江戸時代、外国人が驚いた日本人の識字率の高さとその理由

 

はじめの一言

「私には日本人ほど好んでペンや筆を振う国民があるとは信じられない。彼らはあらゆることを文書にして取扱う。また一般に広い範囲にわたって手紙のやりとりを続けているので、婦人ばかりか男子も、このために時間の大半を費やしている有様である。(フィッセル 江戸時代)」

「日本絶賛語録 小学館」

 

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前に西アフリカにある「マリ」という国について、日本と比べながらいろいろなことを記事で書いた。
マリの経済力は鳥取県のちょっと下ぐらい、とか。

このときに教育についても書こうと思ったのだけど、思いのほか文が長くなってしまった。

だから今回からそのことを書こうと思う。

・マリや日本の識字率
・日本で識字率が高い理由
・製紙法がいつ日本やヨーロッパに伝わったのか?

などについて書いていきたい。

 

 

マリでは文字の読み書きができる人がどのぐらいいるか?

マリの識字率をみてみよう。

2003年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は46.4%(男性:53.5% 女性:39.6%)である。

(ウィキペディア)

ということで、マリでは読み書きができる人は国民の半分以下らしい。

 

日本では国民の99%が文字の読み書きができる。

日本の識字率は、99.0%(2008年)で、世界で28位です。

世界・識字率ランキング

でも、世界で28位か。
もうちょっと上かと思ってたけどね。

 

江戸や明治時代、日本人の識字率はとても高かった。

この記事の「はじめの言葉」にもあるように、日本へ来た外国人はたくさんの日本人が文字の読み書きができることに驚いていている。
たとえば、幕末に来日したドイツ人のヴェルナーはこう驚嘆した。

民衆教育についてわれわれが観察したところによれば、読み書きが全然できない文盲は全体の1パーセントにすぎない。世界の他のどこの国が、自国についてこのようなことを主張できようか?

「日本絶賛語録 小学館」

日本人は殊の外読書を好む。平の兵卒でさえも、見張りのときもほとんど休みなしに本を読んでいる

(ゴロウニン 江戸時代)「日本絶賛語録 小学館」

ロシア人の「ゴロウニン」の名が出てきたところで、日本史を習っている人は有名な「ゴローニン事件」も確認しといて。

 

日本では、召使い女がたがいに親しい友達に手紙を書くために、余暇を利用し、ぼろをまとった肉体労働者でも、読み書きがができることでわれわれを驚かす。

(ヴェルトナー 江戸時代)「日本絶賛語録 小学館」

日本では「ぼろをまとった肉体労働者でも、読み書きができる」ということが、当時のヨーロッパ人を驚かせている。

何かの本でこんなことを読んだことがある。
江戸時代のドラマを見ていたイギリス人がこんな場面で驚いたという。

幕府の命令を町の人たちに伝えるために高札が立てられた。
多くの庶民が立ち止まってその高札を読んでいる。
イギリス人にはこれが不思議だったらしい。

「江戸時代に一般庶民が文字を読むことができたの?これは本当?ドラマだから?」

数百年の前のイギリスでは、一般的な庶民が文字を読むことはできなかったという。

 

識字率の高さも関係しているけど、外国人から見た日本人の特徴とくちょうには教育水準の高さがある。

幕末の日本に来て「開国しろ!」と要求したアメリカ人のペリーは、こう言っている。

彼らは学問及び一般の知識の点においても、決してそのしとやかな態度や優しい気質に劣っていなかった。実に彼らは育ちがよいばかりではなく、教育も悪くなく、日本語は言うに及ばず、オランダ語、シナ語にも上達し、科学のあらましにも世界地理にも通じていた。

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

さらにいうと、江戸時代、外国人は日本人の好奇心の強さにも目を見張っていた。
ペリーはこうも言っている。

他国が発展させてきた成果を学ぼうとする意欲が盛んで、学んだものをすぐ自分なりに使いこなすことがある。

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

日本人の強さは、識字率の高さと並はずれた好奇心にあった。

幕末・明治時代に見せた日本の奇跡のような発展は、日本人の識字率や好奇心の高さがあったからこそ可能だったはず

 

でも識字率の高さについていえば、日本は「運が良かった」という面がある。
隣にに中国があったから。

中国人が世界で初めて紙の作り方を考案している。
その中国で生まれた製紙法が日本に伝わることで、日本では早くから紙をつくることができた。

このことが日本人の識字率の高さにも影響を与えている。

そのことは次回に。

 

おまけ

この記事で識字率のことを書いた。
日本は99.0%で世界では28位になる。

識字率の世界1位はリヒテンシュタインで、識字率はなんと100.0%。

「リヒテンシュタインってどこ?」
と思った人は探してくれ。
ヨーロッパにある小さな国。

それでこの世界の識字率のデータを見ていて、「本当か?」とびっくりしたの、世界第2位の国。
どこだと思う?

北朝鮮だった。
北朝鮮の識字率は、日本を上回る100.0%だという。
まさか北朝鮮が世界2位とは、まったく想像してなかった。
でも、統計の取り方が気になる。

識字率のデータは、「世界・識字率ランキング」から。

 

おまけのおまけ

アメリカとの戦争が終わったあと、日本にやってきたアメリカ人がこんなことを言った。

「日本語は漢字が多いために覚えるのが難しく、識字率が上がりにくいために民主化を遅らせている」

そこで日本人の識字率は低いかどうかを当時の文部省が調査したところ、こんな結果が出た。

1948年8月、文部省教育研修所(現・国立教育政策研究所)により、15歳から64歳までの約1万7千人の老若男女を対象とした日本初の全国調査「日本人の読み書き能力調査」が実施されたが、その結果は漢字の読み書きができない者は2.1%にとどまり、日本人の識字率が非常に高いことが証明された。

(ウィキペディア)

 

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2 件のコメント

  • じゃあ中国は日本以上に識字率が高くて日本より先に欧米文化を取り入れたのか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。