元徴用工訴訟:感情論より「法と原則」のユン政権に、期待大

 

韓国では良くも悪くも、労働者の権利が重視されていて、強硬なストライキが名物というか社会問題になっている。
「給料をもっと上げやがれー」とか労働条件の改善を叫んで、その要求が受け入れられないとストに突入し、工場や物流が止まって市民や政府を困らせる。
でも去年、韓国では最大規模の労働組合で戦闘的なやり方で知られる、民労総(全国民主労働組合総連盟)が大規模なストライキをすると宣言を出したが、結局はそれを止めた。韓国でこんなことは激レア。
それまで通用した手段が、今回はダメだったことの原因について、全国紙の朝鮮日報のコラムにこんな分析がある。(2022/12/19)

事実上「白旗を掲げて投降」してきたのだ。ひとまず、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の掲げた「法と原則」が通った。

「従北・暴力的」労働運動の終末

 

全国民主労働組合総連盟というリッパな名称を持っているのだが、この団体のしてきたことはその正反対。
話し合いでの解決を拒否して、物を壊したり人に暴力をふるったりして、「何かにつけて法より拳を優先する組織」だとコラムが猛批判。
このやりたい放題の根源にあるのは、何としても自分の要求を通す。絶対にだ! という一方的で自分勝手な感情論だ。
でも、いまの大統領はそれが通じる相手じゃない。
ストの予告に対してユン氏は職場復帰命令を出し、これを無視した場合、その労働者は収入と職を失うリスクが高まった。
それで多くの人が大統領の言うことにしたがい、「白旗を掲げて投降」することとなる。
ユン大統領はソウル大学の法学科出身で、ソウル中央地方検察庁検事長を務めた人だから、「法と原則」を曲げず、強硬姿勢を貫いたのだと思われる。

ブン前大統領はこの反対側にいた。
「日本には二度と負けない!」と国民の”反日感情”をあおって、この政権期に慰安婦・元徴用工問題での日韓合意が破られて日韓関係は”戦後最悪”というほど悪化した。
その状態を丸投げされたユン政権は、いま両国関係の立て直しに奮闘中。
いますぐにクリアしないといけないのは、2018年に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟だ。
だがしかし、この問題はすでに1965年の日韓請求権協定で解決済みだから、日本としてはまたお金を出したり、謝罪することはできない。
ということで韓国政府は、とりあえず韓国側でお金を集めて原告側に渡して、日本企業の肩代わりをする案を固めつつある。
この問題を韓国側で処理するのなら、日本は基本的にOKで、日韓関係の崩壊なんてダレも望んでいないから、この解決案なら日本に受け入れられるだろう。
法を重視したこの判断は、きっとユン政権でしかできなかった。
でも(だからこそ)、原告側はすでに沸騰している。

読売新聞の記事(2022年12月27日)

元徴用工訴訟で原告側「議論する価値すらない」…日本企業の「賠償」肩代わり案に反発

こうやって感情論で対話を拒否する姿勢は、上の労働組合と変わらない。
ユン大統領はここでも「法と原則」をぜひ貫いてほしい。
ただ今度の相手は強大だから、最終的に「白旗を掲げて投降」するのはダレなのか、いまはまったく分からない。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

暴かれる韓国の「慰安婦ビジネス」、正義連の“正義”に批判集中

 

6 件のコメント

  • 解決済みなのだから、この解決案も日本が受け入れることはないと思います。
    韓国国内のことは知ったことではないと言うだけでしょう。
    日韓関係が悪化するのを抑えられるかもしれないが、改善はしないでしょう。
    根本的な解決ではないのだから。
    韓国は時間が経てば有耶無耶になるのを願っているとしか思えません。

  • 関係改善の重要性は岸田首相は何度も言っているので、いまの状態を変えようとは思っているハズです。
    韓国もまだ最終案を発表していないですし、予定は未定です。
    今月中にその発表があるという話もあるので、ようすを見てみましょう。

  • “匿名”さんのコメントに共感します。
    尹大統領の計画は根本的ではなく、結局、曖昧に日本との関係改善を目指しています。
    岸田総理が優しいキャラクターなので、韓国の案を受け入れる可能性もありますが、私はこうした解決に同意できません。日本がより明確なシグナルを送る必要があります。

  • ユン大統領はとりあえず現金化を防ぐことだけを考えているのでしょう。
    「肩代わり」をしても、後で日本からお金を出させようとしてもめる気はします。
    でも、今月中に韓国政府から解決案の発表があると思うので、いまはその結果を待つしかないです。

  • 「法と原則」の尹政権(笑)。韓国国内の陣営争いの一環でしょ?
    そもそも左派の手先として、朴槿恵弾劾の先鋒を勤めた人物でっせ。
    大統領選前後の発言を見ても、対北朝鮮以外は文政権と大差ないスタンス。
    現金化に触れているのは、それだけ韓国経済が悪化していて日米の経済支援が必須だから。左右問わず歴代政権同様、喉元が過ぎたら手のひら返すよ。

  • 「法と原則」の尹政権でなければ、今回も労働組合のやりたい放題ができたでしょうね。
    韓国を客観的に見ることも必要です。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。