【英米人の眼】蛍の光わからん問題・日本人の“嫌な”伝え方

 

数年前、アメリカ人とイギリス人とショッピングモールで買い物をしていると、「蛍の光」のBGMが流れてきた。
彼らは日本に何年も住んでいたから、これが何の意味かわかるか尋ねると、

イギリス人「もちろん。これはスコットランドの民謡の Auld Lang Syne(オールド・ラング・サイン)じゃないか。たぶん君よりも知っているよ。」

アメリカ人「私も知っている。この歌はアメリカでも有名だからね。」

と、すこしポイントのずれた答えが返ってきた。
それはそうなんだけど、日本ではスーパーやデパートでこの歌が流れてくると、「もうすぐ閉店するから、早く買い物を済ませてね」ということを伝えていると話すと、アメリカ人は「日本でこれは“終わりの歌”なのか。アメリカでは、年明けに歌う“始まりの歌”なんだ。意味が逆転している。」と意外そうな顔をした。

*閉店の際に流れる歌は、実際にはオールド・ラング・サインをアレンジした「別れのワルツ」が多いけれど、一般的に「蛍の光」と言われているので、ここではその呼び方を使うことにする。

そして、2人は「これはちょっと失礼じゃないか?」と不満そうに言った。

 

きのう11日、100円ショップのガリバー、ダイソーがで閉店を知らせる音楽を「蛍の光」から別の歌にすると発表し、ネット掲示板の片隅で話題を集めた。
変更の理由は、最近ダイソーでは外国人客が増えていて、彼らが「蛍の光」を聞いても閉店を意識しない(気がつかない)から。
それで結果的に、閉店作業がスムーズに進まないらしい。
ダイソー側は「さりげなく閉店時間を伝えながら、快く帰ってもらえる音楽を目指した」と自信ありげに言っているから、どんなミュージックになったかは店で聞いてほしい。
(そういえば、閉店直前のダイソーってまだ経験したことなかったわ)

このニュースにネットの声は?

・ドアーズのジ・エンドで
・天城越えにしよう。
・天国と地獄
・ファイナル・カウントダウンにするしかねえか
・緊急地震速報の音声を・・・いや、日本人だけ飛び出ていくか

さっきアメリカ人が指摘したように、あちらでは「蛍の光」に“終わり”の意味はない。
それで、以前ある日本人がSNSで失敗談を語っていた。
彼がアメリカで現地の友人と夕食をしていると、店内のBGMで蛍の光が聞こえてきたから、「もう閉店か」と思って急いで食べはじめたら、友人が「オマエ、急にどうしたんだ?」と不思議そうに聞いてきた。
「だって、蛍の光が流れてんじゃないか」と答えると、「ああ、そうだな。で、オレはオマエに、急いで食事を食べ出した理由を聞いているのだが?」と聞かれ、その日本人は、蛍の光の意味が日米で逆転していることを知った。

日本がアメリカとの戦争に突入したころ、国内で敵国(英米)の音楽を流すことは禁止されたが、「蛍の光」は日本化されているという理由でその対象から外された。
由来はスコットランドにあっても、これはもう“日本の歌”と言っていい。

 

話を冒頭のアメリカ人とイギリス人に戻そう。
彼らが日本の店で蛍の光を聞いて、不満を言った理由は、「そういうことは言葉で直接伝えるべき。音楽を流すことで知らせるやり方はちょっと失礼だ」と感じたから。
2人とも、日本人が思っていることを直接言わず、間接的に伝え、相手に自分で気づかせるやり方を「分かりにくいっ」と嫌っていた。
アメリカやイギリスの店では、「あと10分で閉店です」と誰にでもわかるようにアナウンスして、その時刻になると、入り口に警備員が立っていて客を追い返すこともあるらしい。

閉店作業が遅れることが気になるのなら、「閉店の音楽」を変えることより、労働者の権利を大切にする欧米式の考え方を取り入れたほうがきっと効果的だ。
でも、日本で閉店10分前のスーパーに駆け込もうとしたら、店員に「まだ閉店時間ではないですが、ご入場はお断ります」なんて言われたら、客が店から離れてしまうから無理か。
「お客様は神差様です」の国でそんな対応をしたら、本当の閉店作業をしないといけなくなってしまう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。