不買運動にGSOMIA破棄。それでも韓国、日本を動かせず

 

パク・クネ前大統領の退陣を求めて、韓国国民がおこなった「ろうそくデモ」を韓国紙は絶賛した。

国民は読者で自社の利益につながるから、メディアがその歓心を買うのは当たり前かもしれないけど、日本の新聞では見られないような表現で国民を誇り高くほめたたえる。

例えば韓国経済新聞/中央日報は社説(2016.11.27)で、惜しみなく「世界が驚く」というフレーズを使ってこう書いた。

世界は別の事実にさらに驚いている。国家元首の退陣を要求する革命的な波がガラス窓1枚壊すことなくこれほど平和的に進められるということに驚いている。国家的暴力性と市民的成熟さが不思議に共存する韓国社会を世界の人たちは驚きの目で眺めている。

世界が驚くろうそく革命の力=韓国

 

でもこのとき、そこまで驚く海外メディアはあったか?
「あなたのおっしゃる世界はどこの世界ですか?」という違和感がぬぐえない。
これを逆からみると、韓国でのデモはいつも暴力をともなうということか?

この社説を読むと全国紙じゃなくて、まるで活動家の文章だ。

ろうそくの火は消えず永遠に国民の胸の中で燃え上がるだろう。すでに「最悪の大統領」は過去になり、「最高の国民」たちが新しい未来を開いている。

 

その前に最悪の大統領を選んだのはだれだったのか。
まあこれは、国内紙が書いて国民が読んでスッキリすればいい「地産地消」の記事だから、外国人には関係ないのだ。

 

きょねんの夏、韓国人の胸の中で再びろうそくの火が燃え上がった。

日本政府が韓国に対して輸出管理の強化を発表すると、激怒した韓国ではムン大統領が「日本に二度と負けない」「盗人猛々しい」と訴えて、韓国紙は「日本の経済侵略」と国内の反日感情をあおる。
政治やメディアが笛を吹けば国民が踊りだす。
このあと「日本製品は買わない、日本には行かない」のノージャパン運動が全国で展開されたのはご存知のとおり。

でも首都ソウルに集まった10万の人たちが叫んだことは、正直よくわからない。

ハンギョレ新聞(2019-08-16)

市民たちは一斉にLEDのろうそくに火をつけた。市民たちは「NO安倍」「韓日軍事情報保護協定を廃棄せよ」「強制徴用を謝罪せよ」などと書かれたプラカードを持ち、「経済侵奪を糾弾する」「国民の力で新しい歴史を書こう」と叫んでいた。

「独立運動はできなかったが不買運動はする」…光化門を照らした10万のろうそく

 

日本統治時代の1919年、日本からの独立を求める「3・1独立運動」が行われたことに、いまの自分たちを重ねてこう叫ぶ。
このときの韓日は本当に対照的で、熱く盛り上がる韓国を日本人はとても冷たく見ていた。
ワイドナショーなどがノージャパン運動を連日のように取り上げていたけど、「何でここまでするのか?」と理解不能な反応が多かった。

 

反日運動が盛り上がっていたきょねんの夏。

 

「世界が驚くろうそく革命の力」の有効範囲は国内で、日本にそれは通じない。
「NO安倍」「韓日軍事情報保護協定を廃棄せよ」「強制徴用を謝罪せよ」といった要求はすべて日本の政府や国民に否定されて、現実になったものはひとつもない。
なによりノージャパン運動の最大目標だった「経済侵奪」(輸出管理強化)については、日本を1ミリも動かすことができなかった。
4年前、メディアが手放しで称賛して、市民に「万能感」を持たせるべきではなかったのだ。

 

国民を尖兵として扇動し、日本を圧迫させたものの安倍政権は動じない。
韓国政府は次に、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言して日本に揺さぶりをかけたけど、これも実質的には日本に黙殺された。
それで結局、きょねん11月に土壇場でGSOMIAの延長を発表して自作の騒動を終える。
自分の言葉を自分で否定する韓国ムン政権には、日本はもちろん韓国メディアもあきれかえった。

でも韓国はいまもこのカードにすがっていて、カン外務大臣は先月も記者会見で「われわれはいつでもできる」とGSOMIA終了をチラつかせて日本を圧迫する。
が、まったく相手にされていなかった。

中央日報の記事(2020.03.10)

韓国政府と関連消息筋などによると、GSOMIA終了カードは日本に通じない雰囲気だという。(中略)実際に日本は韓国政府のGSOMIA終了の可能性言及にも特別な反応を見せていない。

びくともしなかった日本…GSOMIA終了カードに輸出規制解除の兆しなく

 

韓国のいう「輸出規制」を撤回させるために、きょねんの夏から日本製品の不買運動やGSOMIA破棄で日本政府に圧力をかけてきたけど、結果は韓国紙も認めるように日本をまったく動かせなかった。
個人的には正直、どこかで日本が韓国にゆずるんじゃないかとヒヤヒヤしたこともあったけど、今回は思ったより頑丈だった。
もう韓国にカードは残っていないだろうから、これからは誠意で勝負するしかない。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

4 件のコメント

  • >世界が驚くろうそく革命の力
    いやはや、選挙、任期、(最終手段としての)弾劾といった民主主義的諸制度のことを、いったい、どう考えているのでしょうね? 本来ならば民主主義を守るべきメディアが、それを否定・破壊するような世の動きに迎合しているのだからどうしようもない。戦前の日本において、現在の左翼系新聞各紙が、国民に対欧米開戦を煽ったのと同じ状況ですね。
    そもそも、今刑務所に入っている前大統領は弾劾されなければならないほど、悪いことを何かやったのですか? 刑務所に入らねばならないほどのことを? さっぱり意味不明です。
    日本に長らく住んでる知り合いの韓国人が、ろうそく革命を叫ぶデモの様子をTVで我々日本人と一緒に見ていて、とても恥ずかしがっていましたよ。彼が言うには「メディアと教育のレベルが低すぎる、今のままでは韓国に未来はない」とのことです。

  • 日本に行かない運動は結局コロナで行きたくても行けない状況となりました。
    日本に行かない運動をしていた人たちはきっと小躍りしていることでしょう。
    でも韓国では日本・アジア圏をメインの商品にしていた旅行会社の倒産がすでに30件以上だとか。
    もちろん日本でも観光関係は破産・倒産あると思いますが(>_<)
    コロナの収束いつになるんでしょうね。

  • このとき韓国では「政治は三流でも、国民は一流」という言葉がはやっていた記憶があります。
    こうやって大統領を辞めさせて、刑務所に入れることが勝利になる感覚がよくわかりません。

  • ノージャパンを叫んでいた人たちはいまの状況をどう思っているのやら。
    愚行と気づけば幸いですけどね。
    日本でも旅館が倒産したとかコロナの影響は広がっています。ノージャパン運動でうばわれた自国民に体力をうばわれた韓国は大変だと思いますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。