情の韓国人と理の日本人:大学受験でわかる国民性の違い

 

もう10年ぐらい前のこと、東京に住んでいた韓国人(20代・女性)が母国に帰るというので、一緒にご飯を食べに行った。
それまでの生活をふり返って日本人と韓国人の性格の違いを聞いてみたら、「そうですねえ」と考えてからこんなことを話す。

「一番の違いは情ですね。日本人はルールやきまりを第一に考えて、自分をそれに当てはめようとします。でも韓国人は困っている人を助けようとするから、ルールを柔軟に変えることがよくあります。きまりや原則を守るか、それを人に合わせるかはどちらにも良い面・悪い面があります。でも、日本人のメンタルで韓国で生活すると周囲から“固い・冷たい”と思われて、逆だと“ワガママ・甘えてる”と思われるでしょうね」

 

そんな日韓の国民性がとてもよく表れるのが、韓国で毎年秋に行われる大学入試験(大学修学能力試験:修能)だ。
上の韓国人がこの話を日本人にすると年齢・性別に関係なく、「マジで?信じられん」「日本じゃあり得ない」という反応が返ってきたという。
韓国の大学入試は、日本の感覚ではもはやアニメの世界。
この日は国家・国民が全集中で受験生に配慮して、最高の受験環境を整えようとするから、そのようすは日本でもよくニュースになる。

読売新聞の記事(2021/11/18)

超学歴社会の韓国、人生を大きく左右する大学入試…騒音防止で航空機の離着陸も原則禁止

「修能を制する者は人生を制する」という言い方は、韓国社会では大げさではない。
試験にかけてきた受験生の努力や思いはみんな知っているから、この日は受験生が“王”となって、彼らを中心に社会は動く。
英語のリスニング試験のときには、騒音を防ぐために、全国の空港で航空機の離着陸が原則禁止されるのだ。
不満があるとデモを行って、拡声器を使って大声で訴える韓国の人たちも、文句を言わずにこの不便を受け入れて協力する。

そして受験生が「会場に遅れそうなんです!助けてください!」と警察に電話すると、パトカーや白バイがすぐに駆けつけて会場へ運んでくれる。
これは韓国の「秋の風物詩」で、ことしも朝鮮日報にこんな記事があった。(2021/11/18)

受験会場に到着した受験生護送バイク /ソウル

記事の写真を見ると、ノーヘルの受験生を後ろに乗せた警察官が、回転灯を回しながら白バイで緊急輸送している。
これは毎年のことだからもう慣れた。
でもこれにはアキレタ。

朝鮮日報(2021/11/18)

入室締め切り10分前の午前8時に警察に「うちの子が今起きた」と電話で助けを求める市民もいた。警察は、海雲台区在住のC君を自宅前から試験会場まで護送した。

大学入試当日、入室10分前に警察に電話「うちの子が今起きました」 /釜山

 

親が警察に電話するとパトカーか白バイが自宅にやってきて、「うちの子」を会場までスーパーダッシュで輸送ではなく、護送してくれる。
”護送”というのはサイレンを鳴らし、信号も無視して受験生を運ぶということだろう。
ほかにも警察がフル稼働して、「受験会場を間違えた!」、「家に受験票を忘れた!」という受験生を会場に届けた。
結局この試験の日、釜山警察だけで遅刻が理由で38件、試験会場の間違いが3件、受験票忘れが1件の計42件の護送要請を受けたいう。
ウーバーより気軽かも。

これが日本の警察なら、「おきのどくですが、そんな理由でパトカーは出せません」と断るのが当たり前。
サイレンを鳴らして受験生を運ぶという展開が、あるとしたらアニメの第一話ぐらいか。
世間もきっと同じだ。
大雪で電車が止まったとかならともかく、遅刻や受験票を忘れたといった個人的な理由は論外で「受験生の自己責任」、「甘えんな」で終わるはず。
そんな受験生を税金を使って救済するのは、国民の理解を得られない。
きまりやルールがあって、それに人が合わせないといけないのが日本の社会だから。

でも韓国ではすべてがこの反対で、航空機の離着陸は禁止されるし、困った受験生がいたら警察が動く。
とにかく社会全体で何とかしようとする。
これは全国的なことだから、国民性といっていい。

情を重視する韓国も、理を優先する日本もそれぞれの社会ではそれぞれが正しい。
「住めば都」になるかは別として、「郷に入っては郷に従え」で、現地の価値観や文化は守らないといけない。
でも歴史問題になると、日韓のどっちも妥協できないから、いつまでたっても終わらない。

 

 

 

 

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4 件のコメント

  • それ本当に、「誰であっても」「田舎から上京してきた受験生であっても」「その地域の有力者に何のコネもない一般人であっても」「外国人であっても」警察が助けてくれるのですかね?
    単なる「えこひいき」と何が違うの?

  • 韓国人たちが自分の子供たちを必ず大学に入学させようとする理由は、学問を勉強した両班を優遇した、朝鮮500年の伝統があったからです。その学問というものも、中国の朱子学、性理学に過ぎず、実生活に必要な技術や自然科学は軽視したので、なかったといえるのです。その儒教を学んだ約30%の両班が朝鮮時代を支配したことが滅亡の原因となりました。両班(ヤンバン)を除く一般民衆や奴婢(男女slave)の暮らしは悲惨なものでした。
    特に、奴婢たちは人権を完全に無視したと考えても良いでしょう。奴婢たちの名は動物や物でした。
    例えば、ケトン(犬の糞)、バウィー(岩)、マダンセ(庭の牛)などでした。
    そんな賤民を含む一般民が、両班たちを敬い、一度だけでも両班たちのように生きてみたいと思うのは当然のことです。そんな考えが現代韓国で、無条件大学を卒業してホワイトカラー生活をしなければならないという強迫観念になったようです。韓国の修学能力試験日に行われる珍しい風景の背景にそんな痛い過去があります。

  • 試験でないと不公平に感じる人がいるでしょうし、問題点はあってもいまの形式を続けていくでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。