【徴用工訴訟】三菱重工敗訴、日韓関係にあたえた衝撃と意味

「困難（苦境）は友を敵に変える」

およそ2000年前、ユリウス・カエサル（紀元前100年～前44年）がそんなことを言った。
カエサルは優れた政治家であり軍人だ。諸葛孔明のような人。

高校世界史でならう超重要人物だから、ぜひ知っておこう。

カエサル

ガリア遠征に成功して権力基盤を固めた後、ポンペイウスを打倒。前44年終身ディクタトルとなって独裁権を握った。属州出身者の元老院入りを可能にし、カルタゴなどへの植民、ユリウス暦の採用など諸改革を実施したが、ブルートゥスらの共和主義者に暗殺された。

「世界史用語集　（山川出版）」

英語のJuly（７月）は、「ユリウス（ジュリアス）」にちなんでいる。

カエサル

慰安婦財団の解散に、徴用工訴訟での日本企業敗訴。
最近の日韓関係は「苦境は友を敵に変える」の連続でどんどん悪化している。

先月10月、韓国の最高裁判所が新日鉄住金に敗訴を言い渡す。
元徴用工１人につき約1000万円を支払うよう新日鉄住金に命じた。
韓国の最高裁がこんな判決をくだしたのはこれが初めて。

そしてきのうも日本企業（三菱重工業）が敗訴して、韓国の最高裁は同社に、元徴用工や元女子勤労挺身（ていしん）隊員への賠償を命じた。
今度は２件同時だ。
ちなみに賠償金は１人あたりに800万～1500万円ほど。

もちろん日本側は、政府も企業もこの判決を受け入れていない。
そんなことがあってはいけない。
「日本政府、韓国最高裁の判決を受諾」みたいなことは、ポツダム宣言でしたからもういい。

そもそも、この徴用工問題はすでに解決しているのだ。
1965年の日韓請求権協定にもとづいて、日本は韓国に５億ドルという巨額の経済支援をおこなっている。
これは韓国の国家予算のおよそ２倍というとんでもない金額だ。
これで徴用工や請求権の問題は完全、最終的に解決した。
だから三菱重工の敗訴は衝撃的で、河野外務大臣は「日韓関係に桁違いの影響を及ぼす重大な出来事」とまで言う。

もし元徴用工の人たちにお金を渡すのなら、韓国が出さないといけない。
日本から５億ドルを受け取ったのは韓国政府なのだから。

キリスト教の聖書には「カエサルのものはカエサルに」と書いてある。
「皇帝（カエサル）のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」ということで、「本来の持ち主に返せ」という意味になる。
元徴用工が受け取るべきお金を、韓国政府は経済発展に使ってしまった。
だから韓国は政府は、徴用工のものは徴用工に返さないといけない。
韓国の問題は韓国が解決するべき。

ところで、きのうの敗訴でハッキリしたことがある。
これは終わりへの始まりだ。
まだ韓国には10件以上の訴訟が残っていて、日本企業約70社が被告になっている。
このすべての裁判で日本側は負ける。

10月に初めて敗訴が出たのだけど、きのうの裁判で日本側が勝訴していたら、まだ分からなかった。
まあ、そんな展開はアニメかマンガだけと思っていたけど。
最高裁で続けて３回敗訴したのだから、これからの裁判でも日本は確実に負ける。
もう、そう言い切る。
その流れが示されてしまったのだから。
きのうの裁判にはそんな意味がある。

カエサルのこの言葉は世界中で有名だ。

「賽（さい）は投げられた」

カエサルはサイを投げ飛ばすほどパワフルだった。という意味ではない。
「さいころ」のさい（英語でdie）のこと。
さいころを振ったらゲームは始まってしまう。

カエサルはルビコン川をわたるときに、そう言ったといわれる。
ルビコン川を越えたら、もうローマと戦うしかない。
「賽は投げられた」とは、もうやるしかないということ。
「there is no going back」で、もう後戻りはできないのだ。

最高裁が続けて３件、日本側敗訴を言い渡してしまったのだから、もう「なし」にはできないしこれからも敗訴が続く。
「苦境は友を敵に変える」というけれど、これでは日本での韓国への敵意が強まるばかりだ。

もう韓国政府はあれこれ考えている場合ではない。
韓国が責任を持って解決するしかなくなったのだ。
きのうの裁判にはそんな意味もある。

中央日報も社説（2018年11月30日）で、日韓関係“終了”への危機感を隠さない。