「皇帝になるか死体になるか?」
インドのムガル帝国(16世紀~19世紀)で、「だれが次の皇帝になるか?」という王位継承をめぐる争いが起きたときに、こんな言葉がささやかれたという。
タージマハルを建てた皇帝シャージャハーンが病気で倒れたとき、皇帝の息子たちが皇帝の座を求めてたたかいを始める。
このたたかいに勝てば、皇帝になることができる。
負けたら殺されて死体になる。
王位継承でたたかう子どもたちには、「皇帝になるか?死体になるか?」の2つの選択肢しかなかった。
オスマントルコ帝国では、「王位継承の争いで負けた者は全員、目をつぶされた」ということを何かの本で知った。
徳川幕府のように、「長男が次の将軍になる」と決めときゃ良かったのに。
ここからは韓国の話。
韓国の大統領も、皇帝とまではいかないけれど、強大な権力をもっている。
でも、それが理由になって、大統領を辞めた後に悲惨な末路を迎えた人が多い。
死体にはならくなくても、捕まって囚人になった元大統領はけっこういる。
李明博(イ・ミョンバク)元大統領(2008年 – 2013年)も、その1人に加わる可能性が出てきた。
それで最近、韓国や日本で大きなニュースになっている。
今回と次回で、今までの大統領経験者の「その後」を書いていこうと思う。
幸せな「その後」ではなくて、不幸な末路をたどった元大統領のことを。
大統領はツラいのだ。
李承晩(イ・スンマン)氏
韓国の初代~第3代大統領(1948年 – 1960年)で、最後は亡命した。
李承晩氏が大統領をしていたとき、不正選挙に反対した中学生が武装警官隊に殺害される事件が起きた。
これに韓国中が激怒する。
反政府デモが韓国全土で起きて(四月革命)、李承晩大統領は辞任し、ハワイへ亡命せざるを得なくなった。
結局、李承晩氏は母国に帰ることはできず、ハワイで息を引きとる。
日本について言えば、戦後初のサッカー日韓がおこなわれたのは、この李承晩大統のときだ。
大統領は「負けたら玄界灘に身を投げろ」と韓国の選手団を送り出している。
つまり、「日本に負けたら、生きて韓国に戻って来るな」ということ。
ある意味、今に続くサッカー日韓戦の”原点”をつくった大統領ともいえる。
ちなみにこのときは、韓国が日本に勝った。
また、日本との関係では、竹島問題のきっかけとなった「李承晩ライン」を引いたことでも知られている。
李承晩ライン
1952年1月、李承晩大統領が韓国の主権範囲として示した水域ライン。
「日本史用語集 山川出版」
外務省は李承晩ラインを「国際法違反」だと主張している。
朴正煕(パク・チョンヒ)氏
韓国の第5代~9代大統領(1963年~1979)で、最後は暗殺された。
*この朴氏は大統領を辞めた後ではなくて、在任中に射殺された。
日本と「日韓基本条約」を結んだ大統領で、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済の高度成長を始めた大統領。
この「漢江の奇跡」によって、韓国は世界最貧国を抜け出すことができた。
朴正煕氏が日韓関係や経済などで、今の韓国の基盤をつくった。
でも、側近だった大韓民国中央情報部(KCIA)の部長によって射殺されてしまう。
この暗殺事件の前に、妻も射殺されていた。
朴正煕氏の娘が朴槿恵(パク・クネ)前大統領で、今は囚人として刑務所にいる。
全斗煥(チョン・ドゥファン)氏
第11代~12代大統領(1980年 – 1988年)で、大統領退任後に死刑判決を受けた。
全斗煥氏は韓国の大統領として、戦後初めて初めて日本を訪れた(1984年)。
この前年1983年に、北朝鮮によるラングーン爆弾テロ事件で爆殺されそうになった。
さらに1987年には、北朝鮮の工作員による大韓航空機爆破事件が起きて、韓国と北朝鮮の対立は深刻になる。
また全斗煥氏は、光州で民主化を要求していた多くの市民が軍に虐殺された事件(光州事件)の責任者でもある。
この光州事件や不正蓄財疑惑によって、大統領退任後、訴追されて死刑判決を受けた。
全斗煥氏は、日本による植民地支配についてこんなことを言っていた。
「我々は国を失った民族の恥辱をめぐり、日本の帝国主義を責めるべきではなく、当時の情勢、国内的な団結、国力の弱さなど、我々自らの責任を厳しく自責する姿勢が必要である」
「ウィキペディア」
「韓国が植民地になったのには、韓国にも責任もある。我々も厳しく反省する必要がある」という主張は、現在の韓国では受け入れられそうにない。
盧泰愚(ノ・テウ)氏
第13代大統領(1988年 – 1993年)で、退任後に逮捕された。
開会式で鳩を焼いてしまったものの、ソウルオリンピックを成功させ、さらには当時のソ連や中国と国交を樹立したことでも知られている。
大統領を退任した後、数百億円もの不正蓄財があったことがバレて逮捕された。
盧泰愚氏は、”日本の謝罪”について、こんなことを言っていた。
謝罪がはっきりしないので被害者は加害者の真心を疑わざるを得ない。真心から「すみません」と言えば被害者としても感動して「もう結構です。これから上手くやりましょう」と言える。
「ウィキペディア」
全斗煥(チョン・ドゥファン)氏の「我々自らの責任を厳しく自責する姿勢が必要である」とは、えらい違いだ。
現在の韓国人の考え方は、この盧泰愚氏と同じと考えて問題ない。
日本がどう謝罪しようと、「被害者としても感動」して「もういいです」と言うことは現実的にはないと思う。
今回はここまで。
続きは次回に。
おまけ
ソウル駅の様子。
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