日韓関係のいま：”不適切発言”から韓国の「日本叩き」始まる

韓国にいる日本公使が韓国メディアとの非公式の話し合いのなかで、日韓関係をめぐる韓国文政権の一方的な外交姿勢を「マスターベーションをしている」と表現し大騒ぎになっている。

だが待ってほしい。
これは文大統領に対して言った言葉ではないし、公使も不適切発言と気づいてその場ですぐに撤回した。
でもこの発言をしたことは事実。
それを確認した駐韓日本大使は「外交官として極めて不適切で非常に残念だ」と言い、公使に厳重に注意を与えた。
非公式での話なのになんでこうなったかというと、公使の発言を韓国メディアが外部にもらしたから。
結果論として、公使にも”スキ”があった。「ここだけでの話ですヨ」なんて言われても信用せずに、公開の場と思って話をするべきだった。

この失言に対して韓国側は「誰にでもミスはある。ケンチャナヨー（大丈夫だー）」と明るく言って一件落着。するわけがなく、文政権と同じ与党に属する議員は一斉に「日本叩き」を始めた。

中央日報日本語版の記事（2021.07.18）

「衝撃的」「このままやり過ごせない」…韓国政界も駐韓公使「自慰行為」妄言に日本叩き

大統領候補のイ・ジェミョン氏は「今回の事態を起こした当事者に対し厳正に問責し、政府次元の公式な謝罪と再発防止策を出すよう望む」と日本政府に謝罪を要求し、同じく大統領候補であるイ・ナギョン議員はこう非難。

「韓国大統領の歩みに関しとても口にするのが難しい表現でおとしめた。外交官が駐在国の大統領に対してした話とは到底信じられない」
「日本はいつも政治家や当局者の妄言で両国関係に冷や水を浴びせている」

ほかにも、「到底信じられない水準。非常に衝撃的」、「駐在国に対する尊重の気持ちが少しでもあるならば絶対に言えない言葉」と批判し、日本政府が「相応の措置」をとらないのなら「韓国政府が措置を取るべき。このままやり過ごすことはできない」と息巻く議員もいて日本バッシングが止まらない状況だ。

失言は事実でも、文大統領に対する言葉ではないという日本側の主張は完全否定され、韓国の政治家は日本公使が文大統領に向けて言ったと国民にアピールする。
そしてボクが見た限りでは、「その場ですぐ撤回した」という重要なポイントが彼らの主張にはない。

政治家の「日本叩き」で反日感情をあおられたせいか、韓国の市民団体がこの公使を侮辱・名誉棄損の疑いで警察に告発した。
厳重注意を受けた公使はこのあと、韓国外へ異動することになった。これは間違いなく、事実上の更迭だ。
にもかかわらず韓国では、この「妄言」（まぁこれは否定できない）を政治的に利用する動きも出てきた。

ハンギョレ新聞の記事（2021-07-20）

韓日首脳会談、「歴史問題・輸出規制」問題を調整中に「妄言」で台無しに

これは日本の報道とは違う。
「歴史問題・輸出規制」で文政権がほぼ一方的に譲歩を求めてきたけど、日本が最後までNOと言いつづけて日韓首脳会談はお流れになった、という見方が日本では一般的だ。
例えばこれは読売新聞の記事（2021/07/20）

訪日見送り、文氏の「瀬戸際外交」失敗…首脳会談に成果求め日本に譲歩迫る

公使の発言がマイナスの影響を与えたことは確かとしても、これで「台無し」は言い過ぎ。
成果を欲張りすぎた文政権に最大の原因があるのだから、「瀬戸際外交」の失敗を公使に押し付けるのはアンフェアだ。
日本政府は冷め切っているのに、あれこれ一方的に要求してきた韓国政府の外交姿勢を公使は「マスターベーションをしている」とやゆしたのだと思う。
「一人相撲」という表現なら、ここまでの騒ぎにはならなかったはず。

大使ならともなくこれは公使個人の問題で、日本全体に責任があるわけではない。
日本政府はその非を認め実質的な“処分”をおこない、韓国議員の言う「相応の措置」をしたのだから、これ以上することはない。
とにかく戦後最悪と言われる日韓関係の、現在地を象徴するようなドタバタだった。