ネット上には、日韓の文化に興味のある日本人と韓国人が集まって、楽しく交流するほのぼのグループがいくつもある。
最近、そんなグループの1つで、日本人メンバーがいつものようにスポーツジムへ行って掲示板を見たら、心が温かくなったという投稿があった。
近所の中学生がそのジムで『職場体験学習』を行い、その後でお礼の手紙を書いて、それが掲示板に貼られていた。
「先日の職場体験では、大変お世話になりました。
仕事の大変さやお客さんとのコミュニケーションを学ぶことができました。
貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。」
手紙の内容はだいたいこんな感じ。
それを読んだ日本人が感動して、韓国の学校でも同じ活動があるか聞いてみた。
すると、こんな日本の学校教育の取り組みを知って、韓国人メンバーからは拍手が送られた。
・わがしが中学生のころ、もう30年前の韓国ですが、職場体験というのはありませんでした。素晴らしい活動だと思います。
・わたしも小学校から高校まで、こんな活動はありませんでした。
韓国の教育では大学受験がとても重視されるから、こういう取り組みはないでしょう。
個人的に、そういう教育システムを残念に思っています。
韓国の学校の勉強は、少なくとも自分が経験したのはほとんどただの暗記で、「暗記王」になって大学に入ることが目的でした。
スーパーや工場で職場体験をして、従業員に感謝の手紙を書く日本の教育は素晴らしいと思います。
・そうそう。
韓国では受験勉強が中心だから、このような活動はしていないと思います。
・いえ、最近は韓国にもありますよ。
ただ、生徒が会社に行って、仕事について説明を聞いて終わりです。日本みたいに、学校と企業が話し合い、しっかりとした体験プログラムを作ることはありません。
・手紙を書いて、感謝の気持ち伝えることは素晴らしい教育と思います。
韓国の生徒には日本の良いところを見習ってほしいです。
韓国の人たちの反応を見ると、日本に比べて、韓国の学校教育では受験がより重視されていて、職場体験はないか、あっても簡単に済ませるようだ。
その一方で、韓国の学校の子どもたちは、日本人の価値観からするとあり得ないような手紙を書く。
浜松の航空自衛隊によるショー
空に巨大なハートを描いて、戦闘機がその中を通り過ぎる。
先日、韓国でこんなことがあった。
朝鮮日報の記事(2023/10/30)
BTSの日本ファンクラブ「韓国軍兵士に感謝」 国防日報1面に広告
韓国には徴兵制度があって、人気アイドルグループBTS(防弾少年団)のメンバーがいま軍隊に入っている。
それで、日本のファンクラブが韓国国防部が発行する新聞「国防日報」に、こんな広告を掲載し、韓国の全国紙が取り上げた。
「韓半島(朝鮮半島)の平和と安定に寄与する韓国軍兵士の皆様の献身に敬意と感謝の意を表します」
「韓国軍兵士の献身に感謝するという内容」と、朝鮮日報も好意的に見ている。
BTSのファンクラブは今年6月にも、国防日報にこんなメッセージを載せたという。
「大韓民国 誇らしい韓国軍兵士の皆様の献身と尽力に感謝します。 兵士の皆様を応援します」
日韓の価値観で、大きな違いがこうした軍や軍人に対する見方だ。
韓国では、軍人に対する評価や感謝の気持ちが高く、社会全体で応援する雰囲気がある。
そんなことで軍人には、ロッテワールドやエバーランドといったテーマパークのチケットが半額やや無料になったり、映画を安く見ることができる。
一緒に行った人にもこの特典が適用されるから、一時的に実家に戻った軍人が恋人を連れて、「軍人割」を使ってデートをすることもある。
韓国社会では一般的に、軍人へ感謝の気持ちを伝えることは素晴らしいこととされている。
知人の韓国人は小学生か中学生のころ、授業でそんな「慰問手紙」を書いて軍へ送ったと言っていた。
そんな韓国の常識が日本では通じない。
その知人は東京に住んでいたことがあって、日本人にこの話をすると、「マジで! 軍国主義みたい…」とみんなに驚かれ、引かれたと面白そうに話していた。
そりゃそうだ。
日本の学校で教師が子どもたちに、「自衛隊員の皆様の献身に敬意と感謝の意を表します。応援しています」という手紙を書かせたら、「戦時中かよ!」と大騒ぎになって、朝鮮日報とは別の意味で全国ニュースになってしまう。
授業で、「航空自衛隊のみなさん、昨日の航空ショーは楽しかったです。ありがとうございました」と書いて自衛隊送れば、もはや校長の謝罪会見は避けられない。
日本と韓国では、「軍事」や「国防」に対する見方がまったく違う。
もちろん、どっちの社会でも平和が最も重視されているけれど、価値観が根本的に違うから、その方法については、徴兵制度と憲法9条という埋められない差がある。
日本だったら非難されるようなことが、韓国では立派な行為と認められているから、子どもたちは学校の授業で兵士たちに感謝の手紙を書く。
世界的には韓国の認識が常識的だ。
軍事境界線で北朝鮮と対峙する韓国軍の兵士
でも、2022年にこんな出来事があった。
スポーツソウルの記事(2022年03月13日)
「女子高生の軍慰問手紙を禁止に」国民請願に韓国大統領府が回答、発端は“軍人嘲弄”
ある女子高生が慰問手紙で、
「これからの人生には試練が多いのだから、これくらい勝てなければ男ではないですよね」
「寒いから雪が降ったら一生懸命片付けてください」
といった内容の文を書いたことが分かった。
すると韓国では「軍人をバカにするな!」という怒りの声と、「生徒に強制的に手紙を書かせることがいけない」という批判の声がぶつかり合って、賛否両論、喧々諤々の議論が巻き起こる。
しまいには、「女子高校生に軍慰問手紙を書かせることを禁止してほしい」という国民請願が行われ、大統領府が「学校教育活動が、社会変化とそれに伴う認識変化を積極的に反映するよう努力する」と正式に回答する事態にまで発展した。
日本の学校なら、生徒が書いた手紙を教師が必ずチェックする。
それをしない大ざっぱなところも韓国らしい。
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