日本人が南国のマレーシアで生活をはじめると、四季の移り変わりが無くなって喪失感を感じることが多いらしい。
さて今回のゲストは30代のタイ人女性、ケーキさんだ。
*一般的にタイ人はニックネームを持っていて、チョコやパンケーキといったユニークな名前もある。
ケーキさんは静岡の大学を卒業し、タイに帰国した後、アメリカに引っ越してミシガン州の会社で働いていた。今は専業主婦をしながら、タイ人の夫と2人の子どもと暮らしている。そんな彼女に、バンコクと日本とアメリカの「冬」について話を聞いた。
ーーミシガン州で生活はどんな感じ?
わたしが住んでいる地域はのんびりしていて居心地はヨシ。でも、ミシガン州はアメリカ北部、カナダの隣にあって冬の寒さが“鬼”なのよ。
ーーネットで調べると、ミシガンの緯度は北海道とだいたい同じくらいか。デトロイトの1月の平均最低気温はマイナス6度で、最高気温は0度。マイナス10度を下回ることもあるから、この寒さはきついな。
でしょ? それが毎年やってくるんだよ!
ーー「季節」って知ってる? でも、タイは基本的に一年中夏だから、日本人やアメリカ人とは季節の感じ方が違うか。
そう。タイでは季節は気温よりも、雨が降るかどうかで決まる。基本的に雨季と乾季の2つしかないから、四季がある国とは考え方が違うの。そんなタイでも、12月と1月は「冬」になってけっこう寒いよ。
ーー知ってる。それでも12月の平均気温は26・4度、1月は26・6度だから、日本なら6月の気温だ。年末年始にタイに行ったとき、23度ぐらいの日があって「意外と涼しくて過ごしやすい」と思ったけど、宿のタイ人は「寒い寒い」って言ってたから、正直「ヘタレだな」って思った。
それでもタイ人には寒いんだって! 静岡の冬は日本の中では暖かいほうって聞いたけど、耐性ゼロのわたしにはすっごく寒かった。バイト代が電気代に消えるのもツラかったー。
ーー気温だけならマイルドな寒さだけど、静岡の西部では強風が吹くから、数字以上に寒く感じる。体感的にはペテルブルグと同じくらいだと言ったロシア人もいた。
あの風は本当に辛かったー。そういえば、バンコク育ちのわたしは自転車に乗れなかったから、最初は日本人の友だちに見てもらいながら、大学のキャンパスで練習したの。あー、なつかしい。
ーータイ人って、とくに都市部の人は自転車に乗らないよね。
だってタイは暑いし、ドライバーの運転が荒くて危ないから。

寒さの厳しいカナダでは、セントラル・ヒーティングが標準装備されていて、家の中はとても暖かい。だから冬には、中と外の気温差が42度になることもある。
ーー熱帯で生まれ育った人にとって、ミシガンの冬は拷問かな。でも、アメリカの家はセントラル・ヒーティングが普通だから、冬になったらケーキは家に引きこもって冬眠状態になる?
人をクマみたいに言うな! でもどうしてもって言うなら、テディベアがいいな。
冬はたしかに「おうち時間」が多くなる。家の中ならTシャツでいられるくらい暖かいから、日本の冬のほうが寒さを感じることが多かった。
ーー昔、兼好法師って賢人が、「冬の寒さは何とかなるから、夏をむねとすべし(夏を想定するべき)」と言った(書いた)。日本の家造りでは、蒸し暑さをやわらげることが大事で風通しが良いから、冬はどうしても寒く感じる。
でも、ミシガンには「冬の楽しみ」もあるの。雪景色はきれいで、とくにクリスマスと重なるとロマンチックなんだ。雪が積もると、子どもたちは雪だるまを作ったり、わたしたちはスキーやスノーボードに出かけたりする。湖や川が凍ると、その上でスケートやスノーモービルを楽しむことができるし、氷に穴を開けて釣りをする人もいるの。
ーーこの先、どんな異常気象が発生しても、タイではそれは考えられないね。そういえば、日本で初めて「ホワイトクリスマス」を経験して感動したというニュージーランド人がいたな。
ニュージーランド人が話すクリスマスの違い、日本で感激したワケ
だから、冬の写真をSNSにアップすると、タイの友だちは「きれーい」とか「うらやましーい」とか言うけど、あの人たちがミシガン州で一回冬を経験したら、絶対に「もう十分」とタイに帰りたくなる。
ーータイ人は(寒さに)ヘタレだからね。

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