1945年、日本はアメリカに降伏した。
そのころフィリピンにいて、アメリカ軍と戦っていた日本兵もアメリカ軍に投降した。
ここに、捕虜となった日本兵がのこした手記がある。
アメリカ軍兵士に守られながら、車で移動していたとき、彼らは現地のフィリピン人から石を投げられていた。
果してそこから百メートルばかり先の、家が五、六軒固まった所へさしかかると「バカヤロー、ドロ ボー」と待ってまし た! とばかりのとばかりの声が飛んで来た。英語の出来るらしいのは「 ジャパン・ノー・モール」といい、のぞき上げた 二階では、醜い女が醜い顔を引きつらせ て、右手で自分の首を斬る真似をしながら「何とかしてパタイ」と叫んでいる。お前等は首斬られて死ぬんだといってるんだろう。バラバラと石や土塊が投げられ、警乗兵は銃を構えた。
「比島投降記 ある新聞記者の見た敗戦 (石川 欣一)」
これはこの日本人の個人的な体験。
全てのフィリピン人が日本軍に対して、こんな恨みをもっていたわけではない。
でも、この記事で書きたいのは、この当時のフィリピン人の対日感情じゃない。
このとき日本軍がフィリピンに残した「置き土産」について。
今までに会ったフィリピン人に「フィリピンで、一番有名な日本人はだれ?」と聞くと、みんな同じ人を言う。
「ヤマシタ!」
もう、満場一致の即答。
彼は今でもフィリピンで超有名人。
その「ヤマシタ」とはこの日本人。
山下 奉文(やました ともゆき) 1885年 – 1946年
日本陸軍の軍人で大将だった人。
「マレーの虎」というニックネームを持つ。
ヤマシタが有名なのは、彼が「山下財宝」をフィリピンのどこかに隠したと言われているから。
フィリピン人は、ヤマシタがどんな人かは知らない。
興味があるのは金。
ヤマシタ率いる日本軍が、フィリピンのどこかに埋めたといわれる財宝に関心が集まっている。
これを発見しようとするトレジャーハンターもたくさんいるため、トラブルが続出していた。
財宝探しをめぐってのトラブルが頻発するため、2007年からフィリピン政府は山下財宝探しの規制を強化し、これまでの届け出制から許可制となり、環境天然資源省へ10000ペソの手数料を払って取得する。
ちなみに、イメルダ・マルコスも山下財宝のことを話している。
1992年、不正蓄財の嫌疑をかけられたフェルディナンド・マルコス元大統領夫人のイメルダ・マルコスは、夫は山下財宝を発掘して財をなしたと主張した。
山下財宝に夢中のフィリピン人がいることは、前に聞いたことがあった。
でも、そんな都市伝説を、ホンキで信じる日本人がいるとは思わなかった。
まさか山下財宝関連で、フィリピン警察に捕まる日本人が出てくるとは、想像もできなかった。
事実は小説より奇なり。
山下財宝を見つけるために、日本人をふくむ17人が穴を掘っていたら、「違法な宝探し」として現地警察に逮捕されてまった。
許可制なのに、許可を取っていなかったのだろう。
そのことが産経新聞の記事(2018.6.2)に書いてある。
警察によると、日本人は40~60代の3人と15歳の少年。北部ルソン島サンバレス州沖にあるカポネス島で、約5メートル四方で深さも約5メートルの穴を掘った疑いがある。
「隠し財宝」の発掘試みた日本人4人が逮捕 日本軍の伝説残るフィリピンで違法な穴掘り
海外で穴を掘って逮捕されたという日本人は、他に聞いたことがない。
ちなみに、15歳の日本人少年は通訳として一緒にいたらしい。
ネットの反応を見ると、注目したポイントがいくつか分かれていた。
「隠し財宝」というところに目がいった人たち
・普通日本人なら徳川埋蔵金だろ
・徳川埋蔵金探しで破産したお父さん、まだ生きてるの??
・徳川埋蔵金は?どこにあるん?
・糸井重里「・・・」
「15歳の少年が通訳をしていた」というところに注目した人たち。
・15歳で埋蔵金発掘の通訳ってカッコイイ
・15でフィリピン語いけるバイリンガルとか優秀だな
・就活で使えそう
バイタリティはあるわな
・いずれにせよ日本人の少年が通訳ってのは面白いね。
この辺の設定を膨らませれば冒険小説が書けそうじゃないか。
たぶん全然売れないだろうけど。
・学校もいかねーで財宝追っかけて国外とかスケールでかくていいじゃない
その他の人たち
・逮捕なんてされたらますますロマンが掻き立てられてしまうではないか
・>旧日本軍の埋蔵金
・埋めるような埋蔵金があるのなら戦争中に使っていると思うんだが。
・川口浩探検隊の出番だな!
・他国なんだからせめて許可取れよ…
ただのドロボーじゃねえか
・海賊王に俺はなる
・暇だな。財宝は見付からなかったけど、フィリピンの刑務所体験記で本を出せば儲かりそうだから良かったね。
これはフィリピン人から聞いた話。
フィリピン人は基本なまけ者。
楽しいことが大好きで、働くことが大大大嫌い。
楽して金を得たいと考えている人たちにとって、「山下財宝」はとてつもなく魅力的。
「それを見つけたら、一生遊んで暮らせる」という思いが強いと、本当にどこかにあると思ってしまう。
それで山下財宝の伝説もそれを埋めたヤマシタも、今のフィリピン人に語り継がれているという。
やつはとんでもないものを置いていきました。
さて、「山下財宝をねらって逮捕されたアホ日本人」だけでは、あまり記事にする価値がない。
ということで、タイトルに【フィリピンと日本】という言葉を入れてみた。
はじめに日本兵の話を入れたのも、この考えによる。
このとき日本人はフィリピン人に石を投げられたけど、いまのフィリピン人にそれはない。
なぜならフィリピンは親日国だから。
「アジア10カ国の親日度調査 – アウンコンサルティング」によると、「日本という国が好きですか?」という質問に「大好き」と答えた人が韓国では8%、中国では14%に対してシンガポールでは66%、フィリピンにおいては67%だった。
「大好き」「好き」を合わせるとフィリピンでは90%を超えた。
最後に、安倍首相がフィリピンを訪問したときの歓迎ぶりを見てほしい。
首相官邸の動画「フィリピン・ダバオ訪問-平成29年1月13日 」
これは安倍首相個人が歓迎されたのではなくて、日本が歓迎されたことと同じ。
昔は戦争で迷惑をかけたけど、今は違う。
空港建設をはじめ、日本がいろいろところでフィリピンを支援してきたから、今の友好関係がある。
だからアホな日本人のせいで、今までの努力がムダになるのは、ホントやめてほしいっす。
こちらの記事もどうぞ。
日本とタイ(東南アジア)の仏教の違い① 飲酒・肉食・喜捨(タンブン)
コメントを残す