【日本史の核心】幕府と朝廷の関係、将軍の“正体”とは？

2025年12月23日

日本の歴史にあった幕府と朝廷の関係は、世界の歴史にはなかったものだから、外国人にはわかりにくい。「将軍」も特殊な存在だから、外国人には正体が見えにくい。
今回は、そんな日本史の核心と言える重要部分について書いていこう。

鎌倉幕府の成立

鎌倉幕府はいつできたのか？

以前は１１９２年に、源頼朝が朝廷から将軍（征夷大将軍）に任命されたことで、鎌倉幕府が成立したとされ、「いい国つくろうキャバクラ幕府」なんて言われていた。
しかし、それは昭和の話で、最近では１１８５年説を支持する人が多い。
源頼朝が朝廷から弟・義経を討伐せよとの命を受け、その捜索のため、各地に守護・地頭の設置を申し出た。

両者の役割を大ざっぱに言うと、地頭は「地域密着」でせまい範囲で農民から税を取り、守護は軍事・警察の役割をにない、広い範囲で治安維持をおこなっていた。
守護も地頭も鎌倉幕府に仕える御家人で、１１８５年にその設置が正式に朝廷から認められた（文治の勅許）ことで、幕府は全国的な軍事・警察権と徴税権を手に入れた。それによって、鎌倉幕府が成立したとされている。
だから、現在では「いい箱つくろうキャバクラ幕府」だ。

外国人にはわかりにくい朝廷と幕府の関係

日本の歴史に興味のあった中国人やアメリカ人から、この幕府の存在が「謎」だと聞いたことがある。彼らからすると、将軍が天皇を倒し、自分が天皇に即位して新しい王朝をはじめなかった理由がよくわからない。
海外の歴史ではそんなことが普通にあったが、日本だけは例外で、その後、幕府（将軍）と朝廷（天皇）による二重統治がはじまった。

ここまでの流れのポイントは、源頼朝が義経追討、守護・地頭の設置、将軍就任のそれぞれの重要な場面で「朝廷の許可」をもらっていたことだ。
頼朝は、自分は天皇の臣下という立場であることをわきまえていて、その一線を超えることはなかった。しかし、強大な軍事力をもっていたから、天皇から政治の権利を奪い、実質的に日本の統治者となった。
こうした頼朝の行動は世界史の常識に反しているから、外国人には天皇と将軍の関係がわかりにくい。

将軍が武士の頂点に立つ理由

その後、室町幕府や江戸幕府が成立し、将軍は日本の支配者として君臨し続けていた。
将軍は文字どおり軍の最高権力者で、将軍をトップとする政治体制の「幕府」は英語で「military government（軍事政権）」と訳されることがある。
将軍が他の有力な大名と一線を画していた根拠は、朝廷からその職をまかされたことにある。
江戸時代には、徳川家の人間だけが天皇から将軍に認められたことで、徳川将軍は「その他大勢」から抜け出し、全国の武士の頂点に立ち、大名たちを支配することができた。
つまり、将軍は自身の権威を作り出すことができず、天皇という日本の絶対的権威から、「おすそ分け」をしてもらっていたのだ。

イギリス人の提案

全国の大名たちにしてみれば、単に強い力を持つ将軍に従っていたのではなく、「天皇から日本の統治を任された者」だから、将軍に服従していたことになる。
将軍家にしてみれば、自分たちを将軍にさせられるのは天皇しかいなかったから、その存在を「消す」という自爆行為をするわけがない。

将軍の権威は京都の朝廷に由来し、それが将軍という地位をほかの大名とは違う唯一無二のものにしていた。
幕末、そんな朝廷と幕府の関係や、将軍の正体を見抜いたのが英国の外交官アーネスト・サトウだった。
彼はイギリス人という第三者の視点から、将軍は数ある大名の一人に過ぎないと考え、将軍は本来の地位に戻り、代わりに天皇を国家元首とし、諸大名が合議制で政治をおこなうことを提案する。

当時、このアイデアは薩摩藩などに影響を与え、倒幕の動きを加速させた。その圧力もあり、１８６７年、将軍・徳川慶喜は政権を朝廷に返上する事態に追い込まれた。
この大政奉還によって、将軍は天皇の権威を失い、有力大名の一人となり、幕府は事実上終わりを迎えた。
日本は天皇を中心とする明治政府が成立し、政治体制としては鎌倉幕府以前に戻って新しい時代を迎えた。