“盗難”アジア ベトナム&ミャンマー人が日本で感心したこと

タイの日本大使館のホームページを見ると、2023年に「旅券の紛失・盗難に関する相談が急増しております」という注意喚起がある。
電車で移動中、イベントに参加中、買い物をしているときなど、いろんな場面で日本人が財布や貴重品を盗られ、大使館に駆け込むケースが多発していたらしい。
タイで日本人が「歩くカモネギ」になっている状態はきっと今も変わっていない。
大切なものを「第三者に取り出されやすいポケットなどに無造作に入れることなく」や、人が多く集まる場所では「バッグを体の前に持つように」という大使館の注意は、“盗難”アジアでは常識だ。

さて、昨年12月の気持ちよく晴れた日に、外国人と富士山が見える山にハイキングに行った。今回は、その中にいたミャンマー人とベトナム人が日本で感じたことを書いていこう。

 

 

ハイキングコースには、ミカンをはじめとする柑橘類の木が延々とあった。それを眺めながら、外国人と歩きながら、こんな会話をした。

ミャンマー人「日本に住んでいて、よく感心するのは盗難がとても少ないことです。ここでも、手を伸ばせば届く距離にみかんがあるのに、伸ばそうとしません。」

ーーそれはどうかな? さっき「みかんを盗るな!」って看板もあったから、「日本人=パーフェクトヒューマン」というわけでもないけどね。

ミャンマー人「すべての国民が善人だなんて国はありませんよ。ミカン畑がこんなに開放的になっているのは、被害があるとしても、日本人のモラルが高い証拠ですよ。ミャンマーだったら、この状態は危険すぎます。」

ベトナム人「ベトナムも同じです。美味しそうなミカンがこんなに無防備であったら、すぐに全部盗まれてしまいますよ。」

 

外国人と一緒にいると、無人販売所を見て同じように「さすが日本!」と感心する人がよくいる。
日本語の「無人販売所」は、ただ人がいない状態を表す無機質な言葉でけど、英語では「honesty box」や「honor system」と言う。店員が目を見張らせていなくても、客が正直にお金を払う。英語圏で無人販売所は、そんな誠実さや信頼を前提にした“名誉あるシステム”になるらしい。
あるベルギー人は日本の無人販売所を知ってこう言った。

「If you try this in Belgium ,they will steal everything and destroy everything.」
(ベルギーでこんなことをしたら、すべて盗まれ、すべて破壊される。)

「日本、いい場所だね」 海外に無人販売所は無い?

 

 

昨年末、ベトナムから「悲報」が届いた。
首都ハノイでラーメン屋をオープンした日本人が、SNSでこんな報告をして、日本で話題になり、たくさんの同情が集まった。

「朝来たら、オープン祝いの花、全部盗まれてた 本当、泥棒が多い国だな」

日本では店を開く時、お祝いの花輪を飾る習慣がある。この日本人もそんな常識をベトナムに持ち込んで、オープンの前日に店先にたくさんの大きな「祝い花」を飾っておいた。
やる気と期待に満ちていたオーナーは、開店日の朝、祝いの花がスタンドごとすべて根こそぎ無くなっていたのを見つけて、全身のエネルギーも無くなったと思う。

愛知県では「めでたいことのお裾分け」として、祝い花を取って持ち帰る文化がある。花が無くなると店が繁栄するということになるから、オーナーとしても嬉しい。でも、今回のケースはそんな「ウィンウィン」ではなく、転売を目的に花が盗まれたらしい。
アウェーの洗礼を浴びた日本人は、ベトナムで花を無人の状態で外に置いたことがいけないと、自分を責めた。
それにしても、人生の新しい章が「盗難」で始まったというのは縁起が悪すぎる。
ベトナムでこんなことはめずらしくない。日本人が経営するすし店でも、店の外に飾られていたクリスマスの電光装飾が盗まれ、10万円相当の被害が出た。

 

 

2人はこの話についてどう思うのか?
警察に行ってもムダで、むしろ「おまえが悪い!」と怒られる。
ベトナム人は「それは不注意でしたね。お金になるものを外に置いておいたら、ベトナムでは“秒”でなくなります」とタンタンと言い、ミャンマー人は「ミャンマーでもそうなると思います。家の花壇にきれいな花があると、それを盗って、自分の家に飾ったり髪飾りにしたりする人もいますから」と言う。
警察に行ってもムダで、「それは運が悪かった」と言われて終わり。
(日本でもこの程度で捜査をするとは思えないが。)

2人の意見では、日本とは盗みの感覚が違って、「かわいそうな被害者」と見なされないことが多い。母国は自己責任が重視される社会だから、盗難の被害にあっても、周囲の人は同情するよりも、その人の「油断」を責めることが多い。
自業自得の考え方が強いのは、きっと仏教の影響がある。
タイの日本大使館は公式に「紛失・盗難に関する相談が急増しております」という注意を出す一方で、職員のあいだでは「タイでそれはありえねー。日本人は油断しすぎ」と言われている予感。
日本人が東南アジアに行ったら、そこは“盗難アジア”であることを忘れてはいけない。

 

おまけ

人が集まって店の花を奪い取り、外部の人間がそれを見て「ここは世紀末世界かよ…」とドン引きするのは、『愛知あるある』と思っていたけど、それはもう過去の話だった。
東海テレビにこんな放送がある。(2021/01/02)

初めて見た他県出身者「盗んでる…」 愛知の伝統文化『開店の祝い花持ち帰り』は絶滅したのか

祝い花を取ることについて、今では「恥ずかしい」や「あつかましい」と感じる愛知県民が多く、この伝統文化は絶滅寸前だった。

 

 

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