日米のディズニーリゾート　共通点・列に並ぶ米国人・日本人の欠点

フロリダから、とってもフロリダらしい光景が届いた。
一匹のワニがカメを口にはさんだまま、ゆっくりと道路を横断して車の交通をストップさせた。その動画がSNSで話題になって、あるアメリカ人は「フレンドリーなワニだね！　カメが道路を渡るのを手伝ってあげるなんて」とコメントしてたけど、このワニはあとでカメをゆっくり味わうつもりでは？　でも、その場で食べない理由もよくわからない。
とにかく、「お魚くわえたドラ猫」を主婦が追いかける日本とは、異世界の光景がフロリダにはある。

 

 

知人のアメリカ人女性は日本で英語を教えていて、数年前に帰国した。そんな彼女が夫とフロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートへ行ったというので、その体験談を聞いてみた。今回はそのラウンド２。

日米のディズニーリゾートの違い・日本版ライトセーバー

＊以下、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを「ディズニーワールド」と表記する。

まず前提として、ディズニーワールドは途方もなく大きいことを頭に入れておこう。
面積は東京ディズニーランドの約240倍で、その中にハリウッド・スタジオやマジック・キングダムなど４つのテーマパークを中心に、２つのウォーターパーク、６つのゴルフコース、34棟のショッピングモールなどがある。

 

ーー東京ディズニーランドと比べると、ディズニーワールドは何もかもスケールがケタ違いに大きいということだったけど、東京ディズニーと似ている部分はあった？

もちろん、ディズニーワールドにもたくさんのゴミ箱があって、きれいではTDLと変わらなかった。私たちが行った日はコロナ禍のときで、客が少なかったというのもあるけど、アメリカであのきれいは感動的。でも、トイレはやっぱりTDLにはかなわない。

＊TDLにもディズニーワールドも30歩ごとに、ごみ箱が１つ設置されているらしい。ゲストがゴミを持ち歩くにはこれが限界の距離ということで。

 

日本館にある厳島神社の鳥居（エプコット）

 

ーーチケット料金はどんな感じ？　きっとお高いんでしょ？

「こんなもんじゃない？」ってぐらいの価格。料金システムは複雑で、チケットの種類はたくさんあるから自分で調べて。
「１デーチケット」が一番安いけど、コスパ的には最悪ね。何日もかけて複数のパークを回るチケットなら、１日あたりの料金が安くなる。
ホテルはテーマパークへのアクセスが簡単なところは高くて、離れたところにあって移動に時間がかかるホテルは安い。

ーー世界中のテーマパークがそうなってると思う。でも、支払う金額で、得られる楽しみや快適さが露骨に違うのはアメリカっぽい気がするな。“夢と魔法の王国”が現金に支配されているという現実はちょっと興ざめだ。

アメリカ社会は貧富の格差が大きいから、選択肢は多いほうがいいんじゃないかな。

＊４つのパークのうち、１つを１日利用できる１デーチケットが最も安い。
ほかにも、４つのパークを利用できるパークホッパー、それに加えてウォーターパークやスポーツ施設を利用できるチケットなどがある。世帯収入によって、味わえる楽しみがはっきり分かれているのはアメリカ社会の一面を表している？
料金はシーズンによって違うだろうけど、いまネットを見ると、大人の１デーチケットで約１万８千円だから、東京ディズニーランドの約２倍といったところ。

 

　ーーどのテーマパークがよかった？

わたしたちの推しはエプコット。

ーーやっぱりね〜。で、エプコットってなに？

Experimental Prototype Community of Tomorrow（実験的未来都市）のことじゃ。
エプコットでは人類の進化を知ったり、近未来世界を体験したり、いろんな国の伝統文化にふれたりすることができる。

ーーほかのテーマパークとキャラがかぶらないように、ファンタジー感は無しで、知的好奇心を満たす空間で、万博みたいだね。

＊エプコットにはアメリカ館をはじめ、メキシコ館、モロッコ館、ドイツ館、中国館、日本館など世界11カ国のパビリオンがあって、各国の文化を知ったり、料理を味わったりできる。
中国とは別で、日本が選ばれているのがうれしい。ただ、こうなると韓国館が独自に建てられるのは絶望的。また、宇宙ステーションの大きな窓から、青い地球を眺めながら食事を楽しむという独創的なレストランもある。
ちなみに、トップ画像はエプコットのもの。

 

日本館にある五重塔（エプコット）

 

ーーでも、人がたくさんいて、人気のジェットコースターとかだとすごく並ぶんじゃないの？

ジェットコースターって久しぶりに聞いた。それは和製英語で、英語なら「ローラーコースター（roller coaster）」ね。

ーーそうだった…。遊園地の「アトラクション」も日本語で、英語だと「ライド（ride、rides）」になるんだった。何が和製英語が分からなくて困る。

私たちが行ったのはコロナ禍で、しかも夏休みが終わった後だったから、ある意味ベストタイミング。人はかなり少なかったから、大抵は10分並べば乗れた。大人気のアバターのアトラクションは別格で30分かかった。でも、ふつうなら３〜４時間は並ぶと聞いたから、ラッキーだった。

ーーへ〜、アメリカ人でも数時間も並ぶことがあるんだ。
経験上、日本にいるアメリカ人に聞くと、みんな待つことを嫌がる。たとえば、30分待っておいしい食事を食べるのはノーサンキューで、味のレベルが落ちても、10分待ちで食べられるレストランに行きたがる。

ほかに選択肢があったら待たない方を選ぶけど、そうするしかなかったら、状況を受け入れて並んで待つ人が多い。
それに、ディズニーワールドについては、並ぶ場所でも楽しめるように工夫されていた。スター・ウォーズをテーマにした乗り物に乗るのなら、その途中でスター・ウォーズに関連したものがあって、待ち時間もけっこう楽しめる。

ーーなるほど。アメリカのエンタメは、「おもしろき こともなき世を おもしろく」という高杉晋作の精神に通じるのか。

いや誰だよ、それ。

 

ーー日本のテーマパークで並ぶ時間が長くなるのは、日本人ならではの事情があるのを知ってる？
10年ぐらい前に、アメリカ人、イギリス人、インドネシア人と富士急ハイランドへ行ったとき、こんなことがあった。ジェット、いやローラーコースターで１時間以上並んで、自分たちの番が近づいてくると、外国人が不思議そうな顔をしてこんな質問をする。

「なんで空席がいくつもあるまま出発するんだ？」

日本人は隣に知らない人がいるとイヤだから、と言ったら、国籍や宗教の違いを超えて「そんなことで待つ時間が伸びるとか、まったく理解できない。夏になると熱中症で倒れる人がいるんだろ？」と十字砲火を浴びてしまった。

なにそのムダ…。そんなくだらない理由で待ち時間が伸びるとしたら、私も腹が立つ。 アメリカ人は外国人からよく「エラそう」と非難される。でも、アメリカで「隣に人を乗せないでほしい」なんてわがままは認められない。

ーーですよねー。これについては、ボクもおかしいと思う。

ディズニーワールドには「シングルライダーライン」ってのがあって、一人で乗る人はそこに並んでいた。

＊ネットを見ると、2025年の今でも遊園地の「空席問題」は発生しているらしい。
ただ、東京ディズニーランドはすでに「シングルライダーライン」のシステムを導入している。シングルライダーなら、通常90分待ちのところ、10分で乗れることもあるという。それだけ、利用者が少ないということかもしれない。

 

 

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