スポーツ選手がプレー以外のことで騒がれるときは、だいたいろくなことじゃない。
いま韓国の釜山で、野球の18歳以下のワールドカップが開催されている。
侍ジャパンU-18代表は8月30日にスペインと初戦を戦い、2点を先制されるも8回に4点をうばい、4対2と逆転勝利をおさめた。
…という試合結果より、日本国内で注目されたのは選手のシャツだった。
NHKニュース(2019年8月27日)
野球U18日本代表 “日の丸なし”で韓国へ 関係悪化で異例対応
いま戦後最悪といわれるほど、日韓関係は悪化している。
そんな状況で韓国へ行くということで、日本高校野球連盟(高野連)は代表選手に、日の丸と「JAPAN」のロゴを消した無地のシャツを着て出入国させることをきめた。
こんなことは過去に例がなく、NHKは「異例の対応」と報じる。
この理由について高野連の事務局長はこう説明している。
「韓国の国民感情に配慮して、日本を前面に出すのはやめようと思っている。日韓関係が悪化していることと、スポーツをすることは別なのでわれわれは真摯(しんし)にプレーすることが大事だと思う」
日本国内の反応は、「選手の安全が第一」「配慮も必要かもしれない」とこの決定を支持する声もあるけど、それは本当に少数。
「日の丸を隠す必要はない」「こんなの日本チームじゃない」「日の丸を自粛するぐらいなら韓国に行くな」と高野連の対応を非難する人が圧倒的に多い。
この対応に首をかしげる有名人もいて、アルピニストの野口健さんは「片方だけが外すという事が果たして未来志向なのか?」とツイートした。
これを「韓国への過剰配慮」とみた政治家もいる。
三原じゅん子参院議員
「スポーツの世界で、日の丸を背負って闘う日本代表選手たちに、韓国への配慮とか必要なのでしょうか」
和田政宗参院議員
「いつも通り、国旗やJAPANの文字入りシャツで入国すれば良い。日本代表であり高校生であり、韓国国民もさすがに敬意を払うはず」
韓国が逆の立場だったら、国旗(太極旗)を隠すことは絶対にない。
「日本の国民感情に配慮して、韓国を前面に出すのはやめようと思っている」という理由で韓国代表のシャツから国旗と国名を削除したら、その責任者が社会から削除されてしまう。
ネットにさらされて、しばらく韓国の街を歩けなくなるだろう。
でも結果から言えば、上のシャツについては元の日の丸付きのシャツに戻った。
高野連の事務局長は「白のシャツは様子見。何も起きなかったので」と言うけど、ニュースでは事務所に抗議が殺到して電話がパンク状態になったとある。
「白のシャツは様子見」という言葉をふくめて、自国の国民感情を見誤ってないか?
日本より気になったのは、これに対する韓国側の反応だ。
この配慮は韓国人にとって、うれしいものか?むしろ迷惑か?
さっそく韓国の新聞(日本語版)、朝鮮日報・中央日報・東亜日報・聯合ニュース・ハンギョレ新聞を見てみたけど、これを報じていたのは中央日報だけ。
*ボクが記事を見落とした可能性はある。
中央日報の反応はとてもシンプルだ。
「韓日葛藤が経済・安保分野を越えて民間交流にも影響を及ぼしている」 とふれたうえで、日本の選手は「JAPAN」の文字と日章旗のない「白い無地のポロシャツを着ることになる」と伝えただけ。
くわしいことは下の記事をどうぞ。(2019年08月28日)
日本高校野球チーム、韓国で日章旗ないシャツを着用…「安全考慮」
客観的に、とても冷静に事実だけを伝えている。
これは高野連の配慮を歓迎しているとは思えない。
「日本人が過去の蛮行を謝罪に韓国へ来た」という場合、韓国メディアは「われわれの友人」「良心的な日本人」といった賛美の言葉が使われるけど、この記事にはそれが一切ない。
韓国人に配慮してくれたのはいいけど、国旗を消すことを韓国側は要求していない。
勝手にそんな配慮をされちゃっても、韓国人はきっとよろこばないだろう。
それに安全に考慮して日の丸を消したというのは、「いまの韓国は日本人にとってそれほど危ない国」という印象を日本国民に伝えてしまう。
はっきり言って、この配慮はありがた迷惑。
一般の韓国人の反応をみても、「過剰配慮」と思っている人が多いようだ。
「ありがたい話だ。しかし一歩間違えれば、実際の善良な意図とは違って、韓国が安全ではないからそうしたという認識も与えかねない。」
「日本人が韓国で、日本人であることがばれたら危険だという認識はどこから来てるの?」
「国旗はちゃんと付けるべき。旭日旗でなければ何も問題はない。」
「日の丸を見たら韓国人が興奮すると誤解している。」
以上の韓国人の声はハーバー・ビジネス・オンラインの記事(8/30)から。
野球U18代表「国旗配慮」に韓国民はどう反応したか? 日本メディアの嫌韓扇動が導くもの
日韓関係は悪化しているけど、日本代表の選手が“日の丸なし”で韓国へ向かうという「異例対応」は見当違い。
「韓国の国民感情に配慮して、日本を前面に出すのはやめようと思っている」という配慮の結果、日本の国民感情を傷つけたし、希望しない配慮は韓国人にとってもありがた迷惑。
もちろん自爆した高野連が受けたダメージは大きい。
シャツから国旗と国名を消したことで、得した人が見当たらないのだ。
これほど裏目に出た配慮も珍しい。
こちらの記事もどうぞ。
このニュース、私も過剰配慮と瞬間的に思いました
しかしですよ、と同僚は言う
将来、MLBに行くかもしれない高校生を預かる側の責任として、現在の日韓関係ならばもしや、と思うのは当然ではないか、と
なるほど一理ある、と思いました
しかも高野連ですからね、野球しか知らない人々と体育の先生の集まり
うーん、事後の非難よりも事前にアドバイスできる誰かがいなかったのかなあ
このニュースですがアンケート調査をしたところ、子供がいる年齢層では高野連の対応を理解するという人が多かったです。
結果的には過剰配慮だったのですが、動機は悪いものではありません。
こういう経験値を積み重ねていって、未来はそこから判断するしかないでしょうね。
まあ、「子供の身の安全を確保するため」という高野連の考え方は理解できる。ただし、本当に子供たちのことを考えての話か? 何かあった時に自分達が責任を問われるのは嫌だからでは? とも疑われる。(普段の高野連のやっていること、言っていることを見ているとね。)
それが一転して、当初予定通り日の丸付きのシャツを着用することになったのであれば、今度は、本当に「子供たちの身の安全を確保する」ような何らかの処置をとってほしいものだ。と言っても、どうせ何もやってないのだろうが・・・。単に世論に押されて自分達の言動をひっくり返しただけではないのか?
適切な対処行動が伴わないで言動を翻すことは、無能なポピュリズム政治家とやり方が同じだと思う。そういう者は、リーダーの一人として社会を率いていく資質がない。社会全般における組織運営のあり方を、最近の(大人の)日本人は真面目に考えているとは思えないし、その能力が備わっていないとしばしば感じる。
これもおそらく、平和ボケの一種なのだろう。
まあ、保身は理由のひとつにあったと思いますよ。
でも結果的にぶっ叩かれたわけですが。
韓国人への配慮と言いますが、韓国人の受けも悪かったです。
世間の空気や日韓の情勢を見誤りましたね。