有名なスポーツ選手の場合、プレーそのものではなくて、その選手が身につけている物が話題になることはよくある。
最近では、ヴィッセル神戸のポドルスキ選手がそうだ。
Jリーグのデビュー戦でいきなり2得点をあげている。
それもすごいのだけど、この試合でポドルスキ選手が履いていた「キャプテン翼」のスパイクも大きな注目を集めた。
右足に大空翼、左足に日向小次郎がえがかれている。
「ESPN」でも、キャプテン翼スパイクを紹介していた。
くわしくは「サッカーキング」の記事をどうぞ。
ポドルスキのキャプ翼スパイクが独でも話題「マンガシューズでファンの心に一撃」
ポドルスキ選手のこのスパイクについて、母国ドイツのメディアも好意的に伝えている。
日独友好のほほえましいニュースだ。
これならいい。
これなら、ね。
バレーボール女子韓国代表のキム・ヨンギョン選手のシューズが、いま日本と韓国で注目を集めている。
キム選手は韓国女子バレーボール界の英雄で、「女帝」ともよばれている。
それほどの有名選手ともなると、スポンサー契約を結びたがるメーカーが出て当然。
キム選手は日本のスポーツメーカーとスポンサー契約を結んでいて、試合ではそのメーカーのシューズをはいている。
でも、8月15日におこなわれたバレーボールの国際試合では違った。
この日キム選手がはいていたシューズには、日本のメーカーのロゴがまったく見えなかった。
ロゴの上に「大韓独立万歳」と書いたテープをはっていたから。
朝鮮日報にその記事(2017/08/17)がある。
キム・ヨンギョンの所属事務所は「この靴のメーカーはキム選手とスポンサーシップ契約を結んでいるので仕方がなかった。その代わり、あらかじめメーカー側の了解を得てテープでロゴマークを隠した」と話している。
「女子バレー:キム・ヨンギョン、日本製シューズのロゴ隠す」
日本のメーカーが了解しているのなら、問題はないんだろう。
注目度の高い試合でロゴを隠されたら、広告の意味がないとは思うけど。
「大韓独立万歳」というシールをはった「女帝」のスパイクを見たい人は、ネットで検索してほしい。
著作権の関係で、ここには画像をのせられないから。
日本人にしてみたら、この露骨な「日本隠し」に良い気分はしない。
でも、韓国人のキム選手にしてみたら、これは絶対に必要な処置だったはず。
これをしなかったら、韓国で「親日」というレッテルをはられてしまうから。
韓国での「親日」という言葉には、「民族の裏切り者」という意味がある。
このレッテルをはられると、時には韓国社会から抹殺されることもある。
このバレーボールの試合があったのは8月15日だ。
日本がアメリカに降伏した8月15日(終戦記念日)は、韓国では日本の支配から解放された「光復節(こうふくせつ)」にあたる。
韓国人にとって、とても重要な日だ。
韓国情報サイト「KONEST」にはこう書いてある。
この日は大統領が参席する天安(チョナン)の独立記念館の式典をはじめとして、小学生の作文大会や絵描き大会、写真公募展など全国で行事が行なわれます。当日は、街のいたるところに韓国の国旗である太極旗が掲げられ、全国の家庭に太極旗を掲揚するよう奨励しています。
この日は3月1日とならんで、愛国反日の雰囲気がとても高まる。
日本の支配からの解放を祝う記念日に、韓国代表の選手が日本メーカーのロゴを見せたまま試合をしていたら、韓国で袋叩きにされることは間違いない。
このシューズがテレビに映るたびに、韓国人は気分を悪くするだろう。
しかも、キム・ヨンギョン選手は韓国代表の主将でもある。
この「日本隠し」は仕方がないと思う。
この「愛国アピール」を韓国の人々はどう受けとめたのか?
「やっぱり」というか、絶賛されたようだ。
レコードチャイナの記事から。
これを報じたメディアの一つ、スポーツソウルは、長く海外リーグで活躍するキム・ヨンギョンが太極旗(韓国国旗)をあしらった手首用サポーターを着用するなど普段から「並々ならぬ愛国心」を示していると紹介、今回のシューズの一件を受け「実力も人格も最高だ」と絶賛した。
韓国のネットでも「本当に立派。尊敬します」「常識がある選手だね」と、キム選手を支持する声が圧倒的らしい。
ただ、韓国人にとって「常識がある選手」というのは日本では逆に見えることもある。
ネットではこんな意見があった。
愛国心が高まる日には日本企業のロゴを隠したくなるものなのかね
愛国心がすごいな。日本の若者も見習うべき
今後韓国人はスポンサーを探すのが 今まで以上に大変になるぞ。
これらはおだやかな意見だ。
実際には、ここではのせらないような言葉がたくさんある。
個人的には、キム・ヨンギョン選手が気の毒に思う。
韓国社会の反応を考えたら、8月15日に「日本メーカーのロゴまるだし」で試合をするのは「たたいてくれ」とアピールしているようなもの。
スポーツ選手が試合だけに集中できず、それ以外のことにも気を配らないといけないのは大変だ。
でも。これぐらいなら大したことでもない。
2012年のロンドン・オリンピックで、「独島(竹島)はわれわれの領土」と韓国語で書かれたメッセージをかかげたサッカー選手に比べたらずっとまし。
この時は、「韓国のスポーツ選手がオリンピックに政治を持ちこんだ!」と大問題になっている。
2013年2月12日、国際オリンピック委員会理事会は、朴と韓国オリンピック委員会に『強い警告(strong warnings)』を行い、韓国オリンピック委員会はオリンピック憲章とオリンピック精神を韓国人競技者に理解させるための教育計画を設計し、国際オリンピック委員会から承認を得ることが義務付けられた。
「独島はわれわれの領土」や「慰安婦問題は解決されていない」といった政治的なメッセージよりは、「大韓独立万歳」という単純な愛国アピールのほうがまだおだやかだ。
まあ、そもそもキム選手が韓国のメーカーとスポンサー契約を結んでいたら、こんな問題は起きようがなかったわけだが。
このオリンピックでの事件以来、韓国がスポーツの場で政治的アピールをすることは少なくなったように思う。
でもポドルスキ選手のように、韓国人選手が日本のアニメキャラのあるシューズで試合ができる日は、きっとまだまだ先だ。
でも、「ザ・ワールド」のこんなニュースもある。
札幌サポーターの”温かさ”に韓国紙も注目 オウンゴールをした韓国人GKへの横断幕に感激
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