第二次世界大戦中、ユダヤ人が存在することを認めなかったナチス=ドイツは、その絶滅を目的に大虐殺を行っていた(ホロコースト)。
でも、そんな悪魔から命をかけてユダヤ人を守った人もいる。
ユダヤ人以外の人間でユダヤ人を助けた人を、イスラエルは「諸国民の中の正義の人」と呼んでいる。
「命のビザ」を発給して、約6000人のユダヤ人の命を救った杉原千畝も「諸国民の中の正義の人」のひとり。
ユダヤ人を守った非ユダヤ人をイスラエルは忘れない。
それでいまではこんな「恩返し」をしている。
経済的困窮の状態にある諸国民の中の正義の人は、たとえどこに居住していても、正義の人のためのユダヤ人基金によって経済的援助を受けることが出来る。この基金はニューヨークに拠点を構える慈善団体であり、この目的のために設立された。
この場合の正義は分かりやすい。
何の罪もなく殺される人を守る行為は、誰がどう見ても正義だから。
杉原千畝は切手のデザインにもなった。
イスラエル(ユダヤ人)の正義は理解できるのだけど、よく分からないのが韓国の言う正義だ。
今月18日にソウルで開かれた「韓日・日韓協力委員会合同総会」で、文大統領が日本側にこんなメッセージを送っている。
「韓日関係のためにも真実を直視しなければならない」
「植民地時代は両国にとってつらい過去だ。しかし、つらいからといって真実から目を背けるわけにはいかない」
「両国が相手の立場に立って、正義と原則を構築すれば、心からの友人になれる」
日本側では、河野外相がこの総会にメッセージを寄せている。
「日韓パートナーシップ宣言20周年という節目に当たる本年、未来志向の日韓関係構築に向けて協力していくことをさまざまな機会に確認している」
「韓国でそれに逆行するような動きが昨今、続いていることに強い懸念を抱いている」
以上の言葉は、中央日報の記事(2018年11月19日)から。
文大統領「真実直視を」 河野外相「関係構築に逆行するような動きが続き懸念」=日本メディア
河野外相の言う「それ」とは、未来志向の日韓関係の構築のこと。
それに逆行する動きとは、韓国最高裁が下した判決のこと。
韓国側は53年前の約束を一方的に破って、日本を怒りあきれさせた。
では、最高裁の判決に対して、韓国政府はどんな立場をとるのか?
日本は具体的にそれを知りたいのだけど、韓国政府から出てくる言葉は今回のように「真実、正義、原則」という概念ばかり。
韓国はこの総会に文大統領がメッセージを寄せたけど、日本は安倍首相ではなくて河野外相だった。
このメッセージは分かりやすい。
ユダヤ人を救った「命のビザ」
とはいえ、日本も韓国と未来志向の関係を築きたいことはたしか。
そのためにも、韓国政府に徴用工訴訟への具体的な対応を示してほしいのだけど、返ってくるのは、
「真実を直視しなければならない」
「正義と原則を構築すれば、心からの友人になれる」
と、ほぼポエム。
そう言えば、良いことだけを言って有効な経済対策をとれない文大統領にこう言っていた。
善意は良い結果を保証するわけではない。善意は理想を現実に変えることができる能力が前提になる場合に意味がある。実力と現実感覚が伴わない善意は雲をつかむような机上の空論にすぎない。善意は無能の免罪符ではない。
文大統領、善意は無能の免罪符でない
良い人アピールで、何かを隠そうとしてはいけない。
「真実を直視しなければならない」のはどっちか?
日本政府が言いたいこともきっとこれと同じ。
文大統領には「善意は分かったから、そろそろ能力を見せてほしい」と思っているのではないか?
でもその気配すらない。
だから日本政府はいまの文大統領を相手にしていない。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加したとき、安倍首相は各国首脳と積極的に話をしたけど、文大統領は完全スルー。
産経新聞の記事(2108/11/18)
文氏と会談しても無意味だと判断、「戦略的放置」に徹したようだ。
(中略)文氏が安倍首相に駆け寄り握手を求めた。首相は握手こそしたものの、話しかけてきた中国の李克強首相に顔を向けたという。安倍首相帰国 文大統領とは「戦略的放置」
正義と真実しか語れない人を相手にしても時間のムダ。
それでもまだ、文大統領の言う正義に説得力があればいいのだけど、結局それは韓国の国民感情だから、日本の支持は得られない。
「韓国の中の正義の人」に日本は共感できないのだ。
未来志向の韓日関係のために、文大統領が国内世論を説得したら本当のヒーローになれるのだけど、韓国紙にすら「善意は無能の免罪符でない」と叱られる人にはハードルが高いか。
それにしても、もし日本が国際司法裁判所に韓国を提訴したら、韓国はそこでも「真実」や「心からの友人」なんてものを主張するつもりなのか。
韓国が叫ぶ正義は世界に通用するのか、それとも韓国限定だったのか?
それを無視・放置していた日本は正しかったのか?
もうすぐそれが分かる。
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