ことし9月、菅新首相が誕生するとお隣さんからメッセージが届いた。
韓国のムンジェイン大統領が首相就任を祝う書簡を送り、「韓日関係をさらに発展させるため一緒に努力したい」と伝える。
戦後最悪といわれるいまの両国関係を打破したい!というムン大統領の強い意思はこんな言葉からも読み取れる。
朝日新聞の記事(2020年9月21日)
韓国大統領府の報道官は同日、「文大統領は基本的価値と戦略的利益を共有するだけでなく、地理的にも文化的にも最も近い友人である日本政府と、いつでも向き合って対話する準備ができている」と明らかにしていた。
「未来志向の日韓関係を期待」 菅首相が文大統領に返信
菅首相はこれに感謝の気持ちと「両国は重要な隣国である」、「両国が困難な問題を克服し、未来志向の関係を期待する」というメッセージを応えたとか。
「韓日関係をさらに発展させるため一緒に努力したい」
「いつでも向き合って対話する準備ができている」
そう言ったムン大統領にさっそく有言実行のチャンスがきたようだ。
朝鮮日報の記事(2020/11/07)
「菅首相訪韓のためには対話の環境を整えることが先決」
いま韓国政府は年内に韓中日三カ国首脳会議を開き、菅首相とムン大統領が直接話し合う場を設定したいと考えていて、その実現に向けて調整中だ。
ホストがパーティーを主催しても、ゲストが来ないと何も始まらない。
ということで韓国側は菅首相の訪韓を切に期待しているのだけど、菅氏はそんな隣国に「宿題」を提示した。
「戦後最悪」の主原因となっている元徴用工問題について、原告側が日本企業の資産を現金化しないことを韓国政府が確約すれば、年内の韓国訪問は可能というのが日本政府の立場だ。
韓国がつくった問題は韓国が責任もって解決してほしいということで、元徴用工問題で日本が受け入れ可能な案の提示を求めている。
ムン大統領が「地理的にも文化的にも最も近い友人である日本政府」の頼みを断ることは考えられない。
では、先ほどの朝鮮日報の記事について触れよう。
韓国で開催された「平和と繁栄のための済州フォーラム」に参加した富田駐韓日本大使に韓国メディアが、「菅首相が韓中日三カ国首脳会議に出席するため来韓する可能性は高いと考えるか」と質問する。
このとき富田大使の答えた内容がいまの日本政府の立場とみていい。
「今のところ首脳会談に関する具体的な日程は決まっていないと承知している」
「(韓日首脳間で)対話が可能な環境が(先に)造成されなければならないと思う」
「両国の指導者が会ったとき、国民感情がどうなるか考えて見なければならない」
「2人の指導者が両国国民が持つ様々な疑問にどう答えるか、双方の努力を通じて回答を見いだす必要がありそうだ」
「いずれにしても対話が可能な環境が造成されなければならないと思う」
「いかなる首脳会談であっても、それを成功させるには環境が重要になるだろう」
具体的な日時はきまってないけど、菅首相には韓国を訪れる気持ちが確かにある。
そのためにホストは、ゲストが気持ち良く訪問できるよう準備をしてほしいということだ。
日本大使の反応について、「韓国の大法院(最高裁に相当)による強制徴用賠償判決などをめぐる両国の対立解消がまずは優先されるべき」と分析した韓国メディアは大正解。
まずはこの問題で、韓国側が合理的な解決案を提示してくれないと話し合いは不可能だ。
つい先日おこなわれた日韓の局長会議がそれを象徴している。
ハンギョレ新聞の記事(2020-10-30)
8カ月ぶりの韓日局長会議「お互いの立場の違い」のみ確認
韓国側は元徴用工問題で日本に「誠意ある姿勢」を強調した一方、日本は受け入れ可能な解決策を早急に提示するよう韓国に強く求めた。
さらに言えば韓国は「不当な輸出規制」を速やかに撤回するよう求めたという。
考え方が全然ちがうから話はまるでかみ合わず、8カ月ぶりの局長会議で分かったことは、いまの日韓の立場ではこの問題を話し合いで解決するのは不可能ということだ。
まずは韓国が対話の環境を整えてくれないと、菅首相とムン大統領が会っても同じ失敗を同じように繰り返すだけ。
「お互い妥協できない」を確認して終わりという、不毛な話し合いになってしまう。
「基本的価値と戦略的利益を共有するだけでなく、地理的にも文化的にも最も近い友人である日本政府と、いつでも向き合って対話する準備ができている」
ではそう言った以上、見せてもらおうか、ムン大統領の本気とやらを。
資産の現金化はもう目の前だから、ムン政権は一方的な国内事情を持ち出して「やらない言い訳」をしている場合じゃない。
韓日関係を破綻から救うには、「さらに発展させるため一緒に努力したい」と言ったムン大統領の有言実行、リーダーシップが必要だ。
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いかなる美辞麗句を動員しても, 文政権は、目前に迫った危機を免れようとするだけで、日本を友達に思っていません。彼らの友達は中国だけです。