韓国人がドイツ人に投げかけた「問い」
日本の大学で学んでいたドイツ人と話をしていると、2人の韓国人留学生から別々のタイミングで、まったく同じ質問をされたと言う。
「1990年に東西ドイツが再統一して、その後どうなったの?」
戦後、世界はアメリカをボスとする「資本主義・自由主義陣営」(西側諸国)と、ソ連を盟主とする「社会主義・共産主義陣営」(東側諸国)に分かれた。
その影響から、ベトナムやドイツも2つに分断されたが、今はひとつの国家になっている。同じ理由で分裂し、今でも統一されていないのは世界で韓国と朝鮮しかない。
ドイツもその歴史を経験しているため、彼は留学生の気持ちがよくわかった。もし立場が逆なら、自分も同じ質問をしただろうと言う。

2つに割れた祖国を1つにしようとしている(韓国にあったモニュメント)。
北朝鮮に対する韓国人の意識
戦後の韓国では、北朝鮮との統一を「同じ民族だから当然のこと」と考えるのが主流だった。
これまで何人かの韓国人に意見を聞いたことがある。
2026年の今なら、50代以上の中高年・高齢者の層では「統治するべき」と「反対」で大きく分かれた。
同じ統一派の中でも、武力行使を辞さない強硬派から話し合い重視の穏健派まで幅がある。
個人的に、以前は「統一するべきか否か」の二択しかないと思っていたが、最近は「統一するタイミングを失った」という意見を聞くことが増えた。
20代・30代の若者にたずねると、「南北で価値観が広がりすぎて、ギャップを埋めるのは不可能です」と話す人が多い。
埋められない価値観と自由の差
今の韓国人が北朝鮮に対して抱く感情は、親近感や敵対心よりも「異質感」が強いように感じる。両国の価値観の違いをしめす事実はいくつもある。
たとえば、北朝鮮は住民のインターネット使用を禁じている世界で唯一の国だ。
対して韓国は、ネットを利用して韓流ドラマや歌を海外へ提供し、ブランド力を高めていて、国民は SNSで世界中とつながっている。
韓国が同じ規制をすれば、国民が激怒して「ろうそく革命」が起こり、きっと政府は崩壊するが、北朝鮮ではありえない。
先日、朝鮮日報が報じたことも、韓国では「空想世界」での出来事だ。(2026/01/24)
北朝鮮柔道の英雄・李昌寿さん(58)死去=韓国選手に敗れ地下670メートルで炭鉱労働、1991年に脱北
先日報じられた元柔道選手、李昌寿(イ・チャンス)氏のエピソードも衝撃的だ。1990年のアジア大会で韓国選手に敗れただけで、帰国後に地下670メートルの炭鉱で、腰を曲げながら朝から晩まで石炭を掘ることを強制された。
李さんは「大きく裏切られた」と国家に失望し、91年に韓国へ亡命した。
韓国なら、マンガの世界の出来事だ。
また、2024年には、ニューヨークの国連本部で開かれた委員会で、韓国代表が「北朝鮮(North Korea)」という表現を使ったところ、北朝鮮の代表は猛反発した。
北朝鮮は自国を「DPRK(Democratic People’s Republic of Korea)」、日本語では「朝鮮民主主義人民共和国」と呼ぶ。韓国側がその「正しい国名」を使わないで、国際平和や安全保障を語るのは「恥ずかしいこと」だと言い放つ。
こうした価値観や考え方のギャップから、20代のある韓国人は北朝鮮の現状を「別の惑星の話」と例えた。この気持ちに共感する韓国人は、とくに若い世代で多いはず。
最新調査:過半数が「統一は不要」
もし南北統一すれば、韓国が北朝鮮を支援し、「先進国レベル」に引き上げることになるだろう。そのために必要な教育・経済面でのコストは計り知れない。
いま韓国では、物価高などで苦しい生活をしている国民がたくさんいる。そのうえで、とんでもなく大きな負担を抱えるのはとても受け入れられない。
「統一するタイミングを失った」と話す韓国人は、ドイツのように20世紀なら、まだ可能性はあったが、もう現実的な選択ではなくなったと言う。
かつて韓国の人たちは南北統一を当然と考えていたが、最近では意識が大きく変化している。2025年に行われた最新の調査では、「統一の必要はない」という回答が51%に達し、過去最高を記録した。
ただし、「統一は必要」と答えた人は、前回に比べて約4ポイント減ったが49%いた。
現実的では「五分五分」だが、今回の調査では、すべての世代で統一の必要性に対する認識が下がっていることが確認された。
「悲願」よりも現実優先へ
ドイツでは統一から35年以上たった今でも、西側の人たちが東側を支援するために税金を払っている(全住民ではないらしい)。
南北が統一されたら、韓国人がもっと大きな負担を負うことはまず間違いない。それを「悪夢」と感じる人も多いだろう。
韓国に住む以上、北朝鮮の存在を無視することはできない。
しかし、今は「民族の悲願」よりも現状維持を優先し、良く言えば「平和共存」、実際には「永遠に交わらない隣人」を望む人が増えている。
ドイツ人に質問した留学生たちのように、「統一という美名の下に、自分たちの生活が脅かされることへの恐怖」を感じる人は多いと思われる。
ベルリンの壁が崩壊したときのような熱狂は、今の韓国には期待できない。統一のタイミングは、すでに失われたのだ。
おまけ
日本にとっても朝鮮半島の統一は重要な問題だ。
「南北分断には日本の責任もあります。 統一が実現したら、日本も必要な費用を負担しなければいけません」と真顔で言う韓国人もいた。
案外、韓国政府もそう考えているかもしれない。

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