それは権利か迷惑か? 日本人とドイツ人の“自己肯定感”の違い  

 

日本人てのは、どんな人たちなのか?
日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの7か国の若者(13~29歳)を対象にアンケート調査を行ったところ、日本人の自己肯定感は最低だった。
ほかの国に比べると日本人は自分に自信がなく、役に立たないと考える人が多い。

具体的なデータは内閣府の「日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~」でチェックだ。

たとえば「自分自身に満足している」という日本人は45.1%で7か国中、最下位だ。
「自分には長所がある」の項目も最下位(62.2%)で、「自分は役に立たないと強く感じる」は4位。

全体的に日本人は自分をポジティブに捉えてないし、自分を大事にしない残念な傾向がある。
そんなことからドイツ在住のライフアドバイザー、キューリング 恵美子さんがプレジデントオンラインの記事で「自分のことを、もっともっと肯定してあげましょう」と書く。(2021/12/13)

お互いを「ママ」「パパ」とは絶対に呼ばない…日本人とは根本的に違うドイツ人の人生観

 

「自分自身に満足している」では日本人(45.1%)に比べて、ドイツ人は81.8%とほぼ2倍。
日本人が最下位だった「自分には長所がある」の項目でも、イエスと答えたドイツ人は91.4%いて7か国の中でトップだ。
「自分は役に立たないと強く感じる」の問いに「そう思わない」と否定した日本人は48.2%だったことに対して、ドイツ人は68.2%が「そう思わない」と答えた。これも7か国で一番高い。
ということで恵美子さんは、「ドイツ人がいかに自分に自信があるかをよく示しています」という。

自己肯定感の低い日本人とえらく高いドイツ人、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い。
その大きな要因は、自己肯定感を高める生き方をしているかどうかだと恵美子は指摘する。
たとえば日本だと子どもが生まれると、夫婦では子どもが最優先・中心となって、お互いを「ママ」「パパ」と呼ぶようになることが多い。
でも、ドイツでそんな夫婦を一度も見たことがないという。
子どもが生まれても個人としての自分を大切するから、ドイツ人夫婦は子どもを介した「ママ」「パパ」と呼ぶことはないし、子どもを家に残して夫婦でコンサートや映画、食事に行って自分の人生を楽しむ。

また恵美子さんから見ると、日本では、

「電車やバスでは静かにしなさい」
「幼稚園で大騒ぎするのはやめなさい」

と大人が子どもに「強いる教育が一般的」だけど、ドイツの子育てはそうではない。
そうした注意をを与えることで、「子どもが自分で考え、自分で感じて、自分で選択して行動する機会を奪っているように思えてなりません。」という。
だから日本人は大人になっても、自分の意見を持って主張するのが苦手になってしまうと主張する。
そんな恵美子さん、日本の人たちに声を大にしてこう訴えたいらしい。

自分の思いを押し殺さず、「他人の迷惑」なんて気にしないで、あなたのやりたいことをやりたいようにしてみましょう。子育て中の方も、子どもたちがのびのびと育つように、「他人に迷惑をかけるから」の言葉を封印してみてはいかがでしょうか。

ドイツのブレーメン

 

上の話は個人の意見だから、参考になるポイントがあれば取り入れたらいいし、なければ無視すればよろし。
そういう主体性が大事だと、キューリング恵美子さんは言うのだから。
さて、

・自分の思いを押し殺さず、「他人の迷惑」なんて気にしない。
・自分のやりたいことをやりたいようにする。

これが良いかどうかは、そのときの状況やその人のキャラによる。
いま知人のドイツ人は、ドイツ人のこういう“ストロングポイント”に心の底からウンザリしていて、「他人の迷惑」をすごく気にする日本人を称賛する。
というのはドイツではこのところ、コロナのワクチン接種を拒否する人が続出して、大きな社会的リスクになっているから。

彼はすでにワクチンを3回打っていて、外出するときは必ずマスクをしている。
でも、打てないのではなくて、打たないことを選んだ反ワクチンの人たちは、それが「自分の権利だ!」と主張し、ノーマスクで密になって、規制を強める政府へのデモ活動を行う。
多くのドイツ国民がもうワクチン接種を済ませたから、自分はする必要がないと主張するバカもいるとか。
昨年からドイツ各地で数百人のデモ隊が暴徒化し、警官に暴言を浴びせる、物を投げる、殴る蹴るの暴行を加えるといった事件が続出している。

知人を含めてほとんどのドイツ人は、コロナの増加に歯止めがかからないのは反ワクチン勢力のせい、と考えているという。
*いま見たニュースによるときのう20日、ドイツで1日の新規コロナ感染者は過去最高の14万160人を記録して、下手したら60万人を超える恐れも出てきた。

それで政治家が規制を強めるとワクチン反対派は激怒し、政治家を殺害しようとする動きまで出てきた。

時事通信(2021年12月19日)

脅迫文には、肉片は新型コロナと、ナチスが強制収容所のガス室で使ったとされる殺虫剤「ツィクロンB」で汚染されており、ワクチンへの抵抗は「血みどろ」になると記されていた。

反ワクチン、過激化深刻に 政治家の殺害計画―独

 

自分の権利を守るためには、他人の生きる権利を奪ってもいいと考える人間がいる。
ドイツで脅迫材料に「ツィクロンB」を使うとか本当に頭がおかしい。

 

知人のドイツ人と話していたとき、日本でも反ワクチンのデモはあるけど規模は小さいし、警察官に襲いかかることはないと話すと、「日本の報道も見てるから知ってるよ」と言う。
国民がワクチン接種に協力し、外出するときにはマスクをつけるのは、日本人が自分より周りを優先しているからだ。いまのドイツではワガママを主張して、他人に迷惑をかけることを「自分の権利」と正当化する人間が多いと彼はため息をつく。

彼は日本へ行くことになったとき、日本脳炎のワクチン接種をした。
それは任意で、するもしないも自分の権利の範囲内にあるけど、国家レベルの重大事は個人の権利を超えている。
いまの危機的状況で「しない」という選択は無知でごう慢で、他人を危険にさらす許されない行為だというのが彼の意見。
こういうドイツ人からすると、自分より全体を優先する日本人の行動が輝いて見える。
といっても、過労死が社会問題になっている国では、「だが断る!」とダンコ自己主張しないといけない場合もあるから、優先するのは自分の権利か全体かは状況による。
自分に自信がない、自分は役に立たないと思うことは基本的にはよくない。
ただコロナ禍のいまは、日本人の「他人に迷惑をかけてはいけない」という意識からの行動抑制はいい感じだ。

 

 

ヨーロッパ 「目次」

日本 「目次」

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日本よ、これが魔女だ。ドイツのパッペンハイマー魔女判決

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。