「U.K」誕生の歴史 イギリス人が“イギリス”に驚いたわけ

 

友人のイギリス人に言わせると、日本語を学んでいるとビックリすることがたくさんある。そのうちの一つは、日本では自分たちの国が「イギリス」と呼ばれていること。彼女はそれを知って、「イギリスって何? どうしてそんな国名になったのよ?」と不思議に思ったという。

イギリスは英語で「the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」と言って、日本語にすると「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」になる。
これは正式名称だから、普通の会話でもそう言わないといけないことはなく、外国人は略して「(the)U.K」と言うことが多い。
友人は「ユーケー」で生まれ育ったから、日本語で「イギリス」と呼ばれる理由がさっぱりわからなかった。
この「イギリス」という言葉はイングランドを指すポルトガル語「Inglez(イングレス)」に由来し、江戸時代に使われ始めたらしい。この呼び方は日本オリジナルだから、外国人にもイギリス人にも理解されない。
そういえばタイで出会った日本人は、外国人と英語で話をしていて「“イギリス人”って英語で何て言うんだろう?」と疑問に思ったと話していた。

 

イギリスには国王がいて、グレートブリテン島にあるイングランド、スコットランド、ウェールズと北アイルランドの4つの国から成り立っている。そんな連合王国には、日本にはない複雑さがある。
たとえば、サッカーワールドカップでは、それぞれが独立してチームを作って参加する。つまり、日本代表みたいな「イギリス代表」なんて存在しない。
でも、オリンピックでは事情が変わり、男子サッカーはグレートブリテン代表(チームGB)として4つが一つのチームになって参加することになっている。
国内に4つの国があると、いろいろとややこしい。

 

次に、イギリスが成立した歴史を見てみよう。
まず、1536年にイングランドがウェールズを併合し、1707年のきょう1月16日にスコットランド議会で「合同法」が可決され、同じ年の5月にイングランドとスコットランド合併してグレートブリテン王国が誕生した。
しかし、イングランド法とスコットランド法は別々に存在していたから、完全に一体化したわけではない。
その後、1801年にグレートブリテン王国がアイルランド王国を併合し、1937年にはアイルランド南部が「アイルランド」として独立し、北部はグレートブリテン王国に残った。こうして現在の「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」が完成した。

 

イギリスの国旗には、それぞれの国を併合していった歴史が込められている。

 

イギリスの歴史を簡単に見ると、イングランドが中心となり、時間をかけて周辺国を吸収していったことがわかる。
もともとは別の国だったから、現在でも、住民は愛着心を超えた“愛国心”を持っている。
“飲み込まれた側”のスコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは、イングランドに対してはライバル心や反感を持つ人が少なくない。スコットランドでは、イングランドに敵対心や憎悪の感情を持つ人もいる。特にサッカーの試合で、そんな気持ちが爆発することがある。
だから、イングランド以外の3つを国ではなく、“地域”という前提でイングランド人以外と話をすると、相手を怒らせる確率が高くなる。
日本の外へ出れば、イギリスという国は言葉の上でも、現実的にも“存在しない”と考えていいと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。