2018年の10月、徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じたことで、地獄のトビラが開かれた。
その後、韓国側はこの判決に基づいて日本へ賠償や謝罪を要求する。が、この問題は1965年の日韓請求権協定で、「個人補償を含め、完全かつ最終的に解決」しているとして日本はダンコ拒否。
以来、日韓で話し合うといつも立場の違いを確認し、お互い一歩も近づくことができないでいた。
永遠の平行線をたどるかと思われた「徴用」をめぐる問題で、ついに“山”が動くーー。
韓国政府が日本から賠償金をとるのではなく、韓国企業から集めた寄付金を原告側に渡すという解決案を発表して、事態が大きく変わる勢いが出てきた。
これは基本的には日本にも受け入れ可能で、現実的な案と評価する声が日本政府内にある。
日韓メディアも早速この動きを取り上げる。
毎日新聞 2023/1/13
徴用工、財団が賠償 韓国政府、肩代わり案表明
中央日報の記事(2023.01.13)
韓国野党代表、日本戦犯企業を肩代わりする強制徴用賠償に「第三者賄賂罪ではないのか」
では、ここで“間違い探し”をしてよう。
この産経新聞の記事(2023/01/16)の見出しと、上二つの記事との違いは一体ナニか?
徴用工巡り日韓局長協議、「肩代わり案」説明
肩代わり、という用語について産経新聞には「」があるけど、韓国紙の中央日報と毎日新聞にはない。
江戸時代の駕籠(かご)かきが担ぐのを交代することを意味する「肩代わり」は、いまでは他人の債務や責任を代わって引き受けることを指す。
となると、例えば借金を肩代わりした場合、払った人間は後から当事者にその金を請求することになる。
これを徴用工訴訟問題に当てはめると、韓国側が賠償金を「肩代わり」するというのは、日本に賠償の責任があることになってしまう。
これまでの交渉で、日本が絶対に認めてこなかったのがこの賠償責任だ。
肩代わり とだけ書くと、日本の責任を認めた韓国サイドの表現になってしまうから、産経新聞は「」を付けたのだろう。
だから、韓国メディアが「」や””を付けるとは思えん。
肩代わりという言葉と、セットになるのが「求償権」だ。
第三者が本人に代わって借金を返済した場合、後から第三者が本人に、返済したお金の返還を求めることができる権利を求償権という。
これはその場しのぎとして、第三者がとりあえずお金を出すだけで、責任はあくまでも本人にあるから、後で請求するのは当然のこと。
一般的には360度、どこから見ても正論。
でも徴用工訴訟問題では、日本は賠償責任を1ミリも認めていないから、この論理は当てはまらない。
まずは韓国の財団が支給して、後から”賠償金”の返還を日本企業に求めることは、日本としては絶対に認められないはず。
日韓の報道を見ると、韓国政府は「求償権」を当然のことと考えていて、日本政府は「債務なんてあり得ない」と拒否している。
だから日本としては、韓国側が原告にお金を渡すことは支給であっても「肩代わり」にはならない。
日本が支払うこと前提なら肩代わりで、この問題解決は韓国の責任であることを示唆するなら、「肩代わり」や”肩代わり”になる。
この小さな違いはけっこうデカい。
結局のところ、問題解決へ大きく動き出したかと思ったら、早くも形を変えて”第2ラウンド”が始まっているらしい。
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