例えばこんなことがあったとしよう。
こちらが責任を認めて、相手にお金をわたす。
向こうはお金を受け取って、「分かりました。この問題はこれで完全に終わりです」と言って、お互いが握手を交わす。
それを53年後に、「あの約束は間違っていた」となかったことにしやがる。
こんな合意違反に、本気で怒っているのがいまの日本政府だ。
で、「最高裁はとんでもない判決を出した!」とあせっているのが韓国政府。
1965年、日本が韓国に5億ドルをわたして請求権問題の完全な解決を確認した。
その日韓請求権協定をひっくり返して、韓国最高裁が先月10日、元徴用工1人につき約1000万円の賠償金の支払いを日本企業に下す。
くだすのは腹だけにしてほしかった。
韓国政府はこの判決を消化できないで苦しんでいる。
これに韓国の反応はというと、市民や一部マスコミは、
「当然の判決だ」
「反省と謝罪はなく右傾化に進む「危険な普通の国」に対する周辺国の憂慮だけを生むことを自覚しなければならない」
と原告の勝利に酔っている。
そのことは前回の記事をどうぞ。
でも、こんなふうに反日感情に迎合するマスコミだけではない。
日本との関係や韓国の今後を心配する新聞も韓国にはある。
今回はそんな反応を紹介しようと思う。
国民相手に商売をしている韓国のマスコミが、「反日愛国」の国民感情に異議を唱えるのはむずかしい。
日本企業に有罪を下した判決は、国際法には反しているけれど、国民感情には合っている。
ならば韓国では正義だ。
だから、こういう気持ちに理解を示しつつも、「でも韓日関係は最悪だ。韓国はこれから大変なことになるゾ」と警告する韓国紙もある。
例えばこんな中央日報の記事(2018年11月02日)だ。
徴用の“恨”は晴らしたが…日本に反論する外交戦は今から
元徴用工の日本への“恨”を晴らし、「被害者のための正義を実現したのが判決の意義だ」と最高裁の判決を評価する。
でもそうなると、日本が韓国に激怒するのはあたり前。
韓国政府にとっては、「国際社会を今後説得しなければならない外交戦が始まった」とプレッシャーをかける。
終わりへの始まりだったりして。
裁判での勝利は手に入れたけど、韓国の本当の戦いはこれから。
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード、韓国政府は長くて険しい道を歩き始めるわけだ。
そんな君に幸せあれ、と言いたいのだけど、日本との外交戦で韓国は不利な立場にいるらしい。
中央日報は元外交官の言葉を借りて、国際社会での韓国の信用失墜を不安視している。
「国際社会では、韓国は相手国と条約を結んでおきながら国内的な判断が変わればいくらでも覆すことができる国のように見えかねない。丁寧に対応しなければ、韓日関係を越えて韓国の国際的な信用と信頼に影響を及ぼしかねない」
だから読者も感情的に反発するな、と中央日報は言いたいいのだろう。
「日本が怒るから」というのは、韓国では抑止にならない。
「韓国の国格が低下するから」ということなら、国民も耳を貸す。
記事では、この言葉を言ったのは「ある前職外交官」と匿名にしている。
国民感情に反することを実名で言うと、韓国社会では袋叩きにされてしまう。
それを恐れているのだろう。
この記事ではシン・ガクス元駐日大使がこうも言っている。
「韓日間に植民支配の不法性認定をめぐって葛藤が再び深くなったり、歴史論争が再燃したりしかねないので慎重な外交的対応が必要だ」
実名を出して言えるのは、これぐらいがギリギリらしい。
こんなんで、本気で怒った日本と「外交戦争」ができるのだろうか。
韓国は宣戦布告をしたけれど、勝算はあるのか?
で結局、今回の判決で何が変わったか?
元徴用工は勝訴したけど、日本企業からまだ賠償金をもらっていない。
これは無理だろう。
日本政府はこの判決を「断じて受け入れられない」と完全に否定しているし、日本企業の考えも政府と同じ。
日本側に不当な要求にしたがう気配はない。
支払いは拒否するだろう。
結局、韓国側は精神的勝利を手に入れたけど、本気で怒らせた日本と国際社会で戦うことになったわけだ。
しかも、勝算は薄いのに。
目的地が分からないのに船を出すからこうなる。
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