本文化の特徴を見つけた。
これから彼らの目を通して、「秩序・食・花火・伝統衣装」の4つの特徴を紹介しよう。
秩序|日本人の高い規律とルール順守の精神

花火の会場は河川敷で、通路はカラーコーンとバーによって中央で2つに仕切られ、左側通行が指定されていた。
そこで外国人が感心したのが、日本人の持つ「遵奉精神」だ。みんながルールを守り、ズルをしない。
まだ花火がはじまる前だったから、入場する見物客で片側は混んでいたが、反対側はガラ空きだった。
それでも全員が列に並んで整然と前へ進み、バーをまたいで反対側に移動する人は一人もいなかった。
この様子を見て、彼らはどう思ったか?
ハンガリー人やポーランド人の意見では、母国でも基本的にはルールが守られるけど、おそらく空いている側を通る人が出てくる。
一方、インド人、バングラデシュ人、ナイジェリア人の話では、母国ではこんな整然とした通行は不可能だ。
群衆は我先にと前へ押し寄せるから、こんなコーンはすぐに倒されて、そのうち蹴飛ばされて路上から無くなる。
もし、「仕切り」を設置するなら、鉄製のフェンスにして、警備員がいないと意味がないという。
彼らは日本に住んでいるから、左側通行が徹底されている光景を見ても驚くことはなかった。ポーランド人は駅の階段で上りが渋滞し、反対の下りが空いていたのを見たことがある。
だから、6人は「さすが日本人だな」と改めて感心していた。
食|屋台でわかる日本人の「情熱」
外国人が会場に入って驚いたのは、屋台の数とバリエーションの豊かさだ。
同じものや似たようなものを並べる店がなく、店ごとに異なるメニューを提供して差別化されていた。
※とはいえ、たこ焼きの屋台が2店あったから、完全にすべての屋台が別メニューというわけではない。
日本の祭りの屋台には、世界各国の食文化が「凝縮」されている。
かき氷、お好み焼き、チョコバナナといった日本の定番に加えて、韓国の10円パン、ドイツのフランクフルト、エジプト発祥とされるレモネード、スペインのチュロス、中国の油淋鶏(ユーリンチー)などが勢ぞろいしていた。
10円パンのルーツは、韓国の慶州で人気になった「10ウォンパン」だ。これがソウルを経由して日本へ上陸した。
日韓は政治的な対立があっても、食文化はすぐに国境を越えて浸透する。
今回とは別の会場で、メキシコのタコスやトルコのケバブをあつかう屋台を見たことがある。
地域の祭りのような小さなイベントでも、これほど多国籍なグルメが集結する光景は海外では珍しいだろう。
外国人に聞くと、彼らの母国でも祭りの出店はあるが、これほど国際色豊かではないらしい。
伝統と国際性が共存しているところに、日本の屋台文化の特徴がある。


その中でポーランド人が関心を示したのが、揚げたスパゲッティに塩やカレー粉で味付けした「スパボー」だ。
彼はヨーロッパでそんな食べ物を見たことがないという。
ハンガリー人もイタリアには何度か行ったことがあるが、「スパボー」を知らなかった。
看板に「イタリアン」と書いてあったから、個人的にはイタリア発祥かと思ったら、じつは「スパボー」は日本発祥のお菓子だった。
このように日本生まれの「海外風グルメ」を作り出してしまうことにも、日本人の食に対する情熱と好奇心が表れている。
知人のイギリス人も、日本のテレビ番組にはグルメ情報や「食レポ」があまりに多いから、驚きを超えてあきれていた。
ただし、英語に比べると、美味しさを表す表現は少ないらしい。
彼女は日本語を学んでいて、どの出演者も「おいしー!」「うまーい!」と叫ぶのを聞いてウンザリしていた。

「ラムネ」は西洋の「レモネード(lemonade)」が由来になっていて、日本独自の飲み物として定着した。


花火|綿密な計画と多彩なバリエーション
屋台のほかに、外国人が母国との大きな違いとして指摘したのは「花火の表現力の豊かさ」だ。日本の花火はバラエティーが豊富らしい。
彼らの国では、同じような種類の花火が短時間に打ち上げられる。
それに対して、日本では1時間以上にわたって、地上で炸裂する花火、ナイアガラ、夜空にハートやニコニコマークを描くものなど、さまざまな花火を見ることができる。
日本の花火大会では綿密なプログラムに沿って、多彩な演出が展開される。
計算された時間配分や花火職人の技術の高さは、外国人にとっては新鮮な体験だった。
浴衣|祭りをいろどる伝統衣装
ナイジェリア人が「アニメと同じだ」と感動したのが、会場のあちこちにいる浴衣姿の女性だ。
夏祭りの雰囲気を盛り上げるこの日本の伝統衣装には、外国人としては目を奪われる。
しかし、「日常生活と伝統衣装の距離感」という点では、国ごとに大きな違いがあるようだ。
ポーランドやハンガリーでは、祭りなどのイベントで伝統衣装を見ることはあるが、日本ほど一般化していない。
彼らの国で伝統衣装は高くて手入れも大変だから、観光業など一部の人が持っているだけで、一般家庭には普及していないという。
3人とも伝統衣装を持っていなかった。
だから、祭り会場で市民が当たり前のように浴衣を着ている光景を見ると、日本では生活の中で「伝統衣装が生きている」と感じる。
一方、インド、バングラデシュ、ナイジェリアでは、伝統衣装が日本よりも日常に溶け込んでいるという。
インドやバングラデシュではサリーを着て仕事や遊びに行く人が多いし、ナイジェリアでも市場へ行けば、たくさんの人が民族衣装を着て買い物をしている。
つまり日本の浴衣文化は、「特別な人だけが着るヨーロッパ」と「完全な普段着として残る南アジア・アフリカ」のちょうど中間に位置しているらしい。
では最後に、今回の4つの視点から日本文化のまとめをしよう。
秩序:高いルール順守の意識と集団規律が根付いているから、ルールを守って整然と行動する。「他人の目が気になる」という要素もあると思われる。
食:屋台のメニューでは、昔からの定番・新しい流行・世界各国の食文化を貪欲に取り入れて常に進化している。日本人の旺盛な探求心がうかがえる。
花火:海外では短時間の一斉連射が主流だが、日本では時間をかけて多彩な花火を披露する。日本人らしい緻密な計画性と高い技術が背後にある。
伝統衣装:ヨーロッパよりは特別感はないけれど、南アジアやアフリカのように「日常着」にはなっていない。
季節のイベントなどちょっとした機会に、「一般市民が自然に親しむ文化」として成立している。

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