第一次世界大戦でフランスがドイツ軍に対して、ここだけは絶対に守らないといけない、もし突破されたら国家存亡の危機に直面するという防衛線を「マジノ線」と呼んだ。
この対ドイツ要塞線の名称は、当時のフランス陸軍大臣アンドレ・マジノに由来する。
時代を超えていまの韓国で「マジノ線」は、最低ラインや最低条件を意味する一般的な言葉になっているから、こんなふうに韓国紙でたまに見かける。
中央日報(2022.07.15)
強制徴用被害者側「日本企業の謝罪と基金参加がマジノ線」
マジノ線にいる連合軍兵士(1944年)
2018年に韓国最高裁が元徴用工裁判で、日本企業に賠償を命じたことから日韓の「負けられない戦い」が始まった。
この問題は1965年の請求権協定で「完全かつ最終的に解決」されたこと、そしてどんな主張もすることはできないと日韓両政府が確認したはずで、お互いがこれを守って日韓関係は発展してきた。
(大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について)
だから日本としては、それを根底からひっくり返すこの判決を認めるワケにはいかぬ。
かといって自国の司法判決を否定するワケにもいかず、文前政権の立場は「日本企業の謝罪と基金参加がマジノ線」とほぼ同じで、日本の是正要求を無視してきた。
こうしてにらみ合いになって、両国関係は「戦後最悪」と言われるほど悪化していく。
それがいまの尹(ユン)政権になると、元徴用工問題が急に解決に向かって動き出す。
それは、韓国側が思い切った決断をしたから。
外務省幹部は「話がまとまったのは、謝罪に言及しなかったからだ。日本は謝罪と被告企業がお金を出すこと以外はやりたい」と強調する。
改善加速へ歩み寄る日韓 岸田首相、ギリギリの徴用工「痛む」発言
日本が韓国に謝罪したり、裁判で訴えられた企業がお金を出すことは、日韓の合意や国際法に違反する最高裁の判決を認めたことになるから、それだけはできない。
これが日本の引いた絶対防衛ライン、韓国風に言うと「マジノ線」だ。
ことし3月に韓国政府が発表した解決策は日本に謝罪を求めないもので、この条件に合う内容だったから、日本もすぐに「誠意ある呼応」をする。
3月にユン大統領が来日して首脳会談を行うと、そのリターンとして、ことしの夏ごろ岸田首相が韓国を訪問するとみられていたのに、それを一気に早めて5月7日に首相がソウルに降り立つ。
そして、韓国に対する「痛切な反省と心からのおわび」を表明した1998年の日韓共同宣言にふれ、歴史認識についてはこれまの内閣の立場を引き継ぐと明言した。
それだけでなく、岸田首相は個人としての立場から、元徴用工の人たちを念頭に「悲しい思いをされたことに心が痛む思い」と言って韓国側を驚かせる。
中央日報(2023.05.09)
岸田文雄首相の7日の歴史認識発言は現場の大統領室参謀も全く予想できない中で出てきた。
岸田首相の「心痛む」発言、参謀と相談しない単独判断だった
この発言は日本にとっても予想外で、「(そのとき現場にいた)日本の官僚も非常に驚いた表情」だったという。
国内で叩かれること覚悟に、日本へ謝罪を要求しなかったユン大統領の決断に、岸田首相も可能な限り応えたいと思ったはずだ。
日本には、国として謝罪することはできないという最低ラインがあるから、「個人として」と条件を付けたことで、そのライン上のギリギリのところまで韓国側に譲った。
だから産経新聞には不満らしい。(2023/5/8)
これも謝罪表明ではないのか。首脳会談のたびに日本側が謝罪を繰り返すのは疑問だ。尹氏は歴史よりも安保の問題を優先する姿勢を示すが、十分な実は伴っていない。
日韓首脳会談 安保協力強化は妥当だが
ネットの反応を見ても、
「バイバイ自民」
「余計な事を」
「誰か黙らせろや」
「ダメだこりゃ」
といったコメントはまだソフトなほうで、ここじゃ紹介できないようなムゴイ侮辱表現も多々ある。
日韓のトップが批判を覚悟して「関係を強化し、新しい時代切り開きたい」という新しいマジノ線を引いたのから、これは何があっても譲らないでほしい。
暴かれる韓国の「慰安婦ビジネス」、正義連の“正義”に批判集中
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