すれば逮捕の「ナチス式敬礼」が、OKの国も欧州にある

 

海外では「してはいけないコト」というのがある。
たとえば韓国を旅行した知人のアメリカ人が何気なく、1ミクロンの悪気もなく、「日本の方が街はキレイだ」と友人の韓国人に言ったところ、相手が急に不機嫌になってしまった。
幸いそのときは「スタバでコーヒーをおごる刑」に処されただけで済んだけど、ポーランドでこれをしたら、警察に捕まって世界的ニュースになってしまう。

イギリスBBC(2022年1月24日)

アウシュヴィッツ収容所跡でナチス式敬礼 オランダ人女性に罰金刑

欧米でしてはいけない絶対的タブー、それはナチスを連想させるような言動で、これをしたら警察に捕まえることもある。
第二次世界大戦中、ナチス=ドイツはアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で、100万人以上のユダヤ人を殺害したといわれていて、ここで「挙手」のように、ひじを真っすぐ伸ばすナチス式敬礼をするのは違法行為。
ということを、知らなかったオランダ人のバカップルがいたらしい。

 

ハーケンクロイツの前でナチス式敬礼をするという、悪夢のような組み合わせ
この写真は1938年に東京有楽町の日本劇場で撮られたから、日本人としてはフクザツなところ。

 

アウシュヴィッツ収容所の「Arbeit Macht Frei」(働けば自由になる)という文字のある有名な門の前で、妻がナチス式敬礼をして、夫がそれを写真に撮っていた。
それを見つけた警備員が通報して、彼らはポーランド警察に拘束され罰金刑を言い渡された。
「悪い冗談のつもりだった」という言い訳が通じるはずもなく、訴追されて有罪になったら、このオランダ人女性には最大2年間の禁錮刑が科される。

無知とは罪。
同じところで同じ失敗をする人間は過去にもいた。
2013年には、2人のトルコ人がアウシュヴィッツ収容所でナチス式敬礼をして、禁錮6カ月の刑と罰金を言い渡された。
2017年にはドイツでこのポーズをして警察に捕まった中国人もいる。

 

2013年にはサッカーの試合で、ゴールパフォーマンスとしてナチス式の敬礼をしたギリシャの選手が代表チームから永久追放処分をくらった。
「ボクはファシストなんかじゃない。あの意味を知っていたら、あんなことはしなかった」と言っても無理。
絶対的なタブーであるナチス式敬礼をしたら、ヨーロッパではもう取り返しがつかないのだ。
って思うじゃないですか?
でも、スイスはそうでもない。

SWI(スイス公共放送協会の国際部)にこんな記事がある。(2014/06/13)

ヒトラー式敬礼が許されるスイス 「刑法は鋭い武器であるべき」と法学者

スイスの最高裁判所の判断では、人種差別行為や宣伝・プロパガンダにならなければ、ナチス式敬礼をしても罪に問うことはできない。
十字架のアクセサリーを身につけているけで、その人がキリスト教を布教しているとは見なされないように、ナチス式敬礼という行為をするだけならスイスではOKだ。
でも、それが「イデオロギーを広めている」と認められたら違法行為になる。
行為だけではなくて、その人物の思想をふくめて、もっと広く全体的な文脈から、その行為の意味を捉えて判断するのがスイスのやり方らしい。
あのオランダ人もここならきっと無罪だった。
EUに加盟してないとか、この国はイロイロ独特だ。

でもスイスのような国は例外で、ヨーロッパで「ナチス式敬礼」は基本一発アウトと考えた方がよろし。

 

 

ヨーロッパ

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。