「K防疫」とは何だったのか? 自画自賛の文大統領に冷たい視線

 

5年間の任期を終えて、韓国の文在寅(ムンジェイン)氏が先日9日に大統領の立場から退いた。
おつかれさまでした。
大統領府で行われた退任演説では、これまで自身が進めた国政運営をふり返って南北融和や新型コロナ対策の成功を誇り、「国民とともに国家的危機を乗り越えた」と感謝の意を述べる。

中日新聞(2022年5月10日)

南北融和・コロナ対策の成果強調 韓国・文大統領退任

 

Koreaの「K」を冠する韓国式のコロナ対策「K防疫」は文氏の自慢で、2年前の同じころも、

「防疫で世界をリードする国となった。」
「世界の標準になった。韓国の国家としての地位と誇りが高まっている。」

と高らかに宣言していたと朝日新聞にある。(2020年5月10日)

文大統領「韓国が防疫で世界をリード」 就任3年の演説

実際、このころの「K防疫」はとても優秀で、国内の感染拡大をうまく抑えこんでいた。
ソウルに住む知人の韓国人と話をしたときには、「日本は大変そうですね。心配です。あなたも気を付けてください」と上から目線で、いたわりの言葉をいただいたことをよく覚えている。

でもその後、新しいタイプのウイルスが生まれたりして状況は変化していき、昨年末、「K防疫」の最終段階になると状況は完全に暗転していた。

朝鮮日報(2021/12/25)

文政権が自画自賛していたK防疫はなかった…大ピンチを招いた5つの原因(上) 

このころはコロナウイルスに「K防疫」の壁がやすやすと突破され、国内で感染拡大がドンドン広がっていった結果、医療体制はひっ迫し、コロナ患者に割り当てる病床もなくなる事態が発生。
この事態に「試練が成功を作る」と訴える文大統領に、医療界をはじめとする各界の専門家は、

「今の危機は政府が自慢していた『K防疫』の失敗が積み重なった結果だ」
「政府が自画自賛するK防疫は明らかに実体がない」

と口をそろえて批判したという。
このころになると知人の韓国人も意気消沈していて、

「K防疫とは結局は、国民に犠牲を強いることでした。政府の対策は完全に失敗してます。それに比べて日本のコロナ対策は本当にすばらしいですよ。わが国も学ばないといけない。」

と、このまえと真逆のことを言う。
韓国人はけっこう浮き沈みが大きくて、成功しているときは自国を鼻高らかに誇って、失敗すると激しくディスる。
日本に上から目線でモノを言ったと思えば、謙虚になって手本にしようとする。
韓国の人たちは感情や判断の変化がとても激しい。

この後も感染拡大は止まらず拡大の一途をたどり、3月にはキム首相が「オミクロン株によるパンデミックはまさに戦争だ」「戦争中は国内の一致団結が何よりも重要だ」と国民に”戦時体制”に備えるよう呼びかける。

朝鮮日報によると専門家や国民は、そんな政府に冷たい視線を送っていた。(2022/04/03)

コロナ事態以降、最多の死亡者と感染者の記録が次々と更新されているが、それでも今の状況をいかに安易に考えているかはこんな言葉からも分かる。恥ずかしい限りだ。

【コラム】「K防疫」という名の精神勝利

 

国内の専門家の意見を無視して、政府が強引に対策を推し進めたことで、「今や韓国国内のコロナによる死亡者数と感染者数は世界最悪のレベルに転落してしまった」とある。

ハンギョレ新聞の記事によると、死者の急増で棺の生産が追い付かない。(2022-03-28)

「棺すら足りない」…コロナ死者5倍増加で「桐の棺」不足=韓国

国民の苦痛に対して、「政府が防疫の混乱と失敗を率直に謝罪すべきだ」と朝鮮日報が要求しても、文大統領はスルー。
国内では葬儀場や火葬場が大混雑しているのに、韓国大統領府は「世界が感嘆したK防疫」と自画自賛。
だから朝鮮日報は文大統領に、「謝罪はめったにしないが自慢は素速い」とため息をつく。
現実の敗北を認めず、K防疫を絶賛する韓国政府に「恥知らずな態度だ。K防疫の精神勝利はもう聞きたくない」と怒りをにじませる。
「K防疫」は確かに目を見張る成功もあったが、直近では世界最悪レベルに転落してしまったし、最終的には「精神勝利」という評価が相応しい。

 

この惨状が先月のことで、いまコロナの感染状況は少しずつ改善している。
なのに、

「防疫で世界をリードする国となった。」
「世界の標準になった。韓国の国家としての地位と誇りが高まっている。」

と最後に、「K防疫」を締めくくるのは盛り過ぎだ。
最近、知人と話をしてないけど、もう韓国のコロナ対策なんて話題にしたくないと思っているはず。

 

 

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1 個のコメント

  • 私は韓国人として、韓国で経験したK-防疫について話します。
    K-防疫は徹底した感染経路の根本的な追跡でした。感染者の移動経路、会った人、会った時間、会った場所などを追跡しました。その結果はとても効果的だったと思います。しかし、その過程で個人のプライバシーは深刻に侵害されました。また、「ソーシャルディスタンス」を強制的に規制することにより、個人の自由を制限し、個人事業者の営業活動を深刻に毀損しました。「全体のために個人の自由は制限されるしかない」という、どこかでよく聞いた概念で韓国が圧倒されました。
    しかし最終結果が最高だったら最善だったと言えるでしょうが。。。
    経済は台湾にも押される形となり、全体感染者の数や10万人当たりの死者の数などでは、日本より韓国がリードするようになりました。K-防疫は、ただプロパガンダだっただけです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。