カンボジア内戦と地雷:英雄ネズミの活躍と、なぜか一足の靴

 

かつてのサッカー日本代表の英雄・香川真司選手が最近、ベルギーのシントトロイデンへ移籍した。

一方、カンボジアの英雄ネズミ「マガワ」は、加齢とともに動きが遅くなったため半年ほど前に引退した。
するどい嗅覚を活かしてマガワはそれまでの5年間、地雷撤去の活動を行い、71個の地雷と38発の不発弾を見つけたという。
その貢献が認められ、英国の動物団体からネズミとしては初めて金メダルを授与された。

そんなネズミさんの活躍に日本のネット民の感想は?

・馬鹿は動物虐待とか言いそう
・働けなくなった誇り高い動物を撃ち殺してあげるのがゴルゴ
・ネズミですら働いてるのにお前らと来たら…
・どこかのおうちでのんびり過ごして欲しいわ
・英雄ネズミのワガママに見えた
・ディズニーが映画化

 

カンボジア旅行で泊まった宿にあった持ち込み禁止物
こんな物をつい持ち込んじゃうウッカリさんがいたらしい。

 

ネズミの「マガワ」が活躍しないといけなかったのは、カンボジアの大地に無数の地雷が埋まっているから。
その原因は1970年代の内戦にあって、最大で600万個の地雷が仕掛けられたからだ。
つまり、マガワくんはバカな人間の後始末をさせられたことになる。

シハヌーク国王が中国を訪問していた1970年3月、母国カンボジアでは将軍ロン・ノルがクーデターを起こし、シハヌークは国家元首としての地位を失った。
そしてロン・ノルはその年の10月にクメール共和国の樹立を宣言。
当時、隣国では北ベトナムと南ベトナム(アメリカ)との戦争が始まっていて、北ベトナムに味方するシハヌークは反米色を強めていった。

それで親米的な政権を必要としていたアメリカの後押しを受けて、親米というか従米のロン・ノル政権が爆誕する。
こうしてカンボジアはロン・ノル政府とそれに反対するシハヌーク派、さらにポル=ポトを指導者とするクメール=ルージュが加わって内戦状態へ突入し、それは最終的に1993年まで続く。
これによって何十万人もの農民が犠牲となり、何百万もの人たちが難民化した。
農業が受けたダメージも壊滅的だ。

農業インフラは徹底的に破壊され、1969年には耕作面積249万ヘクタールを有し米23万トンを輸出していたカンボジアは、1974年には耕作面積5万ヘクタールとなり28万2000トンの米を輸入し、米の値段は1971年10リアルから1975年340リアルにまで急騰した。

カンボジア内戦

 

田んぼを破壊して大量の地雷を埋めたから、内戦後、関係ないカンボジアの人たちが苦労することになる。
カンボジア人ガイドから聞いた話では、地雷を踏んでも人が死ぬことは少なくて、片足を吹っ飛ばされることが多いとか。
10人の敵が攻めてきて1人が死んだら9人になるけど、1人の負傷者が出たらそのケアをしないといけなくなるから、その方が戦力を減らすことができる。さらに医療物資や人員、カネなどを使わせることができるから、戦争の「コスパ」を考えると地雷は殺害を目的とせず、少ない火薬で人に大けがを負わせることがいいらしい。
地雷1つ約3ドルで、それを探し出して撤去するには200~1,000ドルほどかかるという。
だから地雷の敷設と撤去のバランスはまったく合わず、争いが終わった後には、数え切れないほどの地雷が残されたままとなる。
結果、何の罪も責任もない人たちがその犠牲となる。

 

20年以上前にカンボジアを旅行したとき、市場で一足だけのサンダルやスニーカーが置いてあるのを見て首をひねった。
もう一方の靴はなくなったのか、それとも盗まれたのか?
それにしても不自然だったから、宿に戻ってカンボジア人スタッフに聞くと、あれは地雷で片足をなくした人たちのために、あえて一足ずつ売っているのだという。

 

さてつい先ほど、アメリカCNNのこんな訃報を見つけた。(2022.01.12)

地雷探知の英雄ネズミ「マガワ」逝く カンボジアで活躍

英雄マガワが100個以上の地雷と不発弾を発見したおかげで、足を失わすにすんだ人もいたはずだ。
合掌。

 

ありし日のマガワくん。

ちなみに人間界では昔、捕虜に地雷原を歩かせるようなこともしていた。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。