国連で「性奴隷」を封印? 反日と対日で混乱する韓国政府

 

つい先日、国連人権理事会で演説した、韓国外交部(外務省)のチェ・ジョンムン第2次官のことばを見て「おっ」と思った。

中央日報の記事(2021.02.24)

韓国外交部次官、国連で慰安婦メッセージ…「貴重な教訓得なければ」

記事によるとこの場でチェ次官はこんな発言をしたという。

「現在と未来世代は第2次世界大戦慰安婦被害者の苦痛な経験から貴重な教訓を得なければならない」

「韓国政府は被害者中心の原則の下で、高齢でその数が減っている慰安婦生存者の尊厳と名誉を回復するために継続して努力していく。世界の戦争性犯罪被害者に対する支援も継続する」

このほかにもチェ氏は、現在でも紛争地域で女性に対する性暴力が行われていることを指摘し、「こうした重大な人権侵害が発生しないようにしなければならない」と強調する。
これについては日本政府も同じ見解をもっていて異論の余地はない。

ただ韓国を代表する人間が国連の場で慰安婦について述べたのに、日本を直接非難することなく、しかも「性奴隷」の表現を出さないのはめずらしいと思う。
*あとから日本メディアで、「慰安婦の悲劇は普遍的な人権問題として取り上げられるべきだ」という点に、日本が「全く受け入れられない」と強調したという報道を見た。でも韓国側は日本を名指ししてはいない。

 

慰安婦問題については日韓両政府が2015年の合意で最終的な解決を確認し、世界に向けて両国外相が握手をしてその成果を知らせた。
このとき韓国は日本に対して、こんな約束もしたのだ。

ハンギョレ新聞の記事(2017-12-29)

日本側「挺対協説得」「性奴隷の単語禁止」…ほとんどすべて聞き入れた韓国側

「挺対協説得」とは、この市民団体を説得して、日本大使館前にある慰安婦像を撤去させることだったのに、2021年になったいまでもこの約束は守られていない。
「すべて聞き入れた」といっても、実際には右から左の耳へ通り抜けただけで意味がない。

また慰安婦問題の公式名称は「日本軍慰安婦被害者問題のみ」と確認したことで、韓国側は「性奴隷」ということばを公式の場で使えなくなった。
はずだった。
なのに2018年、国連の女子差別撤廃委員会でチョン女性家族相が「性奴隷」という表現を使うから、日本政府が怒る。

産経新聞の記事(2018.2.23)

外務省の声明は、慰安婦問題は2015年の日韓合意で決着済みだとして、「『性奴隷』の表現は事実に反する。使うべきではない」と主張。

韓国閣僚の「性奴隷」発言 「受け入れがたい」と外務省抗議 国連委員会で

 

日韓合意で「国連や国際社会で互いに批判をしない」と確認したなのにコレだ。
日本の「受け入れがたく、非常に遺憾」という抗議の力のなさは相変わらず絶望的。

韓国の大臣が国連の場で「性奴隷」を使った理由は、「国連委員の立場を尊重する観点から」と言うのだから、もうわけがわからない。
国内の反日世論の受けをねらって、まずは言ってみて、あとから適当な言い訳を考えたとしか思えぬ。
でも21年の今回は、国連での演説で韓国側は「性奴隷」とは言わなかった。

その理由はなにか?
もちろん記事には書いていないけれど、それをうかがわせる出来事が最近あった。

(すでに終わった)慰安婦問題の解決について、文大統領が「日本の心からの謝罪にかかっている」と日本を挑発するようなことを言うと、その同じ日に大統領府の報道官が、韓日関係は重要だと強調し大統領の発言は「韓日関係正常化の努力が発言の趣旨だった」とこれまた取ってつけたようなことを話す。

前者は国内向け、後者は日本に向けた内容だから、全体として矛盾した内容になってしまった。

これまで政治目的で国民の反日感情をあおってきたものの、ここにきて日本との関係構築が必要となったことで、過去の自分と現在の利益で挟まれてしまい、いま韓国政府はかなり苦心しているらしい。

中央日報の記事(2021.02.21)

これ自体が対日基調の変化と関連して韓国政府が明確な立場整理をできていないという傍証ではないのかとの解釈も出ている。(中略)どうすることもできない韓国政府の混乱した雰囲気が見え続けている。

「日本は謝罪すべき」→「韓日関係重要」…数時間で話変わった青瓦台なぜ

 

「性奴隷」が消えた理由とこの混乱は無関係ではないはず。
いままで韓国政府があとさき考えずに反日を利用してきたから、いまになって「立場整理をできていない」、「どうすることもできない」となった。
それを日本語で「自業自得」という。

 

おまけ

これは7年前の産経新聞の記事(2014.7.16)

慰安婦を「性奴隷」と表現することを「不適切」とする見解を表明した。日本政府が公の場で「性奴隷」の表現を否定したのは極めて珍しいという。

「『性奴隷』は不適切な表現だ」 日本政府代表、国連で表明

 

国連の場で「性奴隷」ということばが使われても、それまでの日本は黙っていた。
国際社会で沈黙は黙認とみなされ、反論しなかったら「日本は性奴隷を受け入れた」と世界に思われるのは当たり前。
日本はいまこのツケを払っている。
これはこれで自業自得だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。