そうか、「赤壁の戦い」があったのはきょう12月15日だったのか。
「赤壁の戦い」は日本でも知られた合戦だから、この文字を見れば、3世紀の三国志の時代に孫権&劉備の連合軍が曹操の船団を打ち破った戦いと分かる人も多いはず。
(正確には208年の12月15日)
さて先月、関東のスーパー銭湯の脱衣所で、クレジットカードを盗んだ犯人が警察に捕まった。
これだけなら「で?」という話なんだが、窃盗容疑で逮捕された人間が中国籍の「周瑜」だったことから、この事件は一気にネット民の注目を集めることになる。
「周瑜(しゅうゆ」といえば三国志の呉の武将で「曹操を破ったら、長江上流は私たちのものです」という彼の進言を受けて孫権は赤壁の戦いを決意する。
周瑜公瑾(こうきん)は日本でかなりの知名度と人気があるから、スーパー銭湯でクレジットカードを盗んだのが周瑜というのは、パワーワードにもホドがある。
もうネットで「周瑜まつり」が始まるのは避けられない。
・おのれ孔明
・何やってんだよ公瑾
・智謀をこんな事に使うとは‥
落ちたものよ
・これで小喬がフリーになるな
・子供の頃のあだ名は軍師?
・共犯は呂蒙と陸遜
・孫策が泣いてるぞ
コソ泥ではなくて、英雄のほうの周瑜
以前、日本に興味のある中国人が集まるSNSのグループで、三国志について聞いてみたところ、こんなコメントがきた。
・三国志が好きで詳しい日本人も多いですが、中国人はあまりいない気がします😂
・そうです。受験勉強のプレッシャーで少なくとも10年間ずっと朝から晩まで教科書漬けで三国志は若者にとっては古文テストに出てくるものでしょ。
部活はほぼゼロでスポーツやる時間も勉強に当てられて、嫌になるのが仕方ない話かもしれません。
日本の高校生みたいな青春ていうやつを私が体験したことはないです😂
・劉邦と項羽ならみんな知っていますが、詳しくてもせいぜいテストの出題範囲に過ぎませんね。どんな偉業があったかと聞かれたらすぐに答えられません。
10年ほど前、中国旅行で出会った現地の大学生は、劉備・曹操・孫権といった有名な人物は前々から知っていて、マイナーな武将については日本のゲームで知ったと言っていた。
人口比でみれば、三国志にくわしい人は中国よりも日本のほうが多い気がする。
知人の中国人は日本に来てから、有料の「三国志検定」があることを知って、まったく意味が分からなくてビックリした。
*3級は4980円、2級は5980円、1級は6980円で併願受験なら10%割引。
一般人が三国志について問題集で学習し、お金を出してテストを受けるような「パッション」は中国には無いらしい。
ちなみに3級レベルの問題は、「周瑜の死後、孫権がその後継者として大都督に任命した人物はだれか?」というもの。
ハイ、まったく分かりません。
他にもセガが「三国志漢字検定」を提供している。
周瑜の後継者は分からないボクでも、中国の歴史的建造物でこの彫り物を見た時はピンときた。
橋の上に馬に乗った武将がいて、よく見ると、長いヒゲがあって手には蛇矛(だぼう)のような武器を持っている。
ということは、これは張飛で「長坂の戦い」か?
ガイドに聞いたら大正解。
主君の劉備玄徳を守るために張飛が橋の上に立って、「死にたい奴からかかって来い!」と叫んだ有名な場面だ。
中国人の日本語ガイドはこの戦いを知っていて、内容やその後の影響なんかをくわしく説明してくれた。
思わず「さすがですね~」とホメると、ガイドは「日本人に鍛えられたんです」と笑って今度は自分の過去を話し始める。
彼がガイドになったころ、困ったのは言葉や文化の違いよりも、中国史や三国志に対する日本人のお客さんの“熱”だった。
もともと中国の歴史や文化に興味があって中国旅行を選ぶ人も多かったから、三国志に関する質問をする人がよくいた。
日本人から受ける質問には「ああ、それはですネ」と余裕で答えられるものもあれば、「いや、アンタのほうがくわしいだろ」という彼の理解を超えた難問もあり。
そんなことでツアー客の中に歴史マニアの日本人がいると、軽い恐怖を感じることもあったが、中国人として答えられないのは恥だという思いもあって、彼は一念発起する。
三国志や中国史を勉強し直して、同時に日本人客とも渡り合って知識を獲得し、ガイドとしてレベルアップしていく。
そうすると、客から高く評価されて指名をもらうこともあったから、やる気はさらに燃え上がる。
だからいまでは、「長坂の戦い」を説明することなんてワケない。
これもすべては三国志・中国史好きの日本人に出会って、鍛えられた結果だということで、駆け出しだったころにヘコまされた日本人のお客さんには、今では感謝しているらしい。
でも、日本人の三国志熱はとどまることを知らない。
「三国志検定」の1級クラスの人が来たら、彼はまた凹まされるかも。
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