平昌五輪:すごいのは小平・李選手で、日本と韓国ではない。

 

今回の平昌五輪では、たくさんのすばらしいものを見ることができた。

そのひとつに「モルゲッソヨ」という韓国芸術がある。

 

モルゲッソヨ×3

 

まあこの像はどうでもいいとして、個人的には次の3つが印象に残っている。

・羽生結弦選手が金メダルをとったこと。
・小平奈緒選手が金をとって、ライバル選手と抱き合ったこと。
・カーリング女子「そだねー日本」が銅メダルをとったこと。

2番目は、小平奈緒選手と韓国の李相花(イ・サンファ)選手のこと。
スピードスケート女子500メートルで小平選手が1位、李選手が2位でゴールした後、2人はリンクの上で抱き合っていた。

このシーンは目に焼きついた。
今回はこの感動の場面と「でも冷静にね」ということを書いていこうと思う。

 

 

レースが終わった後、小平選手は李選手にこう言った。

「リスペクトしているよ」

李選手はこう返す。

「あなたを誇りに思う」

そして2人は日本と韓国の国旗を持ってリンクを回る。
観客は2人に大歓声を浴びせる。

 

ロイター通信はこれを「真の平和五輪」と世界に配信した。

「試合が終わって、2人が抱き合って祝福し合う光景は、本当に素晴らしい光景だった」。安倍首相は19日、自身初の金メダルに輝いた小平選手を祝福する電話で、同選手にこう述べた。

小平と李の友情、「真の平和五輪」と日韓で称賛

 

産経新聞の記事(2018.2.19)によると、別の欧米のメディアは小平選手についてこう報じている。

「過去2回の五輪チャンピオンに小平が気遣いを見せた。真のスポーツマンシップを発揮した」

「真のスポーツマンシップ」「連帯の精神だ」欧米メディア、泣きじゃくる李相花に思いやり示した小平奈緒を賞賛

 

競技が終わった別の日に、KBS(韓国放送公社:日本でいうNHK)のインタビューで李選手はこんな話をしている。

「私が泣いている時、奈緒が近づいて慰めてくれた。その時、さらに涙が出た」
「小さいごろから共にしてきた仲で、お互いに格別な愛情があったようだ」
「私がいたからこそ彼女がおり、彼女も私がいたからこそここまで一緒に来られたと思う」
「今回一緒に五輪の授賞台に並んで上がることができたのもとても良かった」

中央日報の記事(2018年02月21日)から。

李相花「小平がいたからこそ私がおり、私がいたからこそ彼女がいた」

 

李選手と小平選手は一緒にインスタグラムのライブ放送をおこなっていたらしい。
記事にはこう書いてある。

2人はライブの間、ずっとお互いの名前を呼んで肩を組むなど友情を見せ、お互いに好きな韓国と日本の食べ物に対する話をした。

 

日本では、朝日新聞が社説(2018年2月27日)でこの瞬間を特別重視していた。

両選手がみせた国境を超えた友情は、多くの共感と感動を呼び、スポーツがもつ力を強く印象づけた。ぜひ東京に引き継ぎたい財産だ。

平昌→東京 五輪への思いをつなぐ

 

韓国紙の中央日報では、韓国の大学教授が「平昌五輪の名場面」として、この2人をコラム(2018年02月26日)で取り上げている。

日本の小平奈緒選手と一緒にそれぞれの国旗を手に観衆に一人ひとり挨拶をしていた場面は、公正な競争を越えるスポーツマンシップを見せてくれた

平昌五輪「名場面」の李相花-小平の抱擁(1)

 

ハンギョレ新聞も記事(2018-02-19)でこの2人の友情に焦点を当てた。

二人の素晴らしい競争と美しい友情に惜しみない賛辞を贈りたい。

韓国スケート・李選手の涙、感動の平昌

 

ただこの記事では 「彼女は金メダルより貴重な銀メダルを首にかけた」と書いてあるように、自国の李選手の方を持ち上げている。

激励の拍手を惜しみなく送り、視聴者たちは彼女とともに心の中で涙ぐんだ。

彼女が流した涙はおそらく私たちのスポーツ史上最も美しく印象的な感動の瞬間として残るだろう。

 

受け止め方はどうあれ、小平選手と李選手の友情はたくさんの日本人と韓国人の胸を熱くさせたことは間違いない。

 

 

ただ、心は熱くなっても頭は冷静でないといけない。

前にノンフィクションライターの窪田順生氏の文章を紹介した。

この人は「すごいのは日本ではなくて選手」という考え方をしていて、ダイヤモンド・オンラインの記事(2018.2.22)でこう書いている。

「すごい」と評価されるべきは、小平選手であり、彼女の夢を支え続けた相澤病院や、スピードスケートの関係者という「個人」であり、「日本」がすごいわけではないのだ。

五輪「日本大躍進」報道のウソ、日本がメダル量産国になれない理由

 

ボクは「すごいのは選手だけど、日本もすごい」と考えているから、基本的にこの考え方は合わない。

でも小平選手と李選手の友情については、この言葉には耳を傾けないといけないと思う。
この考え方にしたがえば、2人の抱擁もきっとこうなる。

「すごい」と評価されるべきは、小平選手と李選手であり(中略)「日本と韓国」がすごいわけではないのだ。

 

たしかにそのとおり。
すごいのは2人の選手であって、日本と韓国ではない。

2人でライブ放送をやったことからもわかるように、もともと小平選手と李選手は互いを認め合っていて仲が良かった。

小平選手と李選手が抱き合ったからといって、日本と韓国の国民がこうなるわけでもないし日韓関係も変わらない。
選手がすごいのであって、”日本と韓国がすごいわけではないのだ”。

そういう冷静さを持ちながら、2人の友情に感動した方がいい。

 

 

平昌五輪では高木菜那選手も金メダルをとっている。

その表彰式で”事件”が起きた。
韓国のテレビ局が「君が代」を流したことで、韓国で問題視されている。
「j-castニュース」の記事(2018/2/26)から。

3大地上波の一つ、SBSが「君が代」を流した、と韓国内で批判が殺到している、との報道が出た。

金・高木菜那表彰の裏で起きた騒動 韓国SBS「君が代」放送に批判!局は反論

 

韓国人にとって「君が代」は帝国主義や軍国主義のシンボルで、それを耳にすると不快になる人がたくさんいる。

韓国では、小平選手と李選手が抱き合ったのを見て涙を流す人もいれば、「韓国でのオリンピックといっても、日本の国歌を流すとはけしからん!」と放送局に抗議する人もいる。

韓国には親日と反日が同時に存在している。
「韓国は~だ」と先入観をもつと、きっと韓国を誤解する。

韓国については、良い情報と悪い情報を同時に手に入れた方がいい。
情報を伝える側が意図的にもう一方の情報を伝えないことが多いから。

 

似ていても同じではない。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。