GSOMIA攻防戦:韓国「ゆずれ」vs 日本「絶対に譲歩しない」

 

いま韓国大統領府のホームページを見ると、文大統領がお気に入りのキャッチフレーズを見ることができる。

大統領府ホームページのキャプチャー

 

ことし8月15日、韓国が独立を回復した重要な日、文大統領による国民向けの演説で「誰も揺るがすことのできない国」という言葉が飛び出した。
これはもちろん、韓国に対する輸出管理を強化した日本を意識して、敵視しての発言。
文大統領は国力を強化することで、日本に依存しない国を目指しているのだ。
でも日本が韓国にお願いしているのは、「国際法を守ってほしい」ということなのだけど。

とにかく文大統領はこの力強いフレーズが大好きで、2日前もこう言って韓国メディアが国民に伝えていた。

東亜日報の記事(November. 23, 2019)

韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を決める「D-day」に、日本の素材に代わる半導体部品の企業を訪れ、経済の「克日」の意志を再び強調したのだ。

文大統領、「誰も大韓民国を揺るがすことはできない」

 

そう。この日は「D-day」だった。
この時点では日韓のメディアや国民は、韓国政府がGSOMIAを破棄するものだと思い込んでいた。
(韓国政府は当然として、日本政府も事前に破棄しないことを知っていたらしい)

この言葉を聞いた人は、「日本やアメリカの圧力を受けても、韓国政府は決定を動かさない。必ずGSOMIAを破棄する」と思っただろう。
でもその日の午後6時ごろに、韓国政府はGSOMIAを延長すると発表する。
日米韓の国民がズッコケた(昭和っぽい)瞬間だ。

「日本が輸出規制を撤回しない限り、GSOMIA破棄は避けられない」と明言していたのに、日本は輸出管理については何もゆずらす、韓国だけが一方的に破棄を撤回した。
それだけでなく、韓国は日本へのWTO提訴の手続きまで中断したのだ。

日本にとってこれは想像を上回る“勝利”で、岸田文雄自民党政調会長は「韓国側が譲歩した」と事実を指摘する。
日本政府高官は「青瓦台(大統領府)がようやくGSOMIAの重要性を認識した」、別の政府高官は「ほとんどこちらのパーフェクトゲーム(完全試合)だった」と、ムン政権による「GSOMIA破棄するかも騒動」を総括した。

 

ただ、韓国政府がGSOMIA破棄を発表してからの3か月、韓国や韓国寄り勢力の日本を揺らがそうとする動きは激しかった。
特に期限となる11月22日に近づくと、何とかして韓国にゆずるよう日本政府に求める声があちこちから聞こえるようになった。

文政権の立場に近いハンギョレ新聞は失効前日まで、社説(2019-11-22)で日本に動けと訴えていた。

事態がここまで至ることになったのは、日本の責任が大きいということを指摘せざるを得ない。(中略)日本が本当に協定の維持を望むのなら、今からでも輸出規制の撤回のための積極的な動きを見せなければならない。

GSOMIA終了、日本の最後の「態度変化」を促す

 

韓国メディアはだいたいどこもこんな論調が多く、日本政府に韓国へゆずることを要求していた。

日本国内でも政府に譲歩を求める人やメディアが活発に動く。

11月18日放送のBS日テレ「深層NEWS」に出演した西野純也慶大教授は、「日本側が態度を軟化させれば、韓国側が再検討する名分となる」と話して政府に態度変化をうながす。

東京新聞は社説(2019年11月19日)で、輸出管理を韓国と同じように「輸出規制」と表現して政府に撤回を求めた。

日本政府は、GSOMIAとは次元の違う話だとして、輸出規制強化の撤回に応じていない。韓国側の対応は問題だが、日本政府が人ごとのように振る舞っているのは無責任ではないか。

GSOMIA 結束し失効回避目指せ

他にも、韓国寄りの朝日新聞や毎日新聞も日本に韓国への譲歩を訴えていた。

 

韓国側が総力戦で挑んでも、日本政府はまったく動かない。
輸出管理強化を撤回する気配は一切見せない。
あせって苦しくなった韓国側は、「何とか文大統領の顔を立ててほしい」と日本政府に“お願い”までしていたのだ。
そのときの様子については、時事通信の報道(11/23)をどうぞ。

外務省内では一時、譲歩案が浮上した。しかし、輸出管理を担う経済産業省は強硬姿勢を崩さず、首相官邸も「絶対に譲らない」と一蹴したという。

米圧力で方針転換 日韓、失効直前の折衝 GSOMIA〔深層探訪〕

 

「韓国にはゆずらない」と政府が強気でいられたのも、民意の後押しがあったから。

産経新聞社とFNNが韓国によるGSOMIA破棄についてどう思うか、直前に世論調査を行ったところ、「破棄はやむを得ない」と答えた人が自民党支持層で72・7%、公明72・1%、立民71・2%、共産党の支持層でさえ65・1%と過半数を大きく上回った。

くわしいことは産経新聞の記事(2019.11.18)を。

【産経・FNN合同世論調査】GSOMIA、ほぼ全政党で「破棄やむなし」

おまけにこれはきょうの日本経済新聞の記事(019/11/24)

韓国に譲歩する必要ない69% 日経世論調査

「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」が69%で、「日本が譲歩することもやむを得ない」(21%)の3倍以上と圧倒的だ。

 

結局のところ、韓国や韓国寄りの勢力が総力をあげても、日本国民を動かすことはできなかった。
これが政府の「絶対に譲らない」に大きな影響をあたえたはず。
韓国にとって「揺るがすことのできない国」とは日本のことだったのだ。

 

それでも大統領府のホームページは強気

 

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

2 件のコメント

  • アホだな、、それと同じく日本の親韓メディアや大学教授、学者と云われる人々に付ける薬はないわ!なんで正義が譲らねばならんのか?自分たちの子供に説明できますか?

  • 世論調査からも、反日や加害感情(罪悪感)でいまの日本人を動かすことは難しいと思います。
    約束を守ればそれでいいのですけど、それは拒否して日本に譲らせようとするのはダメでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。