日本に3年ほど住んでいて、ちょうど去年のこの時期に、(泣く泣く)母国へ戻ったインド人の知り合いがいる。
そんな彼が今回出張で、1年ぶりに日本へ舞い戻ってきたということを、到着した後に知った。
というのは、「出張で来月、日本へ行くことが決まったんだ。だから、またご飯でも食べにいこう」といった事前の連絡が一切なかったから。
「やあ、久しぶりだね。元気かい? いまボクは浜松にいるんだ。だから今週末に会って話をしよう」というメールが突然きていろいろビックリ。
こういう急展開&超マイペースがインド人にはよくある。
とにかく、彼とカレー屋に行っていろいろ話をしたから、今回はその内容をシェアしようと思う。
ーー1年前にインドへ戻ってから、日本について恋しく思ったことはありますか?
それは何と言っても、「きれいな空気」だね!
私はニューデリーに住んでいたから、大気汚染のひどさは昔からよく知っていた。
でも、久しぶりに日本から帰ってきて、忘れていたムゴサを思い出した。否応なく、無理やりね。
だから外出する際には、汚い空気を思い浮かべてしまい、「やっぱりやめようかな?」と思ったこともあるんだ。
それが成田空港を降りて、青空を見てキレイな空気を吸うと、「日本に戻ってきな」って嬉しく感じたね。
ーーなるほど。
汚い空気を毎日吸い込むというのはかなりウツですね。
あなたの妻の方はどうです?
私はベジタリアンだから、もともと日本の食べ物はあまり食べなかったんだ。
でも、妻は鶏肉が好きだから、彼女はキレイな空気の他に唐揚げを懐かしく思っているよ。
それと自転車に乗って、1人で自由に出かけることかな。
インドでは女性が1人で遠くまで行くのは危険だからね。
ーーそうですね。
特に夜にそんなことをしたら、自転車にまたがる後ろ姿が最後の姿になりかねませんね。
それと、こういうのを見ると「日本だな」って思うよ。
浜松市のマスコット「家康くん」もそうだけど、日本では街中でよくかわいいキャラクターを見る。
幼稚園や小学校ならわかるけどさ、日本人が大人でもこういう絵を見て喜ぶというのは意外だったよ。
ーーいや、さすがに喜ぶ度合いは、幼稚園児と同じじゃないですけどね。
嬉しいというよりも、気にしないだけの大人が多いと思いますよ。
確かに見方は人それぞれとしても、広い合意があるからこそ、駅前に「家康くん」の像があったり、こんなタクシーが走っていたりするんじゃないか。
インドだったらこうはいかないよ。
デリーの大気汚染っぷり
ーーところで、京都が日本の首都に選ばれた理由には、東西南北の方向に青龍・白虎・朱雀・玄武の神がいて、その四神に守られている縁起の良い場所だったから、という説があるんです。(四神相応)
デリーはどうやって首都になったんです?
知らないよそんなこと。
デリーはずっと前からインドの首都だったんだ。
1000年ぐらい前から、現在のデリーのあたりに首都があったという話は聞いたことがあるけど、正確なことはわからない。
ただ、今のデリーを代表する建築物のラール・キラー(デリー城)やジャーマー・マスジド(イスラム礼拝所)はムガール帝国の時代に建てられたから、ここ500年でデリーっが本格的な首都になったんだろうね。
(デリーの歴史)
ところで、『マハーバーラタ』っていうヒンドゥー教の神話を知ってる?
この物語に出てくる国の首都がデリーの周辺にあったから、それを起源としたら数千年前からデリーは首都だったよ。(ハスティナープル)
この神話に登場する重要な都市だから、「四神」みたいに宗教的な要素もあるかな。
ーー「四神相応」の風水の考え方はですから、インドに同じものはなかったでしょうね。
では、日本人のイヤなところって何かありますか?
細かいルールや手続きをとても重視して、それをしっかり守ることだね。
私にとっては、日本人の”普通”が”やり過ぎ”に見えて、「そこまでする必要があるの?」ってよく思う。
インドの会社だと、社員にゴールを示して仕事をまかせる。目標達成の方法はその人にゆだねられるから、各自で考えて自分に合ったやり方を採用すればいい。
要するに、目標へ到達すればいいんだよ。
でも、日本企業の場合、方法や注意点なんかを話し合ってから社員へ下ろすから、どうしても時間がかかってしまう。
それに、その人に与えられた権限は小さいから、あまり自由に動くことができない。
その代わり、失敗のリスクは低くなるし、失敗は全体の責任になるから一人で抱え込まなくていい。
インドの場合はその逆で、スピードは速いけどリスクは高くなる。
それぞれのやり方に長所と短所があるから、どの方法を採用するかは文化によって違う。
私が働いていた日本企業ではそう思ったよ。
ーーなるほど。
では、タダですから思う存分おいしい空気を吸って、胃を浄化してインドへ戻ってください。
ダンニャワード(ありがとう)。
コーイ バート ナヒーン(どういたしまして)。
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