日本に住んでいるイギリス人が韓国ドラマを見ていて、思わぬ発見をした。
ドラマの登場人物が「ヤクソッ(약속)」と言ったのが聞こえて、日本語の「約束」と発音が似ていて状況も合っていたから、「ひょっとして」と思って英語の字幕を見ると、やっぱり「promise」と書いてあった。
日本語と韓国語には共通する言葉がたくさんあるから、こういう一致もおこる。
知人のタイ人女性も同じような経験をした。
彼女が韓流ドラマを見ていると、数字の数え方で韓国語とタイ語には似ている言葉がいくつかあったから、調べてみると以下のことに気づいた。
3はタイ語では「サーム(สิบ)」で、韓国語では「サム(삼)」になる。
10はタイ語で「シップ」、韓国語では「シプ」。
20はタイ語で「イーシップ」、韓国語では「イシプ」。
30はタイ語で「サームシップ」、韓国語では「サムシプ」。
33はタイ語で「サームシップサーム」、韓国語では「サムシップサム」になる。
これは偶然とは思えない。タイ語が韓国語に影響を受けたのか、それとも逆か?
彼女がさらに調べを深めると、どちらも中国語を由来にしているから、こんな一致現象がおきたという。
じつは日本語も同じだ。「十」という漢字が中国から伝わったとき、「ジプ」のように発音されていて、それがやがて現在の「ジッ」に変わった(10)。
だから、タイ語のシップ、韓国語のシプ、日本語のジッのルーツは「十」の中国語発音にあると考えていいだろう。
先日、タイ人と話をしていて、タイ語と韓国語の共通点は数え方以外にもあることに気づいた。
これからその内容を、日本人(ケンイチ)とタイ人(マライ)の大学生が会話をしている設定で紹介していこう。

タイのホテルなどで、スタッフがワイ(合掌)をして迎えてくれることがある。
ケンイチ:サワディー。マライ、このタイ語のあいさつって、「おはよう」「こんにちは」「さよなら」と幅広く使えるオールマイティな言葉なんだよな?
韓国語の「アンニョン」も「おはよう」「こんにちは」「さようなら」って、状況によっていろんな意味になるから、タイ語と似ていると思ったんだ。
マライ:お、よく知ってますね〜。正解です。
あ、でもケンイチさんみたいに「タイ通」と思われたい人なら、語尾に「カップ」を付けて「サワディー・カップ(クラップ)」って言わないとダメですよ。女の子なら「カー」になります。
ケンイチ:思ってねーよ、そんな嫌らしいこと。
そういや、タイの丁寧語は語尾が性別で違っているんだっけ。じゃあ、マライが大学で友だちに会ったときは、「サワディー」だけになるのか?
マライ:礼儀正しい日本人らしい発想ですね〜。
そんな敬意を示すのは他人に対してで、友だちにはそんなこと言いませんよ。わたしなら、あいさつ抜きで「今日の授業さあ〜」って本題に入ります。
ケンイチ:知り合いにはあいさつをしないんだ。
タイの人って合理的というか、面倒くさがりなところがないか? 昔タイに行ったとき、バイクタクシーが信号無視するのを何度か見たぜ。イクタクシーが信号無視するのを何度か見たぜ。
マライ:相変わらずポイントがズレてます。それは「マイペンライ(気にしない)」の精神ですね。
そんな偏見だらけのケンイチさんに、別のことばを教えてあげましょう。
タイには「ご飯食べた?」っていうあいさつもあるんですよ。
ケンイチ:ご飯? それは、毎日の健康状態をチェックしてるってこと?
マライ:違いますよ。介護施設の日常じゃないんですから。タイには年上の人が年下の面倒を見る文化があるんです。一種の気づかいですね。
ケンイチ:日本でいう「先輩・後輩」の関係かな。目下の相手を気にかけるって感じの。
マライ:まあ、そんな関係に近いですね。
年上の人が「ご飯食べた?」と聞くのは食事の有無を確認しているのではなくて、「元気?」とか「調子はどう?」といったニュアンスで、相手への親しみや愛情を込めて言っているんですよ。必ずしも、「上から下」のことばではないですけどね。
ケンイチ:そうなんだ。その話を聞いて思い出したけど、中国でも「もうご飯食べた(你吃饭了吗)?」ってあいさつの言葉がある。「あった」かもしれないけど。
中国に住んでいた日本人がそう言われたのを誤解して、「中国人は他人のプライバシーにすぐ侵入する」って不快に思ったって話も聞いた。
中国の影響か、昔は韓国人も「もうご飯食べた?」ってあいさつをしてたらしいぜ。
マライ:へぇー、ケンイチさん、物知りですね。今のは素直に感服しました。
タイには中国からの移民がたくさんいて、じつはわたしにも中国人の血が流れているんです。タイの社会では中国文化の影響が強いから、もしかしたらそのあいさつも、ルーツは中国にあるのかもしれませんね。
ケンイチ:マライにはいつも素直になってほしいね。
マライ:了解しました。では、ケンイチさん、今度わたしに会ったら、「ご飯食べた?」ってあいさつをしてください。素直におごっていただきますので。
ケンイチ:容赦なく、だろ。
マライ:ええ、手加減なく。
あと、「サワディー」は、インドのサンスクリット語の「ソワスティカー」が由来になっているそうですよ。
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