「地獄の門」といえば、ダンテの長編叙事詩「神曲」に出てくるこの言葉が有名ですよ。
我を過ぐれば憂ひの都あり
我を過ぐれば永遠の苦患あり
我を過ぐれば滅亡の民あり
(中略)
なんじらここに入るもの一切の望みをすてよ
とくに最後の言葉は、深い絶望をあらわす表現として世界的に知られている。
でも、「望みをすてよ」と言ってくれるなんて親切だ。
本当の地獄の門には、「希望」が書いてあるから。
ユダヤ人が大量虐殺されたアウシュヴィッツ強制収容所の門には、「ARBEIT MACHT FREI(働いた者は自由になれる)」とある。
よく見ると、「B」が上下逆さまになっている。
これはナチスに対する反抗という説もあるけど、実際にはこの当時の流行で、大した意味はないらしい。
「働いた者は自由になれる」というのはもちろんウソ。
この収容所に入ったら確実に殺される。
希望のあとに絶望をあたえられるなら、「ここに入るもの一切の望みをすてよ」とはじめに言ってくれた方がいい。
静岡県立美術館にある「地獄の門」
さて、ここからガラリと話が変わりますよ。
トルクメニスタンにある世界的に有名な観光名所「地獄の門」について書いていこうと思う。
まずはトルクメニスタンの場所を確認しましょうか。
トルクメは北海道の横にある。
面積は日本の1.3倍あるけど、人口は580万人しかない。
つまり国内には、広大な無人の荒野が広がっているのだ。
ちなみにトルクメニスタンは、スイスと同じく「永世中立国」に認められている。
理由は知らない。
この国については、この記事をご覧あれ。
トルクメニスタンは資源に恵まれていて、天然ガスは世界第4位の埋蔵量を誇っている。
しかし1971年、天然ガスを発見したときに落盤事故が発生。
それで地面に、直径50〜100メートルの大穴が開いてしまう。
その穴からは悪魔、のような有毒ガスが次々と出てきた。
それを封印するために、やむを得ず火をつけることを決定した。
「火をガスのふたにする」という発想だ。
するとどうなったか?
地下からのガス放出は止まらないため、いま現在も燃え続けている。
昼も夜も燃えているこの場所を、住民は「地獄の門(地獄の扉)」と呼ぶようになった。
でも、災い転じて福となす。
落盤事故の現場がいまでは、世界的に有名な観光スポットになっている。
トルクメニスタンに行く日本人旅行者のブログを見ると、まず間違いなくここに行っている。
神曲とは違って、ここには望みをもって行っていい。
この穴をのぞいた旅行者のブログから、その様子を見せてもらおう。
地獄の門の感想は?
砂漠の中に穴が開いて燃えてる~~~!!
テンションが高い友人は興奮気味。
あまり感動しない私も珍しく感動して、気付いたら「おー!」って声を発してました(笑)
ここに埋まっている天然ガスがなくなるまで、炎は燃え続けることになる。
でもその前に、ここを見れなくなってしまうかもしれない。
過去には、地獄の門を閉じようとしたこともあるから。
ロイター通信の記事(2010年4月21日)
トルクメニスタンで40年間燃える「地獄の門」、大統領が封鎖指示
この大穴が周囲のガス田開発のジャマになっているらしい。
ということで、地獄を見たいなら早めに行ったほうがいい。
おまけの動画
おまけのおまけ
トルクメニスタンから、まあ近いと言ったら近いところに「火焔山」がある。
ここは中国の有名観光スポットで、西遊記にも「炎が上がる山」として出てくる。
夏になるとここは50度超えも珍しくない。
熱地獄ではある。
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