日本人との価値観の違い 効率的でも合理的ではない中国人

現代の日本人は漢字を使ったり、月見をしたりするなど、伝統文化において中国と共通点が多い。しかし、価値観は大きく異なっている。これからそのひとつを紹介しよう。

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中国人が感じた日本との違い

日本に3年ほど住んでいて、今は母国にいる中国人と話をしたとき、日本との違いが話題になり、彼は「現金を使わなくなりましたね」と言った。中国ではスマホがあれば、買い物も移動もできるから、日本と比べて現金を使う機会が圧倒的に少ないらしい。
彼に言わせると、日中の社会の違いは「効率性」や「合理性」をどれだけ重視するかにある。中国人は利益を最優先に考えて無駄を徹底的に省くため、社会が変化するスピードが速い。いっぽう、日本人は自分が得られる利益に関心が薄く、保守的な性格をしているから、変化を受け入れるのに時間がかかる。
しかし、合理性や効率性には「無駄をはぶき、目標への最短距離を選択する」という点では同じでも、違いがある。価値観が変わると、効率的ではあっても合理的に見えないこともあるのだ。

効率性を求める中国人

15年ほど前に中国を旅行し、上海で日本語ガイドの女性のお世話になった。彼女との出会いは「中国的」で、日本では考えられないようなものだった。

まず、ボクが事前にネットを使って、上海でガイドサービスを提供している旅行会社を見つけ、メールで連絡をすると返事が来ないことがあったから、電話で問い合わせた。すると担当者が出て、「経験豊富な日本語ガイドがいます。これが彼女の電話番号なので、連絡してください」と言う。
そのガイドは旅行会社の社員ではなく、フリーランスで会社と契約しているのだろうか? 違和感を感じつつ電話をかけると、その女性は「なんでこの番号を知っているのですか?」と戸惑っていた。会社からおしえてもらったと伝えると、「そうですか」と納得し、こちらの希望する日時を伝えた。

上記のやり取りに不自然さを感じたので、上海でそのガイドと会ったときに聞いてみた。
まず、彼女はフリーランスではなく、あの旅行会社で働く社員で、会社が伝えたのは彼女の個人的な電話番号だった。
ボクが電話をしたときは休日で、彼女はデパートで買い物をしている最中だったから、いきなり正体不明の日本人から連絡があってビックリしたらしい。
会社の判断としては、「日本人からの仕事の依頼を確実にゲットする」ことが最優先にあり、「そのガイドは休みなので、後で連絡させます」という対応では他の会社に取られてしまうと考え、彼女の電話番号をおしえた。
会社が彼女に連絡して事情を話し、彼女から連絡させるのは手間と時間がかかるから、ボクに直接電話をさせたらしい。効率を考えると、たしかにそれが最適解。
しかし、ガイドも驚いていたから、このケースは例外的かもしれない。

日本人と中国人の違い

そのガイドは、自身の経験から、日本人と中国人の価値観の違いについて次のように話していた。

日本の会社は、いろいろな人に配慮したり、事情を考慮したりして物事を進めるため時間がかかる。中国の会社なら、こうした過程をスキップして、目的に向かう最短の道を選ぶ。
こんな行動の違いは、一般的なことにも表れている。
日本人はステップを踏みながらゴールに近づくが、中国人はスピード重視で一直線にゴールを目指す。だから、中国人は自分の考えをストレートに相手に伝えるが、日本人は遠回しに言うことが多い。
中国人から見ると、日本人は慎重に行動するから失敗が少ないけれど、無駄を省いて効率的に進めることに欠けている。

もちろん、これは彼女の個人的な見解で、行動や考え方には個人差もある。しかし、日本人に比べて、中国人はビジネスにおいて、コスパやタイパを重視する傾向が強いことは間違いないだろう。しかし、日本人からすると、そのやり方は効率的ではあっても合理的ではないため、「自己中心的」に見えることもある。

「一週間以内に死んだら、もう一匹無料であげます」

中国では、犬や猫を食べる文化が広くあったが、最近では犬や猫を「家族の一員」としてかわいがる人が増え、「食用」として見ることは少なくなった。
(とはいえ、今でも中国南部の街では6月に「犬肉祭り」が開かれ、1万匹もの犬が食べられている。犬や猫に対する考え方は地域や収入によって違う。)
中国では動物愛護の雰囲気が高まり、ペットブームが到来し、市場もにぎわっている。競争は激しく、売る側は「その他大勢」から抜け出すために独自性をアピールし、差別化を図らないといけない。そこまでは日本も同じだ。
しかし、しかし、朝日新聞の記事(2025年9月24日)が伝える「『星期寵』であれば、無料でもう1匹送ります」というやり方は日本では想像できない。

中国語の「星期」とは「週」、「寵」はペットを指し、「1週間以内に死んでしまったら」ということを遠回しに伝える言い方だ。

中国、ペット市場沸く影で 過剰繁殖される猫、量り売り「犬肉車」も

 

もし犬や猫が一週間以内に死んだら、もう一匹無料で送るという。たしかにそういうケースは考えられるし、その際の「保証」もあったほうが安心だ。
日本では、ペットは法律上では物としてあつかわれ、そんな事態が発生したら、契約に基づいて売った側に代金の返金を要求することができる。日本人の価値観からしたら、それは購入時に確認することで、売る側が責任感や強みとしてアピールすることはないだろう。

海外の店では、商品をひとつ買うともうひとつ無料でもらえる「Buy one, get one free(BOGO)」キャンペーンがよくある。これは日本人の価値観に合っているから、「BOGO」を採用している店もある。しかし、「不良品を新品と交換する」といったモノ感覚で、生き物をあつかう発想が日本人に受け入れられるとは思えない。

有料記事なので、すべてを読むことはできないが、「犬肉車の量り売り」というのは、数匹の犬をまとめて、重さで販売しているということだろう。
犬や猫を「食用」として見ていた時期が長かったため、今でも「商品」として考える傾向が強いのでは?

効率的でも合理的ではない

合理性と効率性は「無駄を省く」という点では似ているが、少し違う意味をもっている。合理性には、「道理にかなっていて、聞いた人が納得できる」という要素がある。だから、効率性を追求して作業を進めても、合理的に考えれば、その作業は実は不要だったとわかることもある。

「利益」を最優先に考えた場合、犬や猫をたくさん増やし、死んだらもう一匹送るというサービスや、量り売りをするのは効率的だろう。しかし、日本人の価値観からすると、そのやり方は強引で、引いてしまうため、合理的とは言えない。
(もちろん、すべての中国人がこれを支持しているわけではないだろうし、個人差はある。)

上海の一件も効率的ではあったが、女性社員の電話番号を知らない男性におしえたことは合理的だったとは思えない。自分の経験を振り返ったり、こうした記事を読んだりすると、日本人も無駄を省いた効率的な方法を好むけれど、「合理性」という点では中国人との価値観の違いを感じる。

 

 

中国 「目次」 ①

中国 「目次」 ②

中国 「目次」 ③

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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