今月10日、韓国の文(ムン)大統領が2015年の慰安婦合意について、韓国政府の立場を発表した。
その文大統領の言葉に日本では、韓国への怒り・失望・不安といったいや~な空気が広がりまくり。
日本の全国紙を見るとこんな感じだ。
朝日新聞「理解に苦しむ表明である」
毎日新聞「それを否定しては合意の根幹を傷つけてしまう。」
読売新聞「韓国の文在寅政権の態度は、外交常識に外れ、非礼である」
産経新聞「日本に甘えるのはやめよ」
新聞は格調高くて上品な表現を使っているけど、率直な国民感情(ネットの反応)はこんな具合だ。
「何言ってんのか分からない。だれかドラゴンボールでたとえて」
「はあ?あり得ねえし!」
「ひどすぎ。もう相手にしなくてよくね?」
表現は違うけれど、言っていることはだいたい上の新聞と同じ。
日本政府もそうだ。
韓国政府は、慰安婦問題での日本との合意を軽く見ている。
そんな韓国に対して、「韓国政府を相手とせず」という雰囲気が今の日本政府にある。
日テレニュース24の報道(2017年12月27日)では、政府は今の韓国をまともな交渉相手とは考えていない。
外務省関係者は、「相手にしない方がいい。放置だ」と話している。政府高官は、「最終的かつ不可逆的」とした日韓合意は「国際公約だ」としている。
「韓国側の検証 日本政府は「無関係」と認識」
では、文在寅大統領はいったい何を言って、ここまで日本を怒らせたのか?
でもその前に、日本が慰安婦合意をどう認識しているのかを確認しておこう。
外務省のホームページにはこう書いてある。
2015年12月28日には、ソウルにて日韓外相会談が開催され、本件につき妥結に至り、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されることが確認されました。
慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に」解決された。
だから、慰安婦問題の解決のために、日韓で話し合うことはもうない。
あってはいけない。
韓国政府もこの内容で合意した。
このときは。
では改めて、文大統領は新年の記者会見で何を語ったのか?
2015年の慰安婦合意について、問題はあるけれど、韓国政府は合意の「再交渉や破棄はしない」と言った。
これはいい。
韓国が「あの合意は間違っていた。合意を破棄する」なんて宣言したら、日韓関係は戦後最悪を超えて修復できないぐらい悪化してしまうから。
でも、この後がひどい。
文大統領はこんなことを言いやがりました。
「日本に慰安婦問題の真実と正義という原則に立脚した解決をうながす」
「日本がその真実を認めて、また被害者のおばあさんたちに誠意を見せて謝罪し、(中略)おばあさんたちも日本を許すことができ、それが完全な慰安婦問題の解決になると考える」
「慰安婦のおばあさんたちは、日本が出したお金で措置が取られることを受け入れられないという立場だ」
「韓日の公式合意であることは否定できず、日本との関係改善も極めて重要だが、間違った結び目はほどかなければならない」
「慰安婦問題が解決するためには、日本の真の謝罪が必要だ」
文大統領はキメ顔でこんなことを言った。
文大統領がそう言ったとたん、日本はこれに大反発する。
さっき書いたように、慰安婦問題は2015年の日韓合意で、最終的に解決されている。
韓国政府もそれを確認した。
日本はこの合意にもとづいて、安倍首相が心からのお詫びを表明した。
なのに、「また新しい謝罪が必要だ」となると、真の謝罪ではなくて”新の謝罪”になってしまう。
日本経済新聞の記事(2018/1/12)でも、安倍首相は韓国の謝罪要求を受け入れる考えがまったくない。
日本側に求めている謝罪に応じない考えを示した。「日韓合意は国と国との約束だ。これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできない」
「首相、慰安婦への謝罪「受け入れられない」 日韓合意の履行を要求」
「日韓合意の変更は受け入れられない」というのが日本政府の立場だ。
2年後の今になって、「他にもこれをやってはしい」なんて追加措置を求められてもムリ。
無理無理無理。
この考えは日本政府だけではない。
日本の新聞の中で、文大統領の言葉の一部なら認めているところはあった。
でも、「日本は誠意を見せて謝罪をするべき」という言葉に、「そのとおりだ」と応じた日本のマスコミはない。
ネットの書きこみでも、「それはムリ」という反応ばかり。
日本全体を見れば、文大統領に「ノー」を突きつけている。
一般常識から考えても、追加要求はいいことではない。
職場で「君、あとこれもやってくれたまえ」と後から仕事を追加する上司は、部下から舌打ちされる。
ましてや、「君は私に言われなくても、自発的にこれをやるべきだ」なんて言われたらたまらない。
韓国は日本に、自発的な謝罪を求めている。
今の韓国政府の立場をよくあらわしているのはこの言葉だ。
「韓日の公式合意であることは否定できず日本との関係改善も極めて重要だが、間違った結び目はほどかなければならない」
2015年の慰安婦合意は、国家間で結ばれた公式なものであることは間違いない。
これは日本との約束だから、韓日関係を考えたら、韓国が一方的に破棄することはできない。
でも同時に、「この合意で慰安婦問題は解決できない」と韓国は考えている。
つまり韓国政府は慰安婦合意について、「否定はできないけれど、間違った合意(間違った結び目)だ」と、一見矛盾した認識をしめしている。
日本と元慰安婦の両方に配慮したから、こんな変なことになってしまう。
でも、韓国政府が本当に言いたいことは、「重要だが」の次だ。
韓国の本音は「間違った結び目はほどかなければならない」ということになる。
日韓合意を「間違った結び目」と呼んだ韓国に、日本が怒った。
続きは次回っす。
おまけ
文中の「韓国政府を相手とせず」という言葉の元ネタは、1938年の「近衛声明(このえせいめい)」にある。
日中戦争のとき、第1次近衛内閣が「爾後国民政府を対手(相手)とせず,新興支那政権の成立発展を期待する」という声明を出した。
けっこう有名な言葉だから、知っておいて損はないですよ。
今の日本政府も、「今後文政権を相手とせず、新政権の成立発展を期待する」なんて思っているかもね。
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