年末になると清水寺で発表されるのが「今年の漢字」。
2021年は、
・東京オリンピック・パラリンピックでたくさんの日本人選手が金メダルをとった。
・大リーグの大谷翔平選手や将棋の藤井聡太さんなどが金字塔が打ち立てた。
・新型コロナの感染が広がってお金をめぐる話題が多かった。
といったことから「金」の字が選ばれた。
海外へ目を向けると、世界的権威のある「オックスフォード英語辞典」を発行する出版社が「今年の単語」に選んだのは「vax(バックス)」。
これが「vaccine(ワクチン)」を短縮した言葉であることは説明する必要があっても、これが選ばれた理由や背景については、いま地球上に生きている人なら言わずもがな。
コロナ・ころな・coronaで明け暮れたことし、個人的には「ワクチンを接種する(打つ)」を意味する「vaccinate」という英単語を自然とおぼえてしまった。
ほかにも知人のアメリカ人は単に「shot」でいいと言う。
*正確には「get vaccinated(get a shot)」。
スマホやパソコンで「vaccine」なんて打ち込むのはイチイチ面倒で、楽な方向へ流れるのは人間の本能だから、たくさんの外国人が「vax」を使うようになったのよくわかる。
さて、ここからが本題。
この「vaccine」の語源をご存じだろうか。
これはラテン語の「vacca」(ワッカ:雌牛)といわれていて、このラテン語を由来にして「雌牛」を表すイタリア語のバッカやスペイン語のバカという言葉がうまれた。
このスペイン語の響きは、日本人にはこの上なくなじみがあるから、「いきなり『バカ!』と言われた」みたいにネタにされることがある。
*これは「牛(vaca)がいるぞ!」ってこと。
ほかにもニンニクはスペイン語で「アホ(ajo)」というから、料理を作っている友人から「おまえはアホは好きか?」と聞かれて戸惑ったという日本人もいる。
ちなみにインドネシア語で「baka」は「永遠」という意味だからかなりカッコいい。
でも「永遠のバカ」と言われると絶望感しかない。
雌牛がワクチンの語源となったのは、人類が感染症対策として初めて作り出したワクチンが牛痘に由来するものだったから。
ただそのせいでヨーロッパでは、ワクチン接種(種痘)をすると「牛のような顔になる」といった迷信が広がって、これを拒否する人が続出した。
残念ながら、21世紀のいまも同じレベルの人がいる。
コロナワクチンを「殺人兵器」とするようなデマがネットで拡散されて、それを信じて接種を拒否する人がいる。
まぁ千歩ゆずってそれだけならいい。
ドイツでは近ごろ、ワクチン反対派のなかに、接種を進める政治家を脅迫する人たちが出てきた。
時事通信(2021年12月19日)
脅迫文には、肉片は新型コロナと、ナチスが強制収容所のガス室で使ったとされる殺虫剤「ツィクロンB」で汚染されており、ワクチンへの抵抗は「血みどろ」になると記されていた。
反ワクチン、過激化深刻に 政治家の殺害計画―独
こういう人間が語源になって、バカやアホを表す新しいコトバができるかも。
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> 出版社が「今年の単語」に選んだのは「vax(バックス)」。(改行)これが「vaccine(ワクチン)」を短縮した言葉であることは説明する必要があっても、・・・
うーん、もうちょっと丁寧に説明してあげないと一般の人々には理解が難しいと思いますよ。「vaccine」の意味は「ワクチン」ですが、英語の発音は「ヴァクシン」です。だから短縮語が「vax(ヴァックス)」なんですけどね。英語の「virus(英音:ヴァイラス、独音:ウィルス)」と同様の発音です。
> 個人的には「ワクチンを接種する(打つ)」を意味する「vaccinate」という英単語を自然とおぼえてしまった。(改行)ほかにも知人のアメリカ人は単に「shot」でいいと言う。(改行)*正確には「get vaccinated(get a shot)」。
「shot」は口語で「注射」の意味ですね。つまりワクチンに限らず、解熱剤でも、インスリンでも、注射だったら「get a shot」で「注射する」という意味になるので通じます。これに対して、「vaccinate」は動詞で、「ワクチンを討つ」という意味です。そのままの形で「vaccinate (~誰々に)against(対~病として)」のように他動詞として使います。
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数学(集合論)の記号の「⊃、⊂、=、∈、∉」は英語や日本語など自然言語では厳密に区別できないことが多いですが、その曖昧さが、人間同士のコミュニケーションの失敗原因の一つとなる場合が多いです。
また、「get vaccinated」という言い方は、過去分詞の形容詞的用法です。英語的に間違いではないが、「get」「come」「make」「go」「have」などの「あいまい動詞」を併用するのは、学術論文ではあまり望ましくないとされています。論文(特に理数系の)では、名詞でも、動詞でも、形容詞でも、なるべく具体的な限定的用法・用語を使うべきなんです。