日本とアフガンの名前をめぐる騒動「悪魔ちゃんとトランプ君」

 

子どもに「夢空」(ゆあ)という名前を付けたところ、従姉妹から「なんでまたそんな名前にしたん?読めんやろ?」と批判され、ネットでも賛否が分かれたという話を前回に書いた。

賛否分かれるキラキラネーム/外国人から見た日本人の名前

今回はこのオマケで、この記事に書いたものの、意外とボリュームがあったから独立させて別の記事にしたもの。日本とアフガニスタンで起こった、子どもの命名をめぐる騒動について書いていこうと思う。

 

まずは日本。
1993年に東京の昭島市役所に、「悪魔」という名前の男の子の出生届が提出された。
こうして「悪魔ちゃん命名騒動」が始まる。

両方とも常用漢字の範囲だったから役所は受理したものの、念のために法務省に確認すると「子供の福祉を害する可能性がある」という理由で不受理になった。
子どもに悪魔と名付けるのを「親権の濫用」としたまっとうな判断だ。
でも、そんな常識が通じる相手なら苦労はなく、これを不服とした親は東京家裁に訴えて市と争うことをきめる。

その結果、家裁は「命名権の乱用で戸籍法違反であるが、手続き論的立場から受理を認める」と実質的に親側の勝訴を言いわたす。
*いやこれは行政手続きじゃなくて、人権問題だろ。
すると市は東京高裁に抗告して第二ラウンドが始まる。

その後なんだかんだあって、結果として「悪魔」という名前に許可は下りなかった。

くわしいことは「悪魔ちゃん命名騒動」をどうぞ。

バラエティ番組にも主演したこの親は、1996年に覚せい剤取締法違反で逮捕された。やっぱりそれ相応におかしかったのだ。

 

さてこっちの名前をめぐる騒動は、2018年にアフガニスタンで起きたこと。
アフガンの小さな村で、生まれてきた男児に「トランプ」と名付けたところ、その子供と両親が村から追い出される出来事があった。

その親が子どもにこの名を付けたとき、アメリカは大統領選挙の最中でトランプ氏は一候補者にすぎなかった。
不動産王として大成功をおさめたトランプ氏にあやかって、子どもも金持ちになってほしいと願って親はこの名前にしたのだけど、トランプ氏が大統領になると状況が一変。
イスラーム教徒を敵視するような言動を連発するし、アメリカ軍と過激派組織IS(イスラミックステート)との戦闘で一般市民が犠牲になることもあって、アフガニスタンで反米感情が徐々に高まっていく。

*言い方は悪いけど、アフガニスタンではトランプ大統領を「悪魔」と考える人は多いと思う。

やがて村の宗教指導者から男の子の名前は侮辱的だと非難され、一家はとうとう村から追放された。
それで移り住んだ首都・カブールでも「異端者」などと呼ばれて、また立ち退きを迫られたとか。
この一家がいまどこで何をしているのかは分からない。

わが子に「トランプ」と名付けたアフガンの親も少し変だけど、「悪魔」と名付けた親よりは常識的。
でも、運が悪かったし社会も過激だった。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。