【日本人と季節の移ろい】半夏生の由来と各地の行事を知ろう

 

さあ、ほんじつ7月2日の記念日は「一年の折り返しの日」。
さらに細かく言うと、この日の正午が一年のまさに真ん中の時間になる。(うるう年は少し違う)

ちなみに東京と京都をつなぐ東海道のど真ん中をご存じだろうか?
それは静岡県袋井市。
だから袋井には「東海道どまん中茶屋」とか「居酒屋 どまんなか」といった店があるのだ。

 

静岡県民としての義務を果たしたところで、本題に移らせてもらおう。

きょう7月2日は「半夏生」の日でもある。
「ハンナツオって初耳」という人は読み方から間違っていて、これは「はんげしょう」と読む。
烏柄杓(カラスビシャク)という植物には「半夏」という別名があって、これがいまの時期に生えてくるから昔の人は「半夏生」という雑節(ざっせつ)にした。
*半夏生の由来には別の説もあるけどこれが有力。

雑節とは、季節の変化をより正確に知るためにつくられた特別な暦日のことで、半夏生のほかにも、節分、彼岸、八十八夜、土用などがある。
こうした雑節によって、昔の日本人は季節の移ろいを実感していたはずだ。

*いまでは季節区分は春夏秋冬の四季が一般的、でも古代中国人はなんと七十二に分けていたの。
これを七十二候(しちじゅうにこう)と言い、日本にも伝わった。
「半夏生」(はんげしょうず)もこの七十二候のひとつ。
ただ日本人は外来のものをよく日本風につくり変えてしまう。
江戸時代になると、日本の気候や風土に合った「本朝七十二候」(本朝は日本のこと)をつくった。

烏柄杓(半夏)は漢方薬の材料となり、これを薬局に売って儲ける人もいたから「ヘソクリ」という品のないニックネームも付けられた。これもご先祖のしわざだ。
だから昔の日本人は半夏生の時期に注意をはらっていたのだろう。

 

半夏生は梅雨の終わりごろだから、この時期に大雨が降ることも多い。
静岡県はまさにきのう記録的な豪雨に見舞われて、「半夏生の大雨にお気をつけください」てなことをニュース番組で言っていた。

「一年の半分にきた(今年もあと半分だ)」という意味合いがあるせいか、半夏生のころには日本各地でさまざまな行事が行われる。

・長野県小川村ではイモ汁を食べる。
・三重県には、この時期になるとハンゲという妖怪が現れるから、農作業はしないことになっている地域がある。
・奈良県の香芝市周辺では農家が「はげっしょ」という、小麦を混ぜたモチを食べる習慣がある。
・長野県佐久地域ではニンジンやゴボウの種をまく。
・永平寺では大布薩講式(懺悔や修行をするらしい)が行われる。
・福井県大野市では、江戸時代に大野藩の藩主が半夏生のころ、農民に焼きサバをごちそうしたという話があっていまでも焼きサバを食べる風習がある。

これはきのうのNHKニュース。

夏バテ防止には これ! 焼きサバが人気 福井

 

・讃岐ではうどんを食べる習慣があったから、香川県製麺事業協同組合が7月2日を「うどんの日」にした。
・関西ではこの時期にタコを食べる人が多いから、7月2日は「タコの日」になっていて、日本コナモン協会ではたこ焼きをやタコのお好み焼き、唐揚などを促進する「蛸半夏生キャンペーン」を行っている。
これは、田んぼに植えた苗がタコの足のように地面にしっかり根付くように、という願いを込めたものだという。

 

でも、日本全体にかかわることと言ったらコレでしょう。

 

昔の日本中の農家にとって半夏生は、この日までに畑仕事や田植えを終えるという目安になっていた。
だから半夏生までにひと仕事を終えたら、数日の休みをとるところもある。

奈良の農家が「はげっしょ」を食べる理由もこれに関係していて、無事に田植えを終えられたことを農民が田んぼの神様に感謝して、お供え物をして共に食べたことが由来とか。
大野藩の藩主が農民に焼きサバをふるまったことも、田植えを終えたごほうびの意味があったかも。
ハンゲという妖怪が現れる話も、「その前に必ず田植えや畑仕事を終わらせろ」という意味があったのでは?

 

15年ぐらい前、日本に住んでいたオーストラリア人がアパートの前に広がる田んぼを「最高に美しいカレンダー」と言っていた。
乾いた地面に水が張られて、田植えをして一面が緑になり、秋になると黄金色になって収穫が終わるとまた土に戻る。
朝起きて田んぼの変化を見て、季節の移り変わりを実感するのはオーストリアではなかった楽しみ。

現代のようなカレンダーや車がなかった昔の日本人は、周囲の自然の変化にはとても敏感だったはず。
季節の変わり目に「半夏生」という雑節(ざっせつ)をもうけたのもその表れだ。

 

 

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2 件のコメント

  • まさに日本の原風景。ほっこりの情報ありがとうございました

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。