【矛盾しない】“反日”と日本の経済協力を求める韓国の背景

 

なんでも禅宗には「好雪片片別処に落ちず」という言葉があるらしい。
「そーそー、それあるー」という人はきっと希少で、まず読み方で首をひねる人がほとんどだと思われる。

「こうせつへんぺんべっしょに落ちず」というこの言葉は、好雪(みごとな雪)はその一つ一つが別の所に落ちていない、禅語辞典によれば「雪の一片一片がぴたりぴたりと落ちるべき所に落ちている」という意味だとか。

「ひらひら舞う雪も定めに従って舞っているのである」と毎日新聞のコラム「余禄」(2020年6月27日)に書いてある。

 禅の言葉に「好雪片片別処に落ちず」というのがある…

空から降る雪は風にまかせてバラバラに落ちているように見えるけど、それぞれの雪の落下地点はあらかじめ決まっている。
何という深遠な考察、さすがは禅。

 

さてここから話は隣国さん。
日本に対して韓国が言うことも、てんでバラバラに見えるだけど、実はそうではなくて「それぞれの定め」に従ってものを言っているのだ。

韓国紙・中央日報によると、日本製品の不買運動はきょねんから1年過ぎたいまでも行われていて、日本のビール販売は88%減、自動車も半減し、ホンダを見れば営業益9割減、日産はとうとう韓国からの撤退をきめた。
韓国紙の主張では、それは日本が韓国を「ホワイト国」(貿易管理上の優遇国)から除外したことが原因というけど、外交・政治問題は政治家同士が解決するべきことで、日本製品のボイコットにつなげるべきではなかった。

韓国の文大統領が「(日本には)二度と負けない」、「加害者である日本が、盗人猛々(たけだけ)しい」と日本を非難して、メディアも「日本の経済侵略」とレッテルを張って報道をして国民の反日感情をあおった結果、国民的なボイコットジャパン不買運動に発展した面は否定できない。

くわしいことはこの記事を。

韓国の日本製品不買運動・反日感情が1年以上も続く理由

 

日本にも嫌韓はあるけど、韓国の反日はレベルが違って「国家ぐるみ」。
文大統領の呼びかけのもと、地方自治体の首長らが集まって「日本の措置に反対する糾弾大会が開かれた」(朝鮮日報)という。
約100の地方自治体が日本製品の購入中断を訴えたというのは日本では起こりえない。

 

首都の公共交通機関(ソウル地下鉄)もこんなステッカーを車両に貼って、乗客に日本製品ボイコットを呼びかけた。

画像:Ho Yuchih

 

これは木浦市にあった「反日ステッカー」

 

東京の地下鉄や電車が乗客に「韓国製品のボイコット」を訴えることが想像できるだろうか?
街中が「嫌韓ステッカー」であふれることもない。
韓国の反と日本の嫌は比較にならない。

「ノージャパン運動」が激しく行われていた昨年夏ごろ、中央日報は韓国人の激しい反日感情を見た日本人が驚き、韓国への理解不足からとまどっているという内容の記事(2019.07.30)を載せた。

「我々は韓国をあまりにも知らなすぎた」…韓国内の「反日」拡散に驚いた日本

 

でもビックリするだけじゃねーし。
こうした隣国の振る舞いに「ドン引き」する日本人も多く、韓国への拒否感や抵抗感などの「嫌韓ムード」も高まっていった。
すると昨年末には、日本にいる韓国人記者はそんな雰囲気に触れて、「韓日は共に進まなければいけない隣国」なのに「嫌韓の空気が日本社会を支配している」となげく。

韓国が作った「日本の重い嫌韓の空気」に韓国人が嘆くの図

驚くほどの「反日」拡散を目の当たりにしたら、日本がこうなることは予想できたはず。

 

朝鮮日報は2日前の社説(2020/06/27)で、日本企業の韓国投資が激減したとあせっていた。

日本は韓日対立が本格化した昨年7月を基準にすると、韓国への直接投資が直前の9カ月(2018年10月-19年6月)の2626億円から直後の9カ月(19年7月-20年3月)の1333億円へと49%も減少した。

互いに刀を構える韓日「経済鎖国」1年、結論は双方に損害

 

とくに昨年10~12月の直接投資は前年に比べて77%と大幅減。これは嫌韓ではなくて、「脱韓」か「放韓」だ。
朝鮮日報は「韓国国内では「反日」、日本では「嫌韓」のムードが広まった。」とどっちもどっちで、双方に等しく責任があるように書いているけど、あれだけ気持ちいいほどの「反日拡散」をしておいて、いまになってそれでは都合が良すぎる。

ちなみに日本にある韓国企業も苦戦中だ。

韓日関係の悪化で…日本進出の韓国企業95.7%、「事業が苦境」

やっぱり政治問題は政治家が解決すべきで、国民感情をあおってはいけなかった。

 

韓国の反日運動を称賛して、日本の嫌韓を非難する。
日本製品の不買運動をして、日本企業が韓国に投資しないと不満を言う。

日本人からすると、「いやいやいや」と言いたくなるような韓国の言動はよくある。
「日本製品をボイコットするなら、半導体製造に必要な部品も不買しなきゃ」というツッコミはきょねん何度聞いたことか。
韓国は政府からして、国内の反日と日本からの経済協力の両立を目指す「ツートラック戦略」を掲げているのだ。
言ってることが矛盾しているから、日本の受けはとても悪い。

2年まえの韓国紙の紙面

与党は日本を「永遠の二等国」と呼んで、外交部(外務省)は「韓国国民の感情を考慮せよ」と要求する。韓国の感覚では「普通」だけど、この態度が多くの日本人を怒らせた。

 

でも、「好雪片片別処に落ちず」。
韓国ではバラバラの主張をするから、全体としてまとまりにかけるように見えるけど、実際には個々の立場の人がそのときの最高の利益を求めているから一切の矛盾はない。
「それぞれの定め」に従ってものを言っているだけ。

反日的言動はやめないけど経済支援(例えば日韓通貨スワップ)を求める「ツートラック」に違和感を感じるようなら、「我々は韓国をあまりにも知らなすぎた」ということでその日本人の理解は浅いということだ。
でもまー、やっぱりご都合主義には見えてしまう。

 

これはきのうのこのブログへの検索キーワード

 

歴史問題を蒸し返す韓国に疲れる日本人はいま多い。
そんな韓国を理解しようとするより、離れる人の方が多いだろう。日本企業みたいに。

同じく日本統治を受けた台湾と比べると韓国の反応が際立つ。
台北の地下鉄に「ノージャパン運動」のステッカーが貼られることは考えられない。
友好と経済協力を求める台湾に矛盾はないし、台湾に違和感を感じる日本人も見たことない。

 

 

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1 個のコメント

  • >空から降る雪は風にまかせてバラバラに落ちているように見えるけど、それぞれの雪の落下地点はあらかじめ決まっている。

    うーん、現代数学・物理学の観点からはその主張(「ラプラスの悪魔」に近い考え方)は、間違っているのですけどね。「バタフライ効果」や「フラクタル力学」や「直観主義数学(ブローウェルの問題)」等の学説によれば、そのような自然現象は決して隅々細部まで完全に予想することは、たとえ万能の神様であってもできないのです。

    >韓国ではバラバラの主張をするから、全体としてまとまりにかけるように見えるけど、実際には個々の立場の人がそのときの最高の利益を求めているから一切の矛盾はない。
    >「それぞれの定め」に従ってものを言っているだけ。

    今はそのように見えるかもしれませんが、その結果は決して見通せない。もしかすると現状が、とんでもない悲惨な結果につながることになるやもしれないですよ。あくまで「韓国にとって」ですが。
    日本はずっと用心して警戒を続けていますから、悲惨な結果を招くということは、まずないでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。