韓国のメディアの「ひたすら嫉妬する日本と中国」のその中身

 

人間ならだれでも抱く嫉妬の感情。
辞書の説明には「日常的に、他人の優れた点に引け目を感じたり、恨んだり憎んだりするというほどの感情である」(日本大百科全書の解説)とあって、この感情は激しい憎悪や敵意をもつ場合もあるという。

どれぐらいの人が気づいているか分からないけど、韓国の全国紙の報道によれば、いま日本人は韓国のサッカー代表・ソンフンミン選手にひたすら嫉妬しているのだ。

朝鮮日報(2020/04/23)

英国では「『SON』最高」と言っているのに、ひたすら嫉妬する中国と日本

イギリス・プレミアリーグのトッテナムに所属している(いまは韓国で軍事訓練中の)ソン選手ついて、「現役最高レベルの選手として認めている」というイギリス・メディアもあるのに、中国と日本はねたんでばかりいる。(え?)

でも記事を見ると、ソン選手をトッテナムで最高の選手に選んだ英メディアがあっただけで、全メディアの投票結果ではないし、プレミアリーグ全体というわけでもない。
それでもソン選手の才能や活躍は、ドにわかのボクでも知っているぐらいだから、アジアで最高峰にいることは間違いない。
でも中国と日本が、他人の優れた点に引け目を感じたり、恨んだり憎んだりしていたというのは初耳。しかもひたすらときたもんだ。

では記事を見て、その根拠を確かめよう。
まず中国メディア「新浪体育」が軍事訓練を受けるソン選手について、「今回の訓練で身体的・精神的に向上した姿を見せてほしい」と書く。
これはソン選手が今季のプレミアリーグで、あまりに多くのレッドカードをもらっていることを指摘したものだ。
これは事実で、ソン選手のラフプレーはよく批判の的となっている。
新浪体育は、ソン選手が「最も価値のあるアジア人選手であり、ワールドクラスの選手だ」と評価したうえでこう書いた。

「しかし、感情コントロールが困難だという問題点を抱えている。EPLで数回退場処分となっており、ソン・フンミンの感情コントロールの失敗はトッテナムの成績に大きな影響を及ぼしている」

「ソン・フンミン自身もこの問題を認識しているだろう。特に、一部の報復的な反則は本当に疑問だ。ついに海兵隊に姿を現したソン・フンミンは3週間の短期訓練を受ける。心と体が安定を取り戻し、今後さらなる発展を遂げることを願う」

中国メディアはソン選手の欠点を指摘して、それを克服することでさらなる高みに登ってほしいと辛口のエールを送っているようにボクには見えるのだけど、韓国メディアには「ひたすら嫉妬」になる。
これを「ねたみ」と解釈する日本のメディアはない。

 

では日本の嫉妬についてはどうか?

日本のサッカーメディア、フットボールチャンネルが「『攻撃力』は申し分ないものの、試合の中でフラストレーションを溜め込み退場処分を受けることもしばしば。『守備力』や『フィジカル』以外にも『メンタル』面で数値が上がり切らず」ということで、「世界のトッププレーヤー能力値ランキング」でソン選手を45位とした。

日中のメディアがソン選手の弱点に触れると、韓国側は「嫉妬した」と受け止める。

あと日本については、ネット掲示板に「1年もたっていないのにレッドカードを3回もらうやつなのに、祖国のルールは守るんだね」「ラフプレーで試合中、相手にけがを負わせた行為は許せない」という書き込みがあったことで「嫉妬認定」している。
でも、ネットの匿名コメントを根拠にするというのは説得力に欠ける。
この記者が書き込んだ可能性もあるし、そもそも本当にあったのかも分からない。

 

ソン・フンミン選手がレッドカードをもらったことを知っていて、ネットに書き込む日本人なんて人口の1%以下じゃないか?
それは例外中の例外で、ほとんどの日本人には関係ないのだけど、韓国の全国紙は「ひたすら嫉妬する中国と日本」と記事の見出しに書いてしまう。
ソン選手の優れた点に日中が引け目を感じている、という設定は韓国の読者にとって相当気持ちがいいということだ。

 

韓国メディアはこういう韓国中心の報道をよくする。
きょねん2019年には中国で行われたサッカーU-18の国際大会(パンダカップ)で、優勝した韓国代表選手がトロフィーを足で踏んづけるパフォーマンスをして中国側が激怒する騒ぎを起こした。
韓国チームの優勝をはく奪して怒る中国を、韓国メディアは「韓国への劣等感」のせいにしたことで、中国側をさらに熱くさせた。

これはサッカーダイジェストの記事(2019/6/4)

「中国側の劣等感が引き起こした!」韓国メディアが“踏みつけ愚行”のバッシングに猛烈反論!

 

日本に対しては2018年の「BTS・原爆Tシャツ騒動」でそんな態度を見せた。
韓国の人気アイドルグループ防弾少年団(BTS)のメンバーが原爆投下の写真がプリントされたTシャツを着ていたことがわかって、日本人が怒り、ミュージックステーションへの出演が中止された。

当時、イギリスBBCの記事(9 November 2018)は広島在住の日本人の声を紹介していた。

“I am a resident of Hiroshima, I will not allow BTS to appear on the Music Station. They made a joke of the atomic bomb,” one Twitter user had said ahead of the cancelled performance.

BTS T-shirt: Japanese TV show cancels BTS appearance over atomic bomb shirt

 

原爆投下というのは絶対にジョークにしていいものではない。
こういう理由で日本人が怒っていたのだけど、韓国の中央日報はこう報じる。(2018年10月29日)

“嫉妬した”日本、防弾少年団の揚げ足取り? 原爆Tシャツ「非常識」

BTSの世界的な人気に嫉妬した日本が揚げ足を取っている。
全国紙がこういう記事を書いて、国民もそれを信じてしまう。

韓国メディアは昔からこういう報道をしているのだ。
中国や日本が韓国に劣等感を持つ、嫉妬しているというニュースを国民は大好きらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。